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2022年9月1日のアーカイブ

2022年9月1日(木)AM12:00|投稿者:KCLスタッフ

~旅の形いろいろ~

こんにちは、「志るべ」です。
昼間はまだまだ暑いですが、夜になると虫の声がきこえてくるようになりました。
みなさまいかがお過ごしでしょうか?
そろそろ旅に出かけたくなる季節ですね。とはいえ諸事情があって、なかなかそうもいきません。
そんな時には「住み慣れた桑名の町を旅の気分で歩いてみませんか?」と以前ご提案しましたが、今回は、海外へ飛んでみるというのはいかがでしょう?

 

「人生はどこでもドア」なのだそうです。考えてみれば、「図書館もどこでもドア」かもしれません。本を開けばどこにでも行けるし、お金もかかりません。図書館は本を通して世界につながっています。

 

最初の一冊はこちら、
『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(稲垣 えみ子/著 東洋経済新報社 2018.11)

 

『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(稲垣 えみ子/著 東洋経済新報社 2018.11)

 

 

著者の稲垣さんは元朝日新聞社の記者で、論説委員、編集委員をつとめ、50歳を機に早期退職されました。
退職した経緯やその後の生活については、『魂の退社 会社を辞めるということ。』(稲垣 えみ子/著   東洋経済新報社  2016.6)『寂しい生活』(稲垣 えみ子/著  東洋経済新報社  2017.6)に書かれています。
東日本大震災による原発事故後は超節電生活に取り組み、次々と家電を手放し、最後に冷蔵庫の線を引き抜くところは圧巻です。
アフロヘアがお似合いの稲垣さんですが、なんでもこのヘアスタイルにした途端に「モテ期」が到来したとか。

 

稲垣さんはこれまでガイドブックに従って美術館やお店を巡る旅をしながら、何かもやもやしたものを感じていました。
旅に出たからといって、日々興味を持っていないことに急に興味が持てるわけじゃない。
それならば逆に普段から興味を持っていることを貫けば、どこへ行っても深い体験ができるんじゃないかと気づきます。
稲垣さんが普段から真剣にやっているもの、それは料理を作って、洗濯して、掃除をして、近所で買い物したり顔見知りに挨拶したり、そう「生活」でした。
観光はしない。旅の目標を「普段の生活」をすることと決めて、フランス第二の都市リヨンへ向かいます。
はたしてどんな旅になったのでしょう?

 

次は、カナダへGO!
『カナダの謎 なぜ『赤毛のアン』はロブスターを食べないのか?』(平間 俊行 /著   日経ナショナルジオグラフィック社 2019.4)

 

もともと報道の世界にいた平間さんは、偶然仕事で取材したカナダに「はまって」しまいます。
それ以来何度もカナダを訪れ、日本ではほとんど知られていないカナダについて原稿を書き続けました。
「どうしてカナダはこんなにうまくいっているのか、どうして世界中から愛されているのか」
「カナダの謎」を解くカギはカナダの温かな「国づくり」の中にあるそうです。「謎」をひとつひとつ解いていくうちに、カナダの歴史が見えてきます。

 

サブタイトルにある「なぜ『赤毛のアン』はロブスターを食べないのか?」
この謎にも、フランス領からイギリス領となったカナダの歴史が反映されているのでした。
日本に住む私たちは普段いかに民族を意識することなく暮らしているか、改めて感じさせられます。

 

さて次はあこがれの北欧、フィンランドへようこそ。
森と湖、サンタクロース、ムーミン、社会保障が充実していて、教育水準が高くて、男女格差がなくて・・・フィンランドへの期待は高まります。

 

『フィンランド森と街に出会う旅』(鈴木 緑/文・写真 東京書籍 2006.10)

 

『フィンランド森と街に出会う旅』(鈴木 緑/文・写真 東京書籍 2006.10)

 

 

著者の鈴木さんによると、フィンランドほど、どれだけ本を読んでも、人の話を聞いても自分の目で見て経験しないと分からない国はないそうです。
まずは、この本を読んで、行ってみたいと感じるかどうか。
そして「行ってやろうじゃないの」と思った人は「ヘビーなリピーター」になるといいます。
フィンランドは公用語がフィンランド語とスウェーデン語の二か国語。
フィンランド系フィンランド人とスウェーデン系フィンランド人がいるのだそうです。
おとぎの国のようなイメージがあるフィンランドですが、それだけではない部分も含めて「フィンランドが好き」と語っています。

 

ヘルシンキの街角にある日本人女性が店主をつとめる「かもめ食堂」も、映画になりましたね。

『かもめ食堂』(群 ようこ/著 -- 幻冬舎 -- 2006.1)

 

 

 

『かもめ食堂』(群 ようこ/著  幻冬舎 2006.1)

 

 

 

フィンランドを別の角度から紹介した一冊がこちら、

『国家がよみがえるとき 持たざる国であるフィンランドが何度も再生できた理由』(古市 憲寿/著,トゥーッカ・トイボネン/著  マガジンハウス 2015.6)

 

『国家がよみがえるとき』(古市  憲寿/著,トゥーッカ・トイボネン/著 マガジンハウス 2015.6)

