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旅に出よう

2026年5月1日(金)|投稿者:kclスタッフ

こんにちは、六華です。

毎年5月16日は、「日本旅のペンクラブ」が制定した「旅の日」。

松尾芭蕉が『おくのほそ道』の旅へ出発した5月16日(旧暦1689年3月27日)に由来しています。

忙しい現代の中で「旅の心」を大切にし、旅のあり方を考えるきっかけとして設けられました。

 

 

 

 

『おくのほそ道』といえば、国語の教科書でもおなじみの作品です。

 

月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり

 

この冒頭の部分を音読した記憶がある方も多いのではないでしょうか。

けれど、作品全体の内容を詳しく知っている人は意外と少ないかもしれません。

 

そこで、まずおすすめしたいのが、小学生向けに作られたこちらの本です。

 

『写真で読み解く おくのほそ道大辞典』(佐藤 勝明/監修  あかね書房  2022.1)

 

『おくのほそ道』は、江戸時代に書かれた紀行文学で、関東、東北、北陸から大垣までの約2,400キロメートル、156日に及ぶ旅の様子が描かれています。

芭蕉と弟子の河合曽良が旅の途中で詠んだ俳句や原文の内容が、美しい写真やイラストとともに紹介された、まさに『おくのほそ道』辞典の決定版!

ページをめくるたびに、まるで自分も旅に出ているような気持ちになれる一冊です。

また、俳句の季語や意味も掲載され、俳句の鑑賞方法から俳句作りのコラムまで、俳句について学習したい時にも役立ちます。

巻末に松尾芭蕉の記念館・資料館なども紹介されていますので、親子で訪れてみるのもおすすめです。

 

 

原文の言葉の美しさをじっくり味わいたい方には、次の本がぴったりです。

 

『すらすら読める奥の細道』(立松 和平/著  講談社  2004.1)

 

原文と現代語訳が見やすく並び、エッセイも添えられているので、タイトルの通りすらすら読めます。

 

芭蕉は人生そのものを旅になぞらえ、『おくのほそ道』の旅を終えたあとも歩みを止めません。

大垣から伊勢へ向かった旅の記録が『野ざらし紀行』です。

その道中、桑名で詠まれた俳句については、以前のブログ記事「文学と桑名~松尾芭蕉と泉鏡花~」(2024年2月10日)で詳しく紹介しています。こちらもご覧ください。

 

「旅の日」にちなんで、芭蕉の旅に思いを馳せてみるのも素敵です。

本を通して旅の空気に触れると、実際にどこかへ出かけたくなるかもしれません。

 

 


 

 

江戸時代の旅といえば、ひたすら歩き続けるもの。

では、現代のおじいちゃんと孫の二人旅はどんな風景になるのでしょうか。

そんな旅の姿を描いた絵本がこちらです。

 

『りょこう』(麻生 知子/作 福音館書店 2025.5)

 

こうたくんとおじいちゃんが電車で旅に出かける物語です。

車内で駅弁を食べ、旅館に泊まり、温泉に入って・・・そんな旅のワクワクが丁寧に描かれています。

おじいちゃんがこうたくんにシウマイを分けようとする場面など、温かいやりとりも魅力。

電車や旅館の様子が上から見えたり横から見えたりと、細部まで遊び心が詰まっていて、絵を眺めるだけでも楽しい発見がたくさんあります。

 

 

最後にもう一冊、旅をテーマにした絵本をご紹介します。

 

『ぼくのたび』(みやこし あきこ/作 ブロンズ新社 2018.11)

 

 

小さくて居心地のいいホテルを営む“ぼく”。

世界中から訪れるお客さんから知らない町の話を聞き、”ぼく”の町のことを語りながら、いつも心のどこかで旅への憧れをあたためています。

そして夜になると、夢の中で自由な旅へと出かけていくのです。

日常の場面はモノクロで、旅のシーンは淡い色彩で描かれています。

そのコントラストが、どこか儚く、ノスタルジックな雰囲気を生み出しています。

旅好きのみやこしあきこさんが、リトグラフという技法で紡ぎ出す世界は、読む人によって軽やかにも深くも感じられる、不思議な魅力に満ちています。

 

皆さんはこの絵本をどのように味わうでしょう。

ぜひ一度、ページを開いてみてください。

なお、絵本ができあがるまでの制作過程は、ブロンズ新社の公式YouTubeチャンネルでも

絵本『ぼくのたび』メイキングビデオとして紹介されています。

(https://www.youtube.com/watch?v=ObZgQ0DN9rc&t=4s)

 

 

 

 

桑名市立図書館では、さまざまな旅のガイドブックを借りることができます。

さらに「くわな電子図書館」を利用できる方(桑名市在住で、図書館の利用券をお持ちの方)は、旅行先でもスマホで『るるぶ』を読むことが可能です。館内にもポスターが掲示されています。

旅の準備にぜひご活用ください!

