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寅子と三淵さんと澤田さん

2024年8月1日(木)|投稿者:kclスタッフ

こんにちは、志るべです。
連日の暑さにもうぐったりですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
水分補給に休養、くれぐれも体調にはお気をつけください。

 

 

 

 

さて、NHK連続テレビ小説、通称「朝ドラ」、ご覧になっていますか?
主人公は、日本で初めて女性弁護士となった「猪爪寅子(いのつめ ともこ)」
物語は、女性がまだ弁護士にはなれなかった時代からスタートしました。
今ではあたりまえのことがあたりまえではなかったそんな時代が、それほど遠い過去ではないことに驚きます。

 

ドラマは実話に基づくオリジナルストーリーで、モデルは三淵嘉子(みぶち よしこ)さん。
三淵さんは昭和13年(1938)、女性として初めて当時の「司法試験」に合格し、昭和15年(1940)に弁護士になりました。

 

三淵さんについて書かれた一冊がこちら

 

三淵嘉子 先駆者であり続けた女性法曹の物語』神野 潔/著 日本能率協会マネジメントセンター 2024.3』

 

 

三淵さんはいやおうなく戦争に巻き込まれ、昭和19年(1944)から21年(1946)のわずか3年の間に、弟、夫、そして母と父、ご家族4人を亡くされています。
戦後は、昭和27年(1952)女性初の裁判官に、昭和47年(1972)女性初の裁判所長になりました。

 

三淵さんの年譜をたどると「女性初」の称号がついてまわり、その経歴には圧倒されますが、そのことだけを書き立てられるのは、たぶんご本人も不本意なのではないでしょうか。
著者の神野さんもその功績を、「女性であるという自覚より人間であるという自覚の下に生きて来た」という三淵さんの言葉を引用した上で、

 

「女性に対する教育に熱意を持ち、家庭裁判所と少年審判の発展に貢献し、法制審議会や日本婦人法律家協会で活躍するなど、一人の人間として嘉子の残した功績は大きなものがあるからです」(p11~12)

 

と、記しています。
ドラマにも描かれていますが、三淵さんは、家庭裁判所の設立、少年審判に尽力されました。
一人の人間として懸命に仕事に向き合って生きてきた、その結果が「女性初」という称号につながっているのですね。

 

巻末の<参考文献>には、当時の雑誌も紹介されています。
三淵さんが書かれた文章には、今のわたしたちが生きていく上で指針となる言葉がつづられています。
『婦人と年少者』(7-9 1959年)に掲載された「共かせぎの人生設計」という記事からは、三淵さんの仕事に対する考え方が伝わってきます。
こちらは、「国立国会図書館デジタルコレクション」の送信サービスで見ることができます。

 

 

「国立国会図書館デジタルコレクション」はご存じでしょうか?
「国立国会図書館デジタルコレクション」とは、国立国会図書館で収集しているデジタル資料を閲覧できるサービスです。

 

①ログインなしで閲覧可能
②送信サービスで閲覧可能(個人と図書館)
③国立国会図書館内でのみ閲覧可能

 

の三種類に分かれます。

 

①は、インターネットで自由に見ることができる資料です。
②は、登録すれば、ご自身のパソコンで見ることができる資料です(個人向けデジタル化資料送信サービス
登録については、国立国会図書館の利用者登録(個人)をご覧ください。
また、当館にお越しいただければ、4階「歴史の蔵」のパソコンで閲覧することもできます。4階カウンターでご案内いたしますので、ぜひご利用ください。
➂は、国立国会図書館に来館しなければ見ることのできない資料になります。

 

『三淵嘉子 先駆者であり続けた女性法曹の物語』の<参考文献>で紹介している資料はほとんど、➁送信サービスで閲覧できるものです。

 

 

 

ドラマの中で、寅子は新しい「日本国憲法」に力を得て、法の世界に戻ることを決意します。そして司法省に乗り込んで、裁判官として採用するよう訴える場面がありました。
その時の寅子のセリフがこうでした。
「婦人の代議士も誕生しました。婦人の裁判官がいてもおかしくない。違いますか?」
民法改正に携わる寅子が、婦人代議士たちの意見を聞く場面もありました。

 