 

 

「どれほど桃源郷のように見える国であっても、それぞれの葛藤があり、社会問題がある」という古市さん。
けれど「決して完璧な国ではない。しかし現実に起こっている問題に対して、柔軟に解決策を見つけていこうという姿勢と、変わり続けていく勇気をフィンランドは持ち続けてきた」といいます。

 

イメージにとらわれて、世界の国について何も知らないことに愕然とします。
でも一冊の本を手に取ると、その先にはまたドアがあって次の世界へと導いてくれます。やっぱり図書館はドアだらけ・・・

 

次のドアを開くと、そこは「世界一幸せな国」、ブータンです。
『給食のおばさん、ブータンへ行く!』平澤 さえ子/著 -- 飛鳥新社 -- 2017.1

 

学校給食の調理員として30年働いてきた平澤さん。
「ブータンで給食の改善をしてみない?」と声をかけられ、「給食の改善?」「ブータン?」、降ってわいた話にとまどいながらも気づいたら「行きます」と即答していました。
ブータン南部のサルバン県にあるゲレフの高校で3週間給食の改善のお手伝いをするというのが任務。実は平澤さん、以前に一度ブータンへ行ったことがあり、その時に一目惚れ。その後、来日された若き第5代ジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王の姿を見て、すっかりブータンに夢中になったのでした。
ブータン大好きな平澤さんではありますが、現地での生活はいかに・・・
巻末には、簡単につくれる「ブータン料理」&「人気の給食」レシピが紹介されています。

 

そんなブータン、写真で見たいですね。
『赤瀬川原平のブータン目撃』(赤瀬川 原平/著   淡交社  2000.9)

 

写真とエッセイで綴られた一冊。ブータンの「空気」が伝わってきます。
赤瀬川さんがブータンに行こうと思ったきっかけもワンチュク国王でした。
ただし赤瀬川さんが魅せられたのは、昭和天皇の大喪の礼に参列した先代のジグミ・シンゲ・ワンチュク国王。
「昔の日本人よりキリッとしていて」、「日本人より日本人的」と感じたそうです。ブータンは、「日本と似たところもあるけど、ぜんぜん違うところがあって、やはりそこに憧れる」と語っています。

 

最後に、旅を描いた小説を一冊ご紹介します。
『旅する練習』(乗代 雄介/著 講談社 2021.1)

 

 

『旅する練習』(乗代 雄介/著 講談社 2021.1)

 

 

サッカー少女と小説家の叔父が徒歩で、千葉の我孫子から鹿島アントラーズの本拠地を目指すというお話。
芥川賞候補にもなり、三島由紀夫賞を受賞した作品なので、ご存じの方も多いかもしれません。
中学受験を無事終えた亜美は叔父の「私」に、ある相談をします。
去年の夏に行った鹿島の合宿所の本棚からこっそり持ってきたままになっている文庫本、それを返しに行きたいと。
「私」は一つの提案をします。それは、サッカーの練習をしながら、宿題の日記を書きつつ、歩いて鹿島を目指す、というものでした。
ただし条件が一つ、旅の途中、小説家である「私」は風景描写の練習をするので、その間、亜美はおとなしくボールを蹴って待つこと。
「歩く、書く、蹴る」ふたりの練習の旅が始まります。

 

我孫子から鹿島まで、どれくらいあるのでしょう?
作品の中では「もたもたしなかったら四、五日ぐらいかな」とありますが・・・
最後のページを読み終えた時、もう一度振り返って読みたくなりました。
読み返すと、最初は気づかなかった部分に気づき、景色が違って見えてきます。

 

旅の形はいろいろ、旅の魅力もいろいろ。
さあ、次はどこに行きましょうか?
図書館にはまだまだたくさんのドアがありますから。

 

<紹介資料>
『人生はどこでもドア リヨンの14日間』稲垣 えみ子/著 東洋経済新報社 2018.11  /293.5/イ/
『魂の退社 会社を辞めるということ。』 稲垣 えみ子/著   東洋経済新報社  2016.6  /916/イ/
『寂しい生活』 稲垣 えみ子/著  東洋経済新報社  2017.6  /916/イ/
『カナダの謎 なぜ『赤毛のアン』はロブスターを食べないのか?』 平間 俊行 /著  日経ナショナルジオグラフィック社 2019.4  /295.1/ヒ/
『フィンランド森と街に出会う旅』鈴木 緑/文・写真 東京書籍 2006.10  /293.8/ス/
『かもめ食堂』 群 ようこ/著   幻冬舎   2006.1  /913.6/ムレ/
『国家がよみがえるとき 持たざる国であるフィンランドが何度も再生できた理由』 古市 憲寿/著,トゥーッカ・トイボネン/著  マガジンハウス 2015.6  /302.3/フ/
『給食のおばさん、ブータンへ行く!』平澤 さえ子/著   飛鳥新社  2017.1  /292.5/ヒ/
『赤瀬川原平のブータン目撃』 赤瀬川 原平/著   淡交社  2000.9  /748/ア/
『旅する練習』乗代 雄介/著 講談社 2021.1  /913.6/ノリ/

<志るべ>