 

 

 

<紹介資料>

『写真で読み解くおくのほそ道大辞典』(佐藤 勝明/監修 あかね書房 2022.1)

『すらすら読める奥の細道』(立松 和平/著 講談社 2004.1)

『りょこう』(麻生 知子/作 福音館書店 2025.5)

『ぼくのたび』(みやこし あきこ/作 ブロンズ新社 2018.11)

 

<六華>

 

 

 

 

 

春、節目の季節に寄り添う本

2026年3月3日(火)|投稿者:kclスタッフ

はじめまして。六華(ろっか)と申します。

このたび、新しくブログを担当させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。

私の名前“六華”は、桑名のシンボルでもある「六華苑」からいただきました。

二代目諸戸清六の邸宅であった六華苑。

建物は、洋館と和風建築が調和した国の重要文化財で、庭園は、四季折々の美しさで人々を魅了し、国の名勝にも指定されています。

洋館の設計は、鹿鳴館などでも有名なジョサイア・コンドルが手掛けています。歴史的価値も高い六華苑について知りたくなったら、ぜひ図書館にも足を運んでみてください。

 

 

 

さて、三月は卒業の季節。

図書館でも、この時期になると進学や新生活に向けた本を探しに来られる方が増えます。

節目を迎え、新しい世界へ踏み出す準備をする時期ですね。

少しずつ大人になっていく子どもたちを、心配しながらもまぶしい気持ちで見守る日々。

「そもそも大人になるってどういうことなんだろう?」と、考えることがあります。

 

そんな私の目に留まったのが、こちら、ティーンズコーナーの一冊です。

 

『おとなになるってどんなこと?』 (吉本ばなな/著 筑摩書房 2015.7)

 

 

著者の吉本ばななさんは、ご自身が「初めて大人になった」と感じた瞬間を鮮明に覚えているそうです。それは中学生の頃(早い!)

初めてほんとうの意味で他者を思いやれた」「自分の恵まれた環境を客観的に見られた

そんな変化を自覚した時だったと書かれています。

このエピソードを読み、私も自分の子どもが一つの大きな試練を乗り越え、泣きながら感謝の言葉を伝えてくれた日のことを思い出しました。

あの瞬間、あの子も大人になったのだと感じました。

 

中学生向けのエッセイですが、「大人になるって難しい…」と感じている大人にこそ響く言葉が詰まった、おまもりのような本です。

おとなになんかならなくっていい、ただ自分になっていってください

優しい語り口で、節目の季節に、そっと寄り添ってくれます。

何かにつまずいた時に読み返すと、また一歩を踏み出す元気がもらえるのではないでしょうか。

 

 

次にご紹介するのは、こちらの本です。

 

『ぼくを探しに』
(シルヴァスタイン/作 倉橋由美子/訳 講談社 1979.4)

 

 

何かが足りない それでぼくは楽しくない 足りないかけらを 探しに行く

シンプルな絵と文なので、さらっと読むことができます。けれど、とても哲学的で、“大きい人向け”の絵本といえます。

読んだ後の受けとめ方はきっと人それぞれですが、人生の歩み方について深く考えさせられます。

人生は山あり谷あり。つらい時は立ち止まっても、後戻りしてもいい。

完璧じゃなくても、不完全なままでも、ありのままの自分を受け入れていけば人生は楽しい。

そんな前向きなメッセージを感じられる一冊です。

 

 

続いては、こちら。

 

『きょうのぼくはどこまでだってはしれるよ』 (荒井 良二/著 NHK出版 2019.9)

 

荒井良二さんといえば、児童文学界のノーベル賞と呼ばれるアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を、日本人として初めて受賞したことで知られる絵本作家です。

その独創的な色づかいと世界観は国内外で高く評価され、これまでに数多くの賞を受賞してきました。

絵本だけでなく、アート作品や舞台美術など幅広い表現活動にも取り組み、常に新しい表現を探し続ける姿勢が、多くのファンを魅了しています。

 

