新年のごあいさつ 2026
2026年1月4日(日)|投稿者:kclスタッフ
あけましておめでとうございます
今年も桑名市立中央図書館とスタッフブログ「ブックとラック」を
よろしくお願いいたします
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みなさま、お正月はいかがお過ごしでしょうか? 志るべです。
今年の干支は「午」ですね。今や、日々の暮らしの中で馬を目にする機会はなくなりましたが、かつて馬が身近にいた時代がありました。
江戸時代、桑名は東海道五十三次の内42番目の宿場町で、交通の要衝として重要な役目を担っていました。宿場には2つの役割がありました。ひとつは旅人に宿泊や休憩の場を提供する役割、もうひとつは人、物、情報を次の宿場へ運ぶ役割です。もちろん鉄道も車もありません。活躍したのが宿場に常備された「伝馬(てんま)」と呼ばれる馬でした。
公用の信書や荷物を人と馬が次の宿場まで運び、次々とリレー形式で目的地まで運ぶ制度を伝馬制度といいます。
慶長6年(1601)、「御伝馬之定」(『三重県史 資料編 近世4上』所収)が幕府から発布され、桑名宿には伝馬用の馬36疋(匹)を常備しておくことが定められました。そして、伝馬を利用するには「伝馬朱印状」(『三重県史 資料編 近世4上』所収)が必要でした。
馬だけでなく人も大活躍でした。その健脚ぶりには驚かされます。腹掛けに脚絆、はちまき巻いて飛脚箱をかついで走る姿、目に浮かびませんか? 大名や旗本から商人、名主、文人と利用層は拡大し、飛脚は次第にビジネス化していきます。御用(公用)荷物と町人荷物が同時に「公私混載」で運ばれていたといいます。
くわしくはこちら。

『飛脚は何を運んだのか』(巻島 隆/著 筑摩書房 2025.2)
『南総里見八犬伝』で有名な戯作者、曲亭(滝沢)馬琴の日記を読み解いて、飛脚について分析しています。馬琴は、江戸から伊勢国松坂(松阪市)に手紙を早便で、八日間を指定して出しています。早便は並便より短い規定日数(日限(ひぎり)という)で運ぶ特急便で、四日限(よっかぎり)、五日限、六日限などの日数設定がありました。手紙や原稿、資金や物資だけでなく各地の火災、地震、洪水といった情報も運ばれました。それによって人々は遠くで起きた災害の状況を知ることができたのです。
伝馬制度は、新政府が近代化を進める中、明治5年(1872)に廃止されました。
そんな頃、海外で人と馬はどういう関係にあったのでしょう?
明治10年(1877)、イギリスで『黒馬物語』という物語が発表されました。著者は、アンナ・スーウェル (Anna Sewell)、原題は「ブラックビューティ」(Black Beauty)。馬の視点で描かれた物語です。
『少年少女世界名作全集 6 黒馬物語』(ぎょうせい 1995.2)
著者は、子どもの頃のけががもとで一生足の痛みに苦しみ、『黒馬物語』を書いていた頃は外へ出ることもできなくなっていました。6年かけて作品を完成させ、出版の翌年に亡くなりました。生涯にこの作品1冊しか残していません。
訳者の足沢良子(たるさわ よしこ)さんが書かれた「解説」には、「彼女が生きた時代は、ビクトリア朝時代として、イギリスがもっとも富み栄えた時代でした。けれど富み栄えた都市の底辺には、ひどい貧困があったのです。(中略)彼女は作品の中で、その矛盾を、静かにけれど強く、馬という動物を通して訴えています」とあります。
また、馬について、「当時のイギリス人の生活には、なくてはならない動物でした。狩りや競馬のほかに、馬車というものが、現在の列車(当時、汽車はまだ、非常にぜいたくな乗り物でした)や車の役目を果たしていましたから」と書いています。
幼いころの黒馬ブラック・ビューティーは、牧場でかあさんと幸せに暮らしました。けれどその後、持ち主が次々と変わり、生活は一変します。つらい経験が描かれますが、著者の文章には馬への愛情、あたたかいまなざしが感じられます。
最後の1冊は、こちらの絵本。