寅子が司法省の民法調査室で働き始めた頃には、衆議院選挙法改正を受けて総選挙が行われ、初の女性代議士が全国で39人誕生していました。
この39人の中の一人が桑名の女性でした。
桑名から、日本で初めての女性代議士が生まれていたのです。

 

その人は、社会党から立候補した澤田ひささん(明治30年(1897)生まれ)
49歳で日本社会党の新人議員となり、衆議院議員1期を務めました。

 

『三重の女性史』(三重の女性史編さん委員会/編さん  三重県文化振興事業団三重県男女共同参画センター「フレンテみえ」  2009.3 )には、「桑名市で夫とともに時計商を営んでおり社会党から立候補した」(p98)と記されています。

 

またまた、「国立国会図書館デジタルコレクション」を開いてみましょう。

 

『衆議院議員党籍録 第1回帝国議会~第92回帝国議会』 帝国議会衆議院 1957
253コマ:第22回総選挙(昭和21年4月10日)第90回議会(臨時) 日本社会党 三重 澤田ひさ
256コマ:第91回議会(臨時) 日本社会党 三重 澤田ひさ
260コマ:第92回議会 日本社会党 三重 澤田ひさ

 

日本社会党議員のところに、澤田さんの名前がありました。
こちらは、①ログインなしで閲覧可能な資料です。

 

ちなみに、ドラマで寅子は、初代最高裁判所長官である星朋彦の著書の改稿を朋彦の息子、航一と手伝います。
その著書のモデル『日常生活と民法』(三淵忠彦/著)も国会デジタルコレクションで見ることができます。
改稿前の大正15年(1926)版は①ログインなしで閲覧可能、三淵さんが改稿にかかわった昭和25年(1950)版は②送信サービスで閲覧可能な資料です。
ドラマで紹介された、著者の想いを記した序文も読むことができます。

 

昭和25年(1950)版には「関根小郷、和田嘉子補修」(和田は三淵さんの旧姓)とあり、実際は三淵忠彦さんの息子、乾太郎さん(ドラマでは星航一)と改稿を行ったのではないようですが。

 

「国立国会図書館デジタルコレクション」大活躍です。
古い資料だけど見てみたいなと思った時、もしかすると「国立国会図書館デジタルコレクション」にあるかもしれません。
一度検索してみることをおすすめします。

 

 

ドラマの中で、納得できないことに「はて?」と首をかしげてきた寅子ですが、「はて?」を変えていくことの難しさは、今も変わらないのかもしれません。
わたしたちの今は、三淵さんや澤田さんが切り開いてきてくれた道筋の先にあります。
寅子の言葉「憲法にもあるように、よりよく生きていくことに「不断の努力」を惜しまない」ようありたいものです。
図書館には他にも、三淵さんに関する本や、ドラマの台本をもとに小説化した『虎に翼 上』もあります。
ぜひ、そちらもあわせてご利用ください。

 

<引用・参考資料>
『三淵嘉子 先駆者であり続けた女性法曹の物語』神野 潔/著  日本能率協会マネジメントセンター  2024.3  /289.1/ミ/
『三淵嘉子の生涯 人生を羽ばたいた“トラママ” 』 佐賀 千惠美 /著  内外出版社  2024.4  /289.1/ミ/
『三淵嘉子と家庭裁判所』 清永 聡/編著  日本評論社  2023.12  /289.1/ミ/
『三淵嘉子 日本初の女性弁護士』 長尾 剛/著  朝日新聞出版  2024.3  M/913.6/ナガ/
『日本初の女性裁判所長三淵嘉子』 平凡社  2024.4  /289.1/ミ/
『虎に翼 上』 吉田 恵里香/作,豊田 美加/ノベライズ  NHK出版  2024.3  /913.6/トヨ/1
『三重の女性史』 三重の女性史編さん委員会/編さん  三重県文化振興事業団三重県男女共同参画センター「フレンテみえ」  2009.3   L/367/ミ/
国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/

<志るべ>

 

 

 

夏の定番

2024年7月8日(月)|投稿者:kclスタッフ

こんにちは、なばなです。

暑い日が続いていますね。

去年の夏は全国の平均気温が統計開始以降の最高記録だったそうですが、今年も更新しそうな勢いを感じます。

こんな少しでも涼しくなりたい夏の定番の一つなのが ・・・怖い話ですよね。

というわけで、今回はひんやりと涼しくなるような怖い話の本を紹介します。

 