荒井良二さんの代表作のひとつ『きょうのぼくはどこまでだってはしれるよ』は、読む人の心をふっと軽くしてくれる絵本です。

ページをめくるたびに広がる色彩豊かな世界。

どこまでも走っていけそうな力強く駆ける馬とぼくの姿を見ていると、こちらも自然に元気や希望が湧いてきます。

「今日の自分には、思っている以上の力がある」

主人公のまっすぐな気持ちが、子どもにも大人にもやさしく響きます。

特別なことをしなくても、毎日はよろこびと感謝の連続。

気持ちひとつで世界はどこまでも広がっていく──

そんな前向きな感覚が、独特の絵とことばで描かれています。

 

 

最後は、こちらの絵本です。

 

『たくさんのドア』 (アリスン・マギー/文 ユ テウン/絵 なかがわちひろ/訳 主婦の友社 2010.11)

 

 

作者は、ベストセラー『ちいさなあなたへ』を書いたアリスン・マギー。

未来へ踏み出す子どもたちにエールを送る絵本です。

 

子どもたちの目の前に並ぶ“たくさんのドア”。

長い人生の中で、それらを一つひとつ自分の力で開けていく。

どんな未来が待っていても、そのドアを開ける力は必ずあなたの中にある──

そして、いつでも見守り、応援しているよ──

静かで力強いメッセージが胸に残ります。

卒業や進級など、新しい一歩を踏み出す季節にぴったりです。

 

 

 

 

人生の節目にそっと背中を押してくれる本や絵本を集めてみました。

皆さまの春が、あたたかく、素晴らしいものになりますように。
心から応援しています。

 

 

 

<紹介資料>

『おとなになるってどんなこと?』(吉本ばなな/著 筑摩書房 2015.7)

『ぼくを探しに』(シルヴァスタイン/作 倉橋由美子/訳 講談社 1979.4)

『きょうのぼくはどこまでだってはしれるよ』(荒井 良二/著 NHK出版 2019.9)

『たくさんのドア』(アリスン・マギー/文 ユ テウン/絵 なかがわちひろ/訳 主婦の友社 2010.11)

『ちいさなあなたへ』(アリスン・マギー/ぶん,ピーター・レイノルズ/え,なかがわ ちひろ/やく 主婦の友社 2008.4)

 

<六華>

秋の夜長、なにを読む?

2025年9月11日(木)|投稿者:kclスタッフ

こんにちは、たがねです。

9月に入りましたが、まだまだ暑い日が続いていますね。体感的には夏気分が抜けませんが、暦の上ではもう秋。期間限定メニューやスイーツで、一足先に秋を感じるようになりました。

 

9月の和風月名(旧暦での呼び名)である「長月」は「夜長月」から付けられたと言われています。秋分の日を過ぎたあたりから冬に向けて日照時間が短くなり、夜が少しずつ長く感じられるようになりますね。そんな夜が長い季節だからこそ、ゆったり過ごす時間が楽しみになります。

 

秋の夜長に楽しめることはいろいろありますが、図書館としてはやっぱり読書をおすすめしたいところ。

でも、いざ読書しようと思っても、読みたい本がなかなか見つからないことはありませんか? 気分を変えて、いつもは選ばないジャンルに挑戦してみたい時もありますよね。

今回は、秋の夜長のお供になる本選びに役立つ本をいくつかご紹介したいと思います。

 

 

まずはこちら、

『人生を狂わす名著50』( 三宅 香帆/著 今日 マチ子/絵  ライツ社 2017.10)

 

新書大賞2025を受賞した『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』が話題の三宅香帆さんによる書評集です。

本を読むことで考え方や生き方が大きく変わってしまうことを三宅さんは「人生を狂わす」と表現しています。

そんな人生を狂わす名著50冊を、気軽な語り口で紹介。まるで友達とおすすめ本を語り合うような軽やかな文体でスルスル読み進められます。さらに、各章の最後に「次に読みたい本」も3冊ずつ紹介してくれます。きっと気になる本が見つかると思います!

