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疲れと悩みに寄り添う本
2025年5月6日(火)|投稿者:kclスタッフ
こんにちは、しちりです。
新年度が始まって1か月が経ちましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
新しい環境になる人もいれば、新しい人を迎え入れる人もいるかと思います。
中には、忙しく働き、疲れたり神経をすり減らす1か月を過ごした方もいるのではないでしょうか?
環境の変化で、疲れや悩みが出てくる時でもありますね。
今回は、そんな時に寄り添ってくれる本をご紹介したいと思います。
まず、1冊目はこちら。

『挫折しそうなときは、左折しよう』 マーク・コラジョバンニ/文,ピーター・レイノルズ /絵,成田 悠輔/訳 光村教育図書 2023.5
だじゃれ? と思わず笑ってしまいそうな絵本ですが、不安に思っている時には逆にこの楽しい題名がいいのかもしれません。
誰でも挫折しそうな時はありますよね。これでいいのかな? また失敗しちゃうかな? 私たちは日々考えながら過ごし、決断しなくてはいけません。不安を感じる時もあると思います。
そんな時、どうすればいいのか?
そう、「左折する」のだそうです。
これだけだと??? と思うかもしれませんが、読んでいただければ、「左折する」とはどういうことなのかがよくわかります。
自分の気持ちの整理の仕方や前向きに考えるヒントが、わかりやすく描かれており、読んだ後には心がすーっと軽くなります。
「左折」の意味をかみしめることができます。
絵本ではありますが、大人でも充分に堪能できる内容です。親子で読んでも楽しめます。
経済学者で起業家の成田悠輔(なりた ゆうすけ)さんが、翻訳をされているのも注目です。
次はこちら。

『休養学』 片野 秀樹/著 東洋経済新報社 2024.3
仕事、家事、育児、介護等、私たちは日々忙しく働いています。
疲れていてもやることがたくさんあって休めない。
休んでも疲れがうまくとれない。
そんな人もいるのではないでしょうか?
そんな方に読んでいただきたいのが、この本です。
休み方を20年間考え続けた著者が、「疲れとは何か」、「疲れているのに休まずにいるとどうなるのか」、「どんな休み方をすればよいのか」を解説してくれます。
だらだらと寝ているだけでは、疲れはとれません。
疲れのメカニズムと対処法を正しく理解することで、上手に疲労を回復し、自分に休養を与え、生活の質まで向上することができます。その秘訣がこの本には詰まっています。
身体だけでなく、考え方も前向きになる休養の方法で、毎日を生き生き過ごしてみませんか?
最後の1冊はこちらです。

『だれかに、話を聞いてもらったほうがいいんじゃない?』 ロリ・ゴットリーブ/著,栗木 さつき/訳 海と月社 2023.4
この作品は著者自らの経験を書き記したものです。彼女は、現役のセラピストであり、作家の仕事もこなすシングルマザー。
そのセラピストがセラピーに通うという、なんとも不思議な内容です。
彼女のところには、さまざまな人が患者としてやってきます。
暴言をはきまくるハリウッドのプロデューサー、結婚直後に癌で余命を宣告された女性、離婚歴のあるうつ病の女性等々。
彼女はセラピストとして、これらの患者に真正面から向き合い、信頼関係を築くために懸命に寄り添い、的確なアドバイスを繰り出します。
忙しいながらも充実した日々を送っていました。
ところが、つきあっていた彼氏が突然別れを宣告し、彼女のもとを去ってしまいます。
さあ大変。
友人に勧められ、セラピーを受けることになるのですが、いざ自分が患者の立場になると、ひたすら元カレを非難し続け、泣きわめき続ける…。
セラピストとしての、冷静で努力家の著者の姿はどこにいったの? と思うくらいの取り乱しようです。