 

まず初めに紹介するのはこちら。

芦沢 央/著『火のないところに煙は』(新潮社刊)

 

 

作家である主人公に舞い込んだ、あるホラー企画。

過去の忌まわしい記憶と向き合う為に、主人公は怪談を集めていきますが、やがて思いもよらない結末に繋がっていき・・・

この小説は短編ホラーでありながら、完成度の高いミステリーでもあります。

それぞれの怪談に残された謎。それが解かれた時に浮かび上がる、話の本当の怖さ。

そして、タイトルに隠された意味。それら全てに気づいた時、納得と恐怖で血の気が引きました。

ホラーとミステリー、二段重ねの恐怖を味わえる本です。

 

 

 

次に紹介するのはこちらです。

井上 宮/著『ぞぞのむこ』(光文社刊)

 

 

架空の町の漠市を中心に、そこに関わった人々の不条理を書いた短編小説です。

漠市に踏み入れてから始まる、白昼夢から悪夢に落とされるような不気味さと理不尽な展開。

怖さと気持ち悪さと悲しさを一気に詰め込まれるような読後感・・・

読んでいる時はお腹いっぱいだと感じていたのに、読み終えても続きを探している自分に、また恐怖を感じました。

 

 

 

最後に紹介するのはこちら。

今までゾッとするような怖さばかりだったので、少し毛色の違った本を紹介します。

大城 道則/著,芝田 幸一郎/著 角道 亮介/著『考古学者が発掘調査をしていたら、怖い目にあった話』(ポプラ社刊)

 

 

世界を股にかける考古学者たちが、現地であった怖い体験を書いたノンフィクションエッセイです。

発掘で人骨は当たり前。行く先々で出会うはゲテモノ料理と自然の脅威、果ては本当に怖いのは人間の話まで。

あらゆる面での怖い目に遭っても、遺跡のためにエンヤコラと突き進む考古学者たち。

その情熱とタフさは感動すらしてきます。

未知の怖さも冒険の楽しさも味わえる本です。

 

 

 

怪談と言えば、桑名にも有名な幽霊の話があります。

桑名市清水町に現在もある浄土寺に伝えられた、「幽霊飴」という話です。

こちらは『東海の民話』のP243、『読みがたり三重のむかし話』のP23、『伊勢・志摩の民話』のP17、『桑名の伝説・昔話』のP231と複数の資料に収録されています。

 

江戸時代の頃、浄土寺の門前に飴忠(あめちゅう)という飴屋がありました。

そこに一人の女が毎晩飴を買いに来るようになったのですが、それ以来なぜか売上金の中に木の葉が一枚混ざるようになりました。

あの女が原因だと考えた店主が、帰る後をつけていくと、その女は浄土寺の墓地でフッと消えてしまったのです。

恐ろしくなった店主は、翌日住職と一緒に墓地の女が消えた場所に行くと、墓の下から赤ん坊の声が聞こえます。

驚いて墓を掘ると、女に抱かれた赤ん坊が飴を舐めていました。

女は我が子を育てるために、幽霊になって飴を買いに来ていたのです。

事情を悟った店主と住職は、泣いている赤ん坊を引き取り、女を手厚く埋葬してあげました。

飴忠はこれ以来、地蔵盆の時期に飴を売るようになり、人々はこれを「幽霊飴」と呼んだそうです。

 

幽霊飴の話は各地にあるそうですが、桑名の浄土寺では8月23日、24日の夕方に実際に「幽霊飴」が販売されているそうです。

幽霊の出てくる話ではありますが、怖いというよりも人情を感じる話ですね。

 

幽霊の怖い話、妖怪の怖い話、人間の怖い話。

どんな話でも不思議と最後まで読みたくなるのが、怖い話の一番の怖さかもしれませんね。

 

<参考資料>

『東海の民話』(毎日新聞社学芸部/編 六法出版 1982 YL388ト)

『読みがたり三重のむかし話』(三重県小学校国語教育研究会/編 日本標準 2004.6 AL388ミ)

『伊勢・志摩の民話』(倉田 正邦/編 未来社 1961 AL388イ)

『桑名の伝説・昔話』(近藤 杢/編,平岡 潤/編 桑名市教育委員会 1965 YL388.1ク)

 

 

子どもって子どもって・・・

2024年5月6日(月)|投稿者:kclスタッフ

こんにちは、しちりです。

爽やかな5月となりました。

ゴールデンウィークにはこどもの日もあり、お子さんと楽しく過ごした方も多いのではないでしょうか?