『名馬キャリコ』(バージニア・リー・バートン/え・ぶん,せた ていじ/やく 岩波書店 1979.11)
作者は、『ちいさいおうち』や『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』でおなじみのバージニア・リー・バートン。
カウボーイのハンクと馬のキャリコが暮らすサボテン州は、どこにも囲いがなく、かぎがなく、牢屋がありません。それをいいことに、すごみやスチンカーと仲間たちは、牛どろぼうを企てます。さて、この悪漢どもをどうやって撃退するのか?
挿絵はモノクロで、見返しには写真のフィルムのようにすべての場面が順に載せられています。
最後のページは、みんなで新年を迎える場面で終わります。
かしこいキャリコのように、わたしたちも問題を解決していきたいものです。
どうぞ今年が平和な年でありますように。
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<参考・紹介資料>
『日本交通史』(児玉 幸多/編 吉川弘文館 1992.11 )
『三重県史 資料編 近世4上』(三重県/編集 三重県 1998.3)
『飛脚は何を運んだのか』(巻島 隆/著 筑摩書房- 2025.2)
『少年少女世界名作全集 6 黒馬物語』(ぎょうせい 1995.2)
『名馬キャリコ』(バージニア・リー・バートン/え・ぶん,せた ていじ/やく 岩波書店 1979.11)
『ちいさいおうち』(バージニア・リー・バートン/文・絵,石井 桃子/訳 岩波書店 1991)
『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』(バージニア・リー・バートン/ぶん え,むらおか はなこ/やく 福音館書店 1961.8)
<志るべ>
読んで味わう旅の時間
2025年12月9日(火)|投稿者:kclスタッフ
こんにちは、たがねです。
12月に入り、外に出るのがちょっと億劫になる季節になってきました。遠出をするのは大変だけど、旅気分は味わいたい…そんなときにピッタリなのが旅行エッセイです。ページをめくるだけで知らない風景に出会えたり、誰かの視点を借りてちょっとそこまで気分を味わえたり。エッセイを読んで次に行きたい場所を見つけるのも楽しいですよね。
今回は、気軽に読めて思わずどこかへ出かけたくなるような、旅エッセイをいくつかご紹介します。
まずはこちら、

『だいたい四国八十八ケ所』(宮田 珠己/著 本の雑誌社 2011.1)
お遍路といえば「厳かな巡礼の旅」というイメージがありますが、旅行エッセイストの宮田珠己さんは「一周してみたい、全部回ってみたい、いっぱい歩きたい」という理由でお遍路の旅に出ます。四国八十八ヶ所をめぐりながら出会う風景の観察や人々へのツッコミが軽快につづられています。旅の途中、自転車でしまなみ海道を渡ったり、カヌーで四万十川を下ったりと寄り道もあり最後まで飽きずに楽しく読めます。足にできたマメとの戦いや、単調な道への愚痴など思わず笑ってしまう場面もたっぷり。お遍路の基礎知識も自然と頭に入るので、旅の案内書としてもエッセイとしても楽しめる1冊です。
次に紹介するのはこちら、
『死ぬまでに行きたい海』(岸本 佐知子/著 スイッチ・パブリッシング 2020.12』
著者は翻訳家・岸本佐知子さん。岸本さんが気の向くままに出かけて、見聞きしたことを綴ったエッセイ22編が収録されています。
タイトルには「海」とありますが、海へ行ったことを書いたエッセイではありません。海外の話もありますが、岸本さんが出不精なため基本的には家から近い東京近郊に行った話が多いです。近所の景色も岸本さんが見るとどこか新鮮で、読みながら「そんなところに目を向けるんだ!」とクスっとしてしまいます。旅らしい大きな事件は起きないけれど、小さな発見や思い出話がじんわり楽しい1冊です。文の途中に挿し込まれている写真は岸本さん自身がスマートフォンで撮ったものだそうです。文章の雰囲気にぴったりの味のある写真を見るのも楽しいと思います。
静かな語り口の不思議な余韻が残る文章で、年末のあわただしい時間の合間に読むと、気持ちが落ち着きそうです。
最後に紹介するのはこちら、