彼女を担当した男性セラピストは、今までのセラピストの手法とはかなり違うやり方をする、変わった人物でした。そんな彼は、著者の真の悩みをズバリと言い当て、彼女をドキリとさせます。彼女は、反発しながらもセラピーに通うことになるのですが…。
セラピストとして患者と向き合い、一方で患者としてセラピストと対峙する彼女。一体どうなるのか、目が離せない展開に引き込まれます。
やがて、著者自身と彼女の患者たちが、それぞれ自分の悩みと向き合い乗り越えていく場面では、セラピストと患者の強い絆を感じることができ、感動で涙がとまりませんでした。
人は、深い悲しみや悩みを抱えていても、自分自身で再生することができる、そんな自信をつけさせてくれる本です。
今回は、3冊の本をご紹介しました。
疲れた時、不安になる時、あなたに寄り添い、あなたの心を癒してくれる本がきっとあると思います。
図書館でじっくりゆっくり本を読んでいただければ幸いです。
<紹介資料>
・『挫折しそうなときは、左折しよう』 マーク・コラジョバンニ/文,ピーター・レイノルズ /絵 成田 悠輔/訳 光村教育図書 2023.5
・『休養学』 片野 秀樹/著 東洋経済新報社 2024.3
・『だれかに、話を聞いてもらったほうがいいんじゃない?』 ロリ・ゴットリーブ/著,栗木 さつき/訳 海と月社 2023.4
<しちり>
第28回「図書館を使った調べる学習コンクール」の受賞作品
2025年1月16日(木)|投稿者:kclスタッフ
第28回「図書館を使った調べる学習コンクール」(公益財団法人 図書館振興財団)の 受賞作品が発表されました。
全国から12万点を超える作品が応募され、桑名市からは「第20回 桑名市図書館を使った調べる学習コンクール」で最優秀賞・優秀賞に選ばれた4作品が出品されました。
そして、気になる結果はこちら!
■優良賞(1作品)
・小学生の部(中学年)
「真夏のようかい大調査!!桑名・多度のようかい、ふしぎげんしょうをおえ!!」
米澤 慶さん(桑名市立多度中小学校 3年)
■奨励賞(2作品)
・小学生の部(中学年)
「わたしにもできることがある 小さな一歩 ~海や川の生き物を守るために~」
服部 永和さん(桑名市立長島北部小学校 3年)
・子どもと大人の部
「お金のはじまりと今」
山田 一輝さん(桑名市立伊曽島小学校 2年)・山田 理奈さん(母)
■佳作(1作品)
・小学生の部(高学年)
「いろのいろいろ」
平井 理菜さん(桑名市立大山田南小学校 5年)
受賞されたみなさん、おめでとうございます。
お子さん個人だけでなく、小学生以上のお子さんと一緒に大人の方でも応募できますので、みなさんが日常の中で興味・関心を持ったことをぜひ調べる学習コンクールの作品づくりに挑戦してみてください。
これからも、図書館は皆さんの調べる学習を応援・サポートいたします。
あけましておめでとうございます 2025
2025年1月5日(日)|投稿者:kclスタッフ
あけましておめでとうございます。しちりです。
今年も桑名市立中央図書館とスタッフブログ「ブックとラック」をよろしくお願いします。
桑名市立中央図書館は、1月4日から開館しております。
皆さま、お正月はいかがお過ごしでしょうか?
今年は巳年ですね。
巳(み)という字は、「長くて曲がり、尾をたらしたヘビの形」(『例解新漢和辞典』p335)を表す象形文字からきており、十二支の中で六番目の動物に蛇を割り当てて、蛇年=巳年としたのだそうです。
そこで今年は、干支の「ヘビ」が出てくる絵本や児童書をご紹介し、新年を感じてみたいと思います。
こちらは、「十二支むかしむかしシリーズ」のひとつです。
子どもに恵まれなかった老夫婦が、池のほとりでヘビのたまごを見つけるところからお話は始まります。
老夫婦はヘビの子を「おふじ」と名付けて、大切に育てていました。ところが、ぐんぐん育つおふじはいつしか村人から怖がられ、山に捨てられることになってしまいます。
大切に育てていたおふじと、泣きながらお別れをするおじいさんとおばあさん。おふじと老夫婦にはどんな展開が待ち受けているのでしょうか?