 

図書館には、この本以外にもいろんな書評集があります。書評の本は、請求記号019.9です。ぜひ手に取ってみてくださいね。

 

 

次に紹介するのはこちら、

『ブックデザイン365』( パイインターナショナル/編著  パイインターナショナル 2020.3)

 

本を選ぶ時、表紙に惹かれて思わず手に取ったことはありませんか? 表紙買いするという方も多いと思います。

この本は、文芸書から辞典までさまざまな本の、思わず手に取りたくなる装丁を365冊以上紹介しています。大きな写真とともに、書籍の概要やデザインコンセプトなどの情報がコンパクトにまとまっていて、眺めるだけで楽しい1冊です。ページをめくるたびに「こんな見せ方があるんだ!」と発見があり、本の楽しみ方がちょっと広がります。

この本の中で紹介されている本から気に入ったデザインの表紙を選んで読んでみるのも楽しそうですね。

 

図書館でも、新刊コーナーや展示棚、書架に表紙を見せて並べています。ぜひそちらにも注目してみてください。

 

 

最後に紹介するのはこちら、

『おかしな本棚』( クラフト・エヴィング商會/著  朝日新聞出版 2011.4)

 

この本は、不思議な雰囲気が漂う本棚をテーマにした本です。「頭を真っ白にするための本棚」や「波打ち際の本棚」などのタイトルがついた本棚が写真とともに紹介されています。写真で見えるのは背表紙だけですが、眺めていると「どんな本なんだろう?」と想像が広がっていきます。紹介されている本棚には実在しない本も混じっていますが、ほとんどは実際にある本です。図書館で所蔵している本もあるので、探して読んでみてください。

 

図書館の本棚もずらっと並んだ背表紙を見ているとワクワクしますよね。

特に展示コーナーは定期的にテーマを入れ替えているので、期間限定の本棚が見られます。普段はあまり手に取らないジャンルの本とも出会えるかもしれません。ぜひチェックしてみてください。

 

そして、この図書館ブログでも本選びのお手伝いができるかもしれません。スタッフによるおすすめ本紹介の記事がたくさんあり、カテゴリー「おすすめ本」からまとめてご覧いただけます。過去の記事でもたくさんの本を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

 

それでは、夜更かしはほどほどに!

秋の夜長に充実した読書時間を楽しんでくださいね。

 

 

 

<参考資料>

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅 香帆/著 集英社 2024.4)

『人生を狂わす名著50』(三宅 香帆/著,今日 マチ子/絵 ライツ社 2017.10)

『ブックデザイン365』(パイインターナショナル/編著 パイインターナショナル 2020.3)

『おかしな本棚』(クラフト・エヴィング商會/著 朝日新聞出版 2011.4)

<たがね>

疲れと悩みに寄り添う本

2025年5月6日(火)|投稿者:kclスタッフ

こんにちは、しちりです。

新年度が始まって1か月が経ちましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?

新しい環境になる人もいれば、新しい人を迎え入れる人もいるかと思います。

中には、忙しく働き、疲れたり神経をすり減らす1か月を過ごした方もいるのではないでしょうか?

環境の変化で、疲れや悩みが出てくる時でもありますね。

今回は、そんな時に寄り添ってくれる本をご紹介したいと思います。

 

まず、1冊目はこちら。

 

挫折しそうなときは、左折しよう』 マーク・コラジョバンニ/文,ピーター・レイノルズ /絵,成田 悠輔/訳  光村教育図書 2023.5

 

だじゃれ? と思わず笑ってしまいそうな絵本ですが、不安に思っている時には逆にこの楽しい題名がいいのかもしれません。

誰でも挫折しそうな時はありますよね。これでいいのかな? また失敗しちゃうかな? 私たちは日々考えながら過ごし、決断しなくてはいけません。不安を感じる時もあると思います。

そんな時、どうすればいいのか?

そう、「左折する」のだそうです。

これだけだと??? と思うかもしれませんが、読んでいただければ、「左折する」とはどういうことなのかがよくわかります。

自分の気持ちの整理の仕方や前向きに考えるヒントが、わかりやすく描かれており、読んだ後には心がすーっと軽くなります。

「左折」の意味をかみしめることができます。

絵本ではありますが、大人でも充分に堪能できる内容です。親子で読んでも楽しめます。

経済学者で起業家の成田悠輔(なりた ゆうすけ)さんが、翻訳をされているのも注目です。

 

次はこちら。

 

 

休養学』 片野 秀樹/著 東洋経済新報社 2024.3

 

仕事、家事、育児、介護等、私たちは日々忙しく働いています。

疲れていてもやることがたくさんあって休めない。

休んでも疲れがうまくとれない。

そんな人もいるのではないでしょうか?