『我的日本』(呉 佩珍/編訳,白水 紀子/編訳,山口 守/編訳 白水社 2019.1)
日本を旅した時、外国の人はどんなところに心を動かされているんだろう? そんな素朴な疑問にこたえてくれるのが、この1冊です。台湾の作家18人が、それぞれの視点で日本各地を旅して出会った風景や人、ちょっとした驚きや違和感まで、瑞々しい語り口で綴っています。お花見や大阪弁などふだん見慣れた日本の文化も、海外の作家の目を通すとまったく違って見えるのが面白いところ。日本人にとってあたりまえの文化が外からはどう見えるのか、読んでいると新鮮な気持ちになります。いつもの日本を別の国の人が旅する日本として楽しめる旅エッセイ集です。
旅の本を読むと、いつも見ている風景が少し違って見えるかもしれません。そんな視点の変化も旅エッセイの楽しさのひとつ。
図書館では他にも旅行エッセイを所蔵しているので、気になる1冊を手に取って、旅行気分を味わってみてくださいね。
<参考資料>
『だいたい四国八十八ケ所』(宮田 珠己/著 本の雑誌社 2011.1)
『死ぬまでに行きたい海』(岸本 佐知子/著 スイッチ・パブリッシング 2020.12)
『我的日本』(呉 佩珍/編訳,白水 紀子/編訳,山口 守/編訳 白水社 2019.1)
<たがね>
年末年始の休館と貸出延長のお知らせ
2025年11月27日(木)|投稿者:kclスタッフ
「ブックとラック」をご覧のみなさま、こんにちは。
桑名市立中央図書館の年末年始休館と、貸出期間延長のご案内です。
中央図書館では以下の期間が休館となります。
【休館期間】
12月28日(日)~1月3日(土)
※休館期間中の返却はくわなメディアライヴ1階の返却ポストをご利用ください。
ただし、CD、DVD、大型絵本・大型紙芝居、ゆめはま文庫、桑名市外から取り寄せた図書は破損のおそれがありますので、開館日にカウンターへお持ちください。
また、休館に伴い貸出期間の延長を行います。
【図書・雑誌の貸出期間延長】
12月14日(日)~12月27日(土)の貸出 …3週間
※桑名市外から取り寄せた図書は、貸出期間が異なります
【CD・DVDの貸出期間延長】
12月21日(日)~12月27日(土)の貸出 …2週間
通常よりも一週間長く借りられるとあって、毎年たくさんの資料が貸出されます。
この機会に、なかなか手を出せずにいた本にチャレンジしてみるのはいかがでしょうか?
館内にはテーマに沿った資料を集めた特集コーナーがございます。
何を読もうか迷った時は、ぜひ特集コーナーもご覧ください。
今年も図書館をご利用いただき、ありがとうございました。
2026年も桑名市立中央図書館をご利用・ご活用いただきますようよろしくお願い申し上げます。
よいお年をお迎えください。
「第21回桑名市図書館を使った調べる学習コンクール」表彰式
2025年11月25日(火)|投稿者:kclスタッフ
2025年11月14日(金)に、第21回 桑名市図書館を使った調べる学習コンクールの表彰式が行われました。
今年は100作品のご応募いただきました。
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そのうち、
☆最優秀賞 1作品
☆優秀賞 2作品(うち、子どもと大人の部1作品)
☆奨励賞 17作品(うち、子どもと大人の部1作品、地域賞3作品)
が入賞し、22名の方々が表彰されました。
今年度の受賞作品の一覧はこちらからご覧いただけます。
➡ 第21回 桑名市図書館を使った調べる学習コンクール入賞作品発表(PDF)
みなさんの疑問・興味を持ったことを一生懸命調べる姿がとても素敵でした。
これからも調査のお手伝いが出来るよう、図書館スタッフ一同サポートしてまいります。
最優秀賞・優秀賞に選ばれた作品は全国コンクールへ出品されます。
入賞作品の閲覧をご希望の方は、児童コーナー窓口へおたずねください。
赤も色々
2025年11月14日(金)|投稿者:kclスタッフ
こんにちは、なばなです。
11月、紅葉のシーズンになりましたね。
桑名も色づいた木々を見かけることが増えたように思います。
紅葉と言えば「赤」ですが、本でも表紙やタイトルに「赤」を使ったものがたくさんあります。
そこで今回は、タイトルに「赤」を含んだ本をいくつかご紹介します。
まず初めはこちらです。

『診療室にきた赤ずきん 物語療法の世界』(大平 健/著 早川書房 1994.6)
精神科医の著者が、童話や昔話で患者の心を癒していく話です。
心の病は、原因や症状を自覚することが難しいもの。著者は、物語を通して原因を探り、心の傷を癒していきます。
語られるのは『三ねんねたろう』や『あかずきん』などの普通の昔話です。けれど、話を聞くうちに患者は、それが自分の物語だと気づいて、苦しみを受け入れていくのです。
独特の視点で患者の悩みを紐解く様子は、ミステリーの解決場面にも似た爽快感があります。
「一見すると関係ないのでは?」と思うような物語でも、聞いているうちに納得してしまい、物語を通して変化していく患者の姿に、前向きな気持ちになります。
人の心と物語の奥深さを感じる本です。
続いてはこちらです。