この後一体どうなるのだろう? ハッピーエンドであってほしい! とハラハラドキドキが存分に味わえる本です。
おふじがおもちを大好きなのも、お正月にぴったりですね。
こちらも昔話ですが、落語になっているので、知っている方もいらっしゃるかもしれません。
芝居役者のたのきゅうは、おかあさんが病気という知らせをふるさとの村から受け、急いで村へ向かいます。
その道中、山の中で大きなヘビに遭遇します。大きなヘビは旅人を襲うという「うわばみ」でした。
たのきゅうは、なんとか生き延びようと、芝居で培った得意の早変わりで侍や娘の姿に変装し、うわばみを楽しませます。
自分を怖がらずに何にでも変装するたのきゅうに感心したうわばみは、たのきゅうに怖いものを尋ね、自身も自分の怖いものを打ち明けます。
こうして、たのきゅうは無事お母さんのいる村へ帰ることができたのですが…。
機転が利くたのきゅうの賢さが際立つ点と、軽快なリズムで展開される内容が、この昔話が長く読み継がれている要因ではないかと思います。
巳年のお正月にぜひ読んでおきたい一冊です。
『たのきゅう』では、おおきなヘビのことをうわばみと書いてありました。うわばみとはもともと、「古代語ヲロチに代わって十五世紀ごろから現れた語」(『暮らしのことば新語源辞典』p134)だそうです。
オロチと言えば、古事記に出てくる八岐(やまた)の大蛇(オロチ)を思い出します。
ある日イザナギの子、スサノオは、泣いている老夫婦に出会います。八岐の大蛇が老夫婦の娘を毎年ひとりずつ食べ、とうとう今年は最後の娘が食べられてしまうと、泣いていたのです。そこでスサノオはその娘を妻にするかわりに、八岐の大蛇を退治することを約束します。
古事記の本はいろいろありますが、こちらの古事記はとにかく読みやすいし面白い!
日本を代表する児童文学者の斉藤洋さんが楽しい語り口で書いています。
お子さんだけでなく、古典が少し苦手だなという大人の方が読んでも楽しめます。
スサノオが八岐の大蛇を退治する場面の迫力を、この本で味わってみてください。
こちらは、三重県出身の絵本作家、tsupera tsuperaさんの絵本です。
へびが何かを飲み込み、次のページで何を飲み込んだのかを答え合わせする、という形で話が進みます。「えええっ?こんなものまで?!」 とヘビが飲み込んだものにびっくりすること間違いなし!です。
作者の発想の豊かさに感服。
答え合わせのページの背景が真っ黒なので、背景とのコントラストで飲み込んだものがくっきり浮かびあがり、驚きが増します。
読んでいて飽きない仕掛けになっています。
どんなものを飲み込んだのか、是非読んで確かめていただきたいです。
ヘビがレストランを始める? いったいどうやって料理するの? と、設定からツッコミ満載の絵本です。もうこれは、面白いとぞいう匂いがプンプンしますね。
ヘビのレストランにやって来たぶたくん。
自分で作らないといけないけれど、ヘビのいう通りに作れば、「とびきりおいしい料理」が食べれると聞かされて、キッチンにやってきます。
材料を前に、歌を歌いながら踊ったり、変なおまじないを言わされたり、うまくできないと怒られて何度でもやり直しさせられます。
さすがのぶたくんも怒って帰ろうとするのですが…。
はたして「とびきりおいしい料理」は食べられるでしょうか?
そして、ヘビのレストランの評判はどうなるでしょうか?
絵本ならではの楽しい展開なので、読むと笑ってしまうかもしれません。初笑いにピッタリです。
ところで外国では、蛇は表面が傷ついても脱皮をすると元通りの姿にもどるため、再生と治癒のシンボルとしての意味があるようです。
世界保健機関(WHO)のマークには、ヘビが巻きついた杖の絵が描かれているのをご存じでしょうか?