しかし、子どもを育てるって、楽しいけれど本当に大変ですよね。

ということで今回は、子育てを題材に、大人も子どもも心がほぐれるような本をご紹介します。

 

 

子どものことば』 (子どもとことば研究会/編・著 小学館 2017)

 

皆さんは、子どもの「ことば」にハッとすることはありませんか?

なんてするどい!なんてかわいい!そんな風に感じてるのか!

大人顔負けの表現に出会うこともあるはず。

この本では、主に幼稚園や保育園での日常で子どもたちが発した「ことば」を丁寧に取り上げています。

思わず笑ってしまう表現もたくさんあり、お子さんをお持ちの方やお子さんに関わるお仕事をされている方は、共感すること間違いなし!です。

また、それらの「ことば」から、子どもの発達や、どんな成長時期にあるのかを示して、周囲の大人はどのように寄り添えば良いのかをやさしく解説しています。

今しかないお子さんの「ことば」をたくさん書き留めておきたくなる本です。

 

 

子どもをキッチンに入れよう!』(藤野 恵美/著 ポプラ社 2020)

 

「え?!子どもをキッチンに入れたら、危ないのでは?」

包丁や食器、洗剤、ガスの火など、キッチンは子どもがケガをする要素が満載なので、安全を第一に出入りをしないよう、柵をする方も多いのではないでしょうか。

しかし、この本の著者は、忙しい毎日でも、どうにか工夫をして家事と育児を楽しむために、子どもをキッチンに入れ、家事と育児を一緒にしてしまう、という決断をしたのでした。

これが、まさに、目からウロコ・・・。

十分に安全な環境に整えると、キッチンには色々な道具や食材があります。それらを上手に使いながら、親子でコミュニケーションを取り、楽しく作って、楽しく食べる!(各エピソードの終わりには、親子でできる料理のレシピ付き!)

食に興味がわけば、スーパーマーケットに行くことも楽しいイベントに!生産地の地名やお金の計算等、子どもが自然に楽しく学べる要素がいっぱい!

小説家でもある著者は、子育て本を1000冊ほど読み、子育てを分析した上で実践してみたというだけあって、取り入れたい点がたくさんあります。

忙しくても子育てを楽しむヒントがきっとあります。

 

 

子どもが幸せになることば』(田中 茂樹/著 ダイヤモンド社 2019)

 

とは言うものの、子育てに不安や悩みはつきものですね。

子どもがだだをこねる、野菜を食べない、宿題をやらない、学校に行きたくない…。

私も散々悩ませられました。

この本では、そんな育児の悩みの場面を年齢ごとに分けて、声かけの言葉を具体的に示しながら、子も元気になり、親の気持ちもラクになる方法を紹介しています。

実際によくある場面を例に挙げ、「言いがちなことば」を「信じることば」に変えるだけ。

なんだ、これならすぐにでもできると思うものばかりです。困った場面に出会った時、子どもはどう感じ、何故困っているのかを分かりやすく説明しているので、親としてどう対応すれば良いのかが自然と理解できます。

著者は、20年間で5000以上の面接を行ってきたカウンセラーでもあり、やんちゃな4人のお子さんを育てた父親でもあり、毎週近所の小学生と小学校の体育館で遊びを通して関わってきた社会人でもあるという、さまざまな側面を持っています。

その著者の言葉には、優しさの中に経験に裏打ちされた重みがあります。

 

 

ムスコ物語』(ヤマザキ マリ/著 幻冬舎 2021)