『六本木の赤ひげ』(飯島 一孝/著 集英社 2003.5)
東京の麻布台にあるクリニックには、国籍も立場も異なる外国人の患者が次々とやって来ます。
こちらは、クリニックの院長を務めるアクショーノフ医師の数奇な半生を綴った本です。
アクショーノフ医師は大使館から依頼を受けて、マイケル・ジャクソンなど著名な人を診察することがあります。一方で、不法滞在者も治療し、治療費を払うのが難しい貧しい外国人は無料で診察します。
元々、アクショーノフ医師の両親はロシア革命の時にロシアから逃れ、当時の満州国のハルビンにたどり着き、彼はその地で生まれました。その後、支援してくれる日本の華族と出会い、日本へ留学し医者を目指します。
第二次世界大戦中は監視のある生活を余儀なくされ、戦後は満州国がなくなり、国籍を失いました。
クリニック開院後も何度かスパイ容疑をかけられ、さまざまな苦難を経験してきました。
けれど、彼は常にポジティブで、日々の暮らしを楽しんでいます。そして、何よりも苦しむ人を優先して助け、どんな患者にも公平に接します。
こんな人が六本木にいたのか、いてくれたのか、と不思議な感動が湧いてきます。
残念ながらアクショーノフ医師は2014年に亡くなりました。
国際化する日本を生きていく上で、読んでおきたい本です。
次は少しダークな歴史です。

『完璧な赤 「欲望の色」をめぐる帝国と密偵と大航海の物語』(エイミー・B.グリーンフィールド/著,佐藤 桂/訳 早川書房 2006.10)
舞台は15世紀から17世紀のヨーロッパ。各国が新航路を発見し各大陸へ漕ぎだした大航海時代。
スペイン人が発見した「完璧な赤」を巡る、人々の欲望の歴史を書いた本です。
「完璧な赤」とは、カイガラムシの一種であるコチニールから作った染料のことです。
当時のヨーロッパでは染料は貴重で、中でも高貴な色とされた赤は、非常に価値がありました。
そんな中、スペインが占領したメキシコで見つけた「完璧な赤」
どんな染料よりも美しい色彩に、ヨーロッパ中が魅了されたのです。
コチニールを独占するため、原料を秘匿するスペイン、海賊を差し向け奪おうとするイギリスとオランダ、メキシコへスパイを送るフランス。
ヨーロッパ全土を巻き込んだ欲望の渦は多くの争いを起こしていきます。
美しい色を出す染料が宝物にも値する価値があったことは理解できます。けれども、贅沢品でしかない染料のために、どれほどの人間が命を落とし、悲劇に巻き込まれたのか。
やるせない気持ちが湧いてきます。
人の欲望の深さが垣間見える本です。
最後はこの1冊です。

『噓つきアーニャの真っ赤な真実』(米原 万里/著 長尾 敦子/デザイン KADOKAWA 2001.6)
こちらは、ロシア語同時通訳者で作家の米原万里さんのエッセイです。
米原さんは小学4年生からの5年間を、チェコスロバキアの首都プラハに住み、ソビエト学校に通いました。
ロシア語で教育が行われるソビエト学校には、たくさんの国の子ども達が通っていました。
それから30年、共和制の崩壊により東欧諸国は激動の時代を迎えます。
少女時代の思い出の国の変化をきっかけに、米原さんは友人の消息を追うようになります。
ギリシャ人のリッツァ、ルーマニア人のアーニャ、ユーゴスラビア人のヤスミンカ。
当時の友人たちに会いに行きます。
その過程で、その時はわからなかった真実に気づいていきます。
この作品には、東欧の共産主義の崩壊に巻き込まれた人々が、生々しく描かれています。
人々から語られる、諸国の現状や、時代に翻弄された半生。
ニュースでは伝わりきらない一人ひとりの現実と歴史があります。
世界の情勢が変化している今、読んでほしい本です。
同じ「赤」を含んだタイトルでも、内容は全く異なります。
本を色で選ぶことはあまりないと思いますが、こんなふうに「赤」に関する本を探すだけで、さまざまなジャンルの本を楽しめます。
いつもと少し違う着眼点で、今まで出会ったことのない本を探してみるのはいかがでしょうか。
<紹介資料>
『診療室にきた赤ずきん 物語療法の世界』(大平 健/著 早川書房 1994.6)
『六本木の赤ひげ』(飯島 一孝/著 集英社 2003.5)
『完璧な赤 「欲望の色」をめぐる帝国と密偵と大航海の物語』(エイミー・B.グリーンフィールド/著,佐藤 桂/訳 早川書房 2006.10)
『噓つきアーニャの真っ赤な真実』(米原 万里/著 長尾 敦子/デザイン KADOKAWA 2001.6)
<なばな>