これは、「アスクレピオスの杖」といい、ギリシャ神話に登場する医学の神アスクレピオスがこの杖を持っていたことから、WHOのシンボルマールに取り入れられました。
最後にアスクレピオスと再生のお話を紹介します。
こちらの本の、ヘビつかい座・ヘビ座のお話にアスクレピオスは登場します。
アスクレピオスは、ケンタウルス族の賢者ケイローンから医術を学び、多くの人を助けていました。治療にはヘビが使われていましたが、ある時アスクレピオスは、助けたい一心から死者を生き返らせてしまいます。
死者が生き返ると地上に人があふれて秩序が保てなくなるため、大神のゼウスはアスクレピオスを殺してしまいます。しかし、多くの人の命を救ったアスクレピオスの功績をたたえて、天にあげて星座にしました。
この本には、他にも四季折々の星座のお話が載っていますので、この機会にじっくり読んでみるのもおすすめです。冬の澄んだ夜空を見上げるのが楽しくなるかもしれません。
以上、ヘビの出てくる絵本や児童書をご紹介しました。
今年もたくさんの本を手にとっていただけるよう、さまざまな本の紹介をしていきたいと思っております。
本年もよろしくお願いいたします。
<紹介資料>
・『おもちのすきなヘビのおふじ』(谷 真介/文,赤坂 三好/絵 佼成出版社 2006.12)
・『たのきゅう』(小沢 正/文,太田 大八/画 東京 教育画劇 1996.4)
・『古事記 -日本のはじまりー』(斉藤 洋/文,高畠 純/絵 講談社 2018.7)
・『へび のみこんだ なに のみこんだ』(tupera tupera/さくえほんの杜 2011.12)
・『ヘビのレストラン』(深見 春夫/作 PHP研究所 2017.11)
・『星座と神話 大じてん』(永田 美絵/著 成美堂出版 2022.6)
<引用および参考資料>
・『干支の漢字学』(水上 静夫/著 大修館書店 1998.12)
・『例解新漢和辞典』(山田 俊雄/編著,戸川 芳郎/編著,影山 輝國/編著 第5版三省堂 2021.2)
・『暮らしのことば新語源辞典』(山口 佳紀/編 講談社 2008.11)
・『たのきゅう』(川端 誠/作 クレヨンハウス 2003.6)
・『読み出したら止まらない古事記』(島崎 晋/著,中村 隆/イラスト PHP研究所 2012.1)
・『調べてみよう!国際機関の仕事~SDGs時代へ 3』(吉村 祥子/監修 汐文社 2022.3)
・『星座と星座神話』(沼澤 茂美/著,脇屋 奈々代/著 誠文堂新光社 2006.3)
<しちり>
「第20回桑名市図書館を使った調べる学習コンクール」表彰式
2024年12月1日(日)|投稿者:kclスタッフ
2024年11月29日(月)に、第20回 桑名市図書館を使った調べる学習コンクールの表彰式が行われました。
今年は142作品のご応募いただきました。
そのうち、
☆最優秀賞 1作品
☆優秀賞 3作品(うち、地域賞1作品、子どもと大人の部1作品)
☆奨励賞 16作品
が入賞し、21名の方々が表彰されました。
今年度の受賞作品の一覧はこちらからご覧いただけます。
➡ 第20回 桑名市図書館を使った調べる学習コンクール入賞作品発表(PDF)
みなさんの疑問・興味を持ったことを一生懸命調べる姿がとても素敵でした。
これからも調査のお手伝いが出来るよう、図書館スタッフ一同サポートしてまいります。
最優秀賞・優秀賞に選ばれた作品は全国コンクールへ出品されます。
入賞作品の閲覧をご希望の方は、児童コーナー窓口へおたずねください。
ゆっくり、じっくり、あじわう秋
2024年9月9日(月)|投稿者:kclスタッフ
こんにちは、しちりです。
9月だというのに、まだまだ暑い日が続きますね。
夏休みも終わり、仕事に学校に忙しい毎日が戻ってきたかと思います。
最近は「タイパ(タイムパーフォンス)」に代表されるように、すべての物事を効率よく短時間でできることが、求められがち。
もちろん大切なことではありますが、タイパを求めるあまり、ふと窮屈さを感じてしまうのは、私だけでしょうか?