最後にご紹介したいのは、マンガ『テルマエ・ロマエ』の作者であり、文筆家のヤマザキマリさんの子育てを綴った本です。

イタリアでシングルマザーになる事を決意した著者は、日本に帰国後、仕事をいくつも掛け持ちしながら、全力で子育てをします。

その後イタリアの男性と結婚することになり、夫の仕事の都合でシリア→スペイン→アメリカと家族で移住することに。

異国の地で、お父さんとお母さんに振り回されっぱなしのムスコ君。苦労の連続にあいながらも、たくましく成長していく姿が印象的です。

どのエピソードも破天荒すぎて驚きの連続ですが、作者らしい歯に衣着せぬ言葉の中にも、ムスコ君への愛があふれています。

そして、本の最後には、ムスコ君からのメッセージつき。

作者に育てられた本人はどう思っていたのか、こちらもぜひ読んで頂きたいです。

 

子育てにまつわる本を紹介しました。

大人も子どもも元気になる本を読んで、子育てを楽しみたいですね。

 

《紹介資料》

子どものことば』子どもとことば研究会/編・著 小学館  2017.8

子どもをキッチンに入れよう!』藤野 恵美/著 ポプラ社 2020.11

子どもが幸せになることば』 田中 茂樹/著 ダイヤモンド社 2019.2

ムスコ物語』 ヤマザキ マリ/著 幻冬舎 2021.8

遠くて近い留学の話

2023年9月14日(木)|投稿者:kclスタッフ

こんにちは、なばなです。

 

9月に入って暦の上では秋、のはずですが、未だ残暑が厳しいですね。

動くのも億劫になる今日この頃。

この倦怠感を吹き飛ばすイベントはないかとテレビをつけると、こんなニュースが目に飛び込んできました。

 

「コロナの制限緩和で海外留学再開!」

 

日本とは違い、海外の多くの国では9月からが新学期です。

コロナの規制も落ち着いた今、9月から入学や進学再開に向けて準備する学生が増えている、という内容でした。

 

なるほど、海外留学...

 

よしやろう!と、言えるほど簡単な事ではないのですが、なんとも心躍る響きです。

それに、準備がかかる物こそ今調べておけば、後々役立つかもしれません。

そこで今回は、留学に関して役立ちそうな本を紹介しようと思います。

 

 

まず最初に紹介するのはこちらです。

 

『6カ国転校生 ナージャの発見』

(キリーロバ・ナージャ/著 集英社インターナショナル 2022)

 

留学する以上、どんな風に学ぶかは重要ですよね。

この本の著者は、小学校から中学校までに6ヶ国の学校に転校しました。

その経験から、各国の教育の違いを比較されており、留学先でどんな教育を受けたいかを考える上で、参考になります。

 

ですが、それ以上に参考にしてほしいのは、本の後半です。

何度も転校した著者は、当然言葉や文化など様々な壁にぶつかりますが、その中である「発見」をします。

 

これ以上はネタバレになるのでお伝えは出来ませんが、学ぶとは何か、と考えさせられる内容でした。

留学に興味がある人にも、そうでない人にも一度読んで欲しい本です。

 

 

 

次におすすめするのは、海外留学記です。

 

『テムズとともに 英国の二年間』

(徳仁親王/著 紀伊國屋書店 2023)

 

こちらは今年復刊されて、メディアに取り上げられたので、ご存知の方も多いかもしれません。

イギリスの名門オックスフォード大学での寮生活、というのも心惹かれる設定ですが、話題になった最大の理由は著者の存在。

著者は徳仁親王殿下。現在の天皇陛下がイギリス留学時代のことを綴った本なのです。

そのため、作中には大使や、貴族、英国王室といった要人、更には女王陛下までさらっと登場していて驚かされます。

 

ですが、それ以上に引き込まれるのは、その大学生活の描写です。

尊敬できる教授との出会い、寮生活での様々な驚き、友人たちとの他愛のないやり取り...

読みやすいさらりとした文章なのに一つ一つ情感がこもっていて、思い出を大切にしている気持ちが伝わってきます。

 

復刊の際、新たに増えた後書きには

「この本によって海外へ留学してみたいと思う人が一人でも増えれば、私にとって大きな喜び」

と記されているそうですが、その思いがしっかりと伝わってきます。

 

復刊版は長島図書館の所蔵ですが、中央図書館には初版があります。

自然と留学したいと思わせてくれる魅力の詰まった本です。

 

 

最後に紹介したいのは、こちら。

『留学を考え始めた親と子で読む本』

(平田 久子/著 コスモピア 2020)

 