そんな方に読んでいただきたいのが、この本です。

休み方を20年間考え続けた著者が、「疲れとは何か」、「疲れているのに休まずにいるとどうなるのか」、「どんな休み方をすればよいのか」を解説してくれます。

だらだらと寝ているだけでは、疲れはとれません。

疲れのメカニズムと対処法を正しく理解することで、上手に疲労を回復し、自分に休養を与え、生活の質まで向上することができます。その秘訣がこの本には詰まっています。

身体だけでなく、考え方も前向きになる休養の方法で、毎日を生き生き過ごしてみませんか?

 

最後の1冊はこちらです。

 

 

だれかに、話を聞いてもらったほうがいいんじゃない?』 ロリ・ゴットリーブ/著,栗木 さつき/訳 海と月社 2023.4

 

この作品は著者自らの経験を書き記したものです。彼女は、現役のセラピストであり、作家の仕事もこなすシングルマザー。

そのセラピストがセラピーに通うという、なんとも不思議な内容です。

彼女のところには、さまざまな人が患者としてやってきます。

暴言をはきまくるハリウッドのプロデューサー、結婚直後に癌で余命を宣告された女性、離婚歴のあるうつ病の女性等々。

彼女はセラピストとして、これらの患者に真正面から向き合い、信頼関係を築くために懸命に寄り添い、的確なアドバイスを繰り出します。

忙しいながらも充実した日々を送っていました。

ところが、つきあっていた彼氏が突然別れを宣告し、彼女のもとを去ってしまいます。

さあ大変。

友人に勧められ、セラピーを受けることになるのですが、いざ自分が患者の立場になると、ひたすら元カレを非難し続け、泣きわめき続ける…。

セラピストとしての、冷静で努力家の著者の姿はどこにいったの? と思うくらいの取り乱しようです。

彼女を担当した男性セラピストは、今までのセラピストの手法とはかなり違うやり方をする、変わった人物でした。そんな彼は、著者の真の悩みをズバリと言い当て、彼女をドキリとさせます。彼女は、反発しながらもセラピーに通うことになるのですが…。

セラピストとして患者と向き合い、一方で患者としてセラピストと対峙する彼女。一体どうなるのか、目が離せない展開に引き込まれます。

やがて、著者自身と彼女の患者たちが、それぞれ自分の悩みと向き合い乗り越えていく場面では、セラピストと患者の強い絆を感じることができ、感動で涙がとまりませんでした。

人は、深い悲しみや悩みを抱えていても、自分自身で再生することができる、そんな自信をつけさせてくれる本です。

 

 

今回は、3冊の本をご紹介しました。

疲れた時、不安になる時、あなたに寄り添い、あなたの心を癒してくれる本がきっとあると思います。

図書館でじっくりゆっくり本を読んでいただければ幸いです。

 

<紹介資料>

・『挫折しそうなときは、左折しよう』 マーク・コラジョバンニ/文,ピーター・レイノルズ /絵 成田 悠輔/訳  光村教育図書 2023.5

・『休養学』 片野 秀樹/著 東洋経済新報社 2024.3

・『だれかに、話を聞いてもらったほうがいいんじゃない?』 ロリ・ゴットリーブ/著,栗木 さつき/訳 海と月社 2023.4

<しちり>

 

 

ゆっくり、じっくり、あじわう秋

2024年9月9日(月)|投稿者:kclスタッフ

こんにちは、しちりです。

9月だというのに、まだまだ暑い日が続きますね。

夏休みも終わり、仕事に学校に忙しい毎日が戻ってきたかと思います。

最近は「タイパ(タイムパーフォンス)」に代表されるように、すべての物事を効率よく短時間でできることが、求められがち。

もちろん大切なことではありますが、タイパを求めるあまり、ふと窮屈さを感じてしまうのは、私だけでしょうか?

そこで今回は、少し立ち止まってゆっくりとした時間の中で、じっくりと味わうことのできる本をご紹介します。

 

 

 

こちらは、日々起こる自然の営みを、ゆっくりと味わうことのできる本です。

鳥、虫、動物の営みや自然の風景50項目を、各項目見開き2ページで説明しているのですが、物語のように流れる文章と、細部まで書き込まれた美しい絵に、たちまち心がひきこまれます。

ひとつひとつの出来事がきちんと理解できるとともに、じんわりと感動を覚える不思議さ。

毎日懸命に生きている生き物と、それを包み込む自然の美しさを感じて、心がほっとしてリラックスすることができます。

児童書ですが、大人でも十分に楽しめます。むしろ大人が読むと、子どもの頃の心象風景と重なり、懐かしく感じるかもしれません。

 

 

 

続編は、物語のような文章と、美しいイラストはそのままに、恐竜の化石ができる様子やブラックホールのことなど、時間も空間もスケールアップし、好奇心を大いにそそられます。