そこで今回は、少し立ち止まってゆっくりとした時間の中で、じっくりと味わうことのできる本をご紹介します。
こちらは、日々起こる自然の営みを、ゆっくりと味わうことのできる本です。
鳥、虫、動物の営みや自然の風景50項目を、各項目見開き2ページで説明しているのですが、物語のように流れる文章と、細部まで書き込まれた美しい絵に、たちまち心がひきこまれます。
ひとつひとつの出来事がきちんと理解できるとともに、じんわりと感動を覚える不思議さ。
毎日懸命に生きている生き物と、それを包み込む自然の美しさを感じて、心がほっとしてリラックスすることができます。
児童書ですが、大人でも十分に楽しめます。むしろ大人が読むと、子どもの頃の心象風景と重なり、懐かしく感じるかもしれません。
続編は、物語のような文章と、美しいイラストはそのままに、恐竜の化石ができる様子やブラックホールのことなど、時間も空間もスケールアップし、好奇心を大いにそそられます。
砂漠や氷山など、行ったことのない場所の話が出てきたかと思えば、ミミズや暗闇で光るネコの目の話などの身近な話があったりと、自然のさまざまな場面を感じることができるところが魅力です。
読みながら、「そうだったのか!」という気付きや、さらに詳しく調べてみたくなる内容も多く含まれています。
どちらの本も、2ページ完結なので、読みたいところだけを読んで楽しむこともできますが、あまりの魅力にページをめくる手が止まらないかもしれません。
旧暦を使用していた時代に日本人は、自然を敏感に感じ取り、季節ごとに名前をつけ、いにしえの知恵に学びながら、生活をしていました。
一年を二十四の季節にわけるのが二十四節気、それをさらに細かく分けたものを七十二侯と言うそうです。
この本では、リズミカルな詩の中に七十二候の季節の言葉を取り入れ、自然の移り変わりを楽しく分かりやすく表現しています。
ぜひ音読も楽しんでみて欲しい一冊です。
ひとつひとつは、ややわかりにくい言い回しもありますが、音読してみると、七十二候が詩のリズムの中に生き生きと表現されており、めぐる季節の美しさをすんなり味わうことができます。こんな季節の楽しみ方があったのかと思うほどです。
それにしても一年を七十二もの季節に分けると、一つあたりの季節は五日間ほど。昔の人が、たった五日でも季節の移ろいを感じていた、そのきめ細やかさを素晴らしいと感じずにはいられません。
旧暦に関連した本をもう一冊。
こちらの本では、明治の初めまで日本で使われていた旧暦の生活の知恵を、「福を招く」「恵みをいただく」「良縁を願う」など、七つのテーマにわけて紹介しながら、忙しく暮らしている今の私たちに、心のやすらぎ、体のいたわり方、幸せになるヒントを教えてくれています。
中には、春財布、土用の丑、七五三、冬至のゆず湯等など、今の日本人になじみのある習慣も多いのですが、改めて読んでみると、昔の人の、季節を感じながらしなやかに生き延びるための知恵がたくさん詰まっていて、自然とともに生きることの大切さを実感します。
その時々に気になったテーマを読んでも良いですし、最初から最後まで読み通すと、旧暦生活で培われた昔の人の英知に感嘆します。
そして最後の「おわりに」を読んでみてください。きっとその内容に、癒やしと納得を感じることができます。
忙しい毎日に疲れた時、是非読んでいただきたい本です。
最後にご紹介するのは、森林の植物のつながりについての大発見を記した本です。
お恥ずかしながら世界的ベストセラーということを知らなかった私ですが、それだけに衝撃の内容に圧倒されました。
森林の木々が、土中にある何層もの菌根ネットワークの複雑な働きによってつながり、支えあっていること。そして菌根ネットワークを使い、樹齢数百年にわたる大木(マザーツリー)が、驚きの役割をはたしていること。これらを著者は、30年以上にもわたる研究で発見したのでした。
研究の日々は、苦労の連続。途方もない時間と労力のかかる内容に驚くとともに、それでも森を守るために研究に没頭する姿に何度も心打たれました。
また、研究の内容だけでなく、家族との絆や辛い別れ、研究を批判する政府との軋轢、子育てと仕事の両立に悩む姿、新しい愛の形など、研究を取り巻く日常で起きる出来事が、ひとりの女性の視点でつぶさにつづられており、さまざまな立場の方に共感してもらえると感じました。
自然の壮大な支えあうシステムと、それを証明しようとする女性のひたむきさに、深く読めば読むほど、感動が増す本です。
皆さんも、毎日忙しく過ごしている中で、一呼吸おいて本を開いてみませんか?
夜が長くなってくる秋、本とともにゆったりとした時間を過ごしていただければ幸いです。
<参考資料>
『スロウダウン [1]』レイチェル・ウィリアムズ /文,フレイヤ・ハータス /絵,荻野 哲矢/ 訳 化学同人 2021.9
『スロウダウン 2』カール・ウィルキンソン/文,グレース・ヘルマー/絵, 荻野 哲矢/訳 化学同人 2021.9
『えほん七十二候』白井 明大/作,くぼ あやこ/絵 講談社 2016.3
『福を招く旧暦生活のすすめ』白井 明大/著 サンマーク出版 2017.12
『マザーツリー』スザンヌ・シマード/著,三木 直子/訳 ダイヤモンド社 2023.1
<しちり>