留学の大まかな手順や予算などをまとめた入門書です。

親子ではなくとも、留学をより具体的に考えたい人におすすめです。

著者自身も親子三代で留学が経験あり、精神面と物理面の双方からのアドバイスも豊富です。

なるほど、留学は人生設計なのだと納得させられます。

 

留学することがすべてではないという考えも述べており、読み進めるうちに漠然としたイメージから、自分の望む留学の形が見えてきます。

留学を具体的に考え始めた方におすすめです。

 

 

 

昔は海外留学したと聞くと、自分とは別世界の話のように感じたものです。

ですが近年は国内外問わず選択肢が増え、今では何歳からでも、どんな短い期間でも大丈夫。

縁遠いと思っていた世界は、いつの間にか随分近くなっていました。

 

皆さんも、どこかの国の新学期にいつかは参加する日が来るかもしれません。

その前準備に、まず図書館の本を手に取ってみてはいかがでしょうか?

 

 

 

紹介資料

『6カ国転校生 ナージャの発見』(キリーロバ・ナージャ/著 集英社インターナショナル 2022)

『テムズとともに 英国の二年間』(徳仁親王/著 紀伊國屋書店 2023)

『テムズとともに 英国の二年間』(徳川親王/著 學習院総務部広報課 1993)

『留学を考え始めた親と子で読む本』(平田 久子/著 コスモピア 2020)

#kclスタッフおすすめ本 『本屋さんで待ちあわせ』

2023年5月26日(金)|投稿者:kclスタッフ

2021年6月18日より始まりました、#kclスタッフおすすめ本。
2021年6月~2022年5月までに30冊。
2022年6月~2023年5月までに30冊。
この2年間で、計60冊の図書館スタッフ厳選の本を紹介していまいりました。
当ブログが、これまで中々出会わなかった本に興味を持つキッカケとなっていたら幸いです。

ご紹介した本は、下の画像からご覧いただけます。(PDFファイルで開きます)

2021年おすすめ本は、こちらのブログからご覧いただけます。

▼2022年5月20日公開
「#kclスタッフおすすめ本 『司書が書く図書館員のおすすめ本』」

 

 

 

さて、今回ご紹介する本は小説家・三浦しをん氏による書評集です。

 

【 読書が苦手な人へ 】

『本屋さんで待ちあわせ』
(三浦 しをん/著 大和書房 2012年刊)

 

『まほろ駅前多田便利軒』(直木賞・2006年)、『舟を編む』(本屋大賞・2012年)など多数の作品で知られる三浦氏。
今回の書評を読むまで三浦氏がどんな方か存じ上げなかった為、本を開いてすぐの「はじめに」を読んだ瞬間、肩の力が抜けました。
直木賞作家の書評、と身構える必要なし。
例えるなら、読書好きの友人が様々なジャンルの本を大いに私感を織り交ぜながら話してくれているような書評です。
三浦氏自身も、《ちゃんとした評論ではもちろんなく、「好きだー!」「おもしろいっ」という咆哮になっちゃってる》と書かれている通り、本当に気軽に読めます。

 

食事をしながら読書をする著者が紹介する本は、東海道四谷怪談から太宰治、はたまたBL作品までと多岐に渡ります。
全く異なるジャンルのように感じる本が、著者の手にかかれば「おもしろいっ」本として同じ棚に並ぶ。
ページをめくる度に、次はこれ?え、この本の次にこれ!?と驚きながらも、うわぁこれは確かに面白そうだ…と感心しつつ、せっせとメモをとる。
気になって仕方なくなったら、ページをめくる手を止めて気になるタイトルを図書館へ探しに行く、または「青空文庫」で公開されている作品であれば、勢いのまま読みに行く事もありました。

 

今回「読書が苦手な人へ」と本書を選んだ理由は、実はそこにあります。
途中で手を止めても良いと思える気軽さ。
そして、とても簡潔で小気味いい書評。
どれくらい完結かといえば、たった1ページで終わる事も多々あります。

どんな本を読もうか悩む人も。
あんまり読書好きじゃないけれど、読まなくちゃ…という人も。
著者の愛に溢れた書評集を読んでみるのはいかがでしょうか。

 

 

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『本屋さんで待ちあわせ』

 

▼出版社
大和書房

 

▼書影画像元
版元ドットコム

 

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