砂漠や氷山など、行ったことのない場所の話が出てきたかと思えば、ミミズや暗闇で光るネコの目の話などの身近な話があったりと、自然のさまざまな場面を感じることができるところが魅力です。

読みながら、「そうだったのか!」という気付きや、さらに詳しく調べてみたくなる内容も多く含まれています。

どちらの本も、2ページ完結なので、読みたいところだけを読んで楽しむこともできますが、あまりの魅力にページをめくる手が止まらないかもしれません。

 

 

 

旧暦を使用していた時代に日本人は、自然を敏感に感じ取り、季節ごとに名前をつけ、いにしえの知恵に学びながら、生活をしていました。

一年を二十四の季節にわけるのが二十四節気、それをさらに細かく分けたものを七十二侯と言うそうです。

この本では、リズミカルな詩の中に七十二候の季節の言葉を取り入れ、自然の移り変わりを楽しく分かりやすく表現しています。

ぜひ音読も楽しんでみて欲しい一冊です。

ひとつひとつは、ややわかりにくい言い回しもありますが、音読してみると、七十二候が詩のリズムの中に生き生きと表現されており、めぐる季節の美しさをすんなり味わうことができます。こんな季節の楽しみ方があったのかと思うほどです。

それにしても一年を七十二もの季節に分けると、一つあたりの季節は五日間ほど。昔の人が、たった五日でも季節の移ろいを感じていた、そのきめ細やかさを素晴らしいと感じずにはいられません。

 

 

 

旧暦に関連した本をもう一冊。

こちらの本では、明治の初めまで日本で使われていた旧暦の生活の知恵を、「福を招く」「恵みをいただく」「良縁を願う」など、七つのテーマにわけて紹介しながら、忙しく暮らしている今の私たちに、心のやすらぎ、体のいたわり方、幸せになるヒントを教えてくれています。

中には、春財布、土用の丑、七五三、冬至のゆず湯等など、今の日本人になじみのある習慣も多いのですが、改めて読んでみると、昔の人の、季節を感じながらしなやかに生き延びるための知恵がたくさん詰まっていて、自然とともに生きることの大切さを実感します。

その時々に気になったテーマを読んでも良いですし、最初から最後まで読み通すと、旧暦生活で培われた昔の人の英知に感嘆します。

そして最後の「おわりに」を読んでみてください。きっとその内容に、癒やしと納得を感じることができます。

忙しい毎日に疲れた時、是非読んでいただきたい本です。

 

 

 

最後にご紹介するのは、森林の植物のつながりについての大発見を記した本です。

お恥ずかしながら世界的ベストセラーということを知らなかった私ですが、それだけに衝撃の内容に圧倒されました。

森林の木々が、土中にある何層もの菌根ネットワークの複雑な働きによってつながり、支えあっていること。そして菌根ネットワークを使い、樹齢数百年にわたる大木(マザーツリー)が、驚きの役割をはたしていること。これらを著者は、30年以上にもわたる研究で発見したのでした。

研究の日々は、苦労の連続。途方もない時間と労力のかかる内容に驚くとともに、それでも森を守るために研究に没頭する姿に何度も心打たれました。

また、研究の内容だけでなく、家族との絆や辛い別れ、研究を批判する政府との軋轢、子育てと仕事の両立に悩む姿、新しい愛の形など、研究を取り巻く日常で起きる出来事が、ひとりの女性の視点でつぶさにつづられており、さまざまな立場の方に共感してもらえると感じました。

自然の壮大な支えあうシステムと、それを証明しようとする女性のひたむきさに、深く読めば読むほど、感動が増す本です。

 

皆さんも、毎日忙しく過ごしている中で、一呼吸おいて本を開いてみませんか?

夜が長くなってくる秋、本とともにゆったりとした時間を過ごしていただければ幸いです。

 

<参考資料>

『スロウダウン [1]』レイチェル・ウィリアムズ /文,フレイヤ・ハータス /絵,荻野 哲矢/ 訳  化学同人 2021.9

『スロウダウン 2』カール・ウィルキンソン/文,グレース・ヘルマー/絵, 荻野 哲矢/訳 化学同人 2021.9

『えほん七十二候』白井 明大/作,くぼ あやこ/絵 講談社 2016.3

『福を招く旧暦生活のすすめ』白井 明大/著 サンマーク出版 2017.12

『マザーツリー』スザンヌ・シマード/著,三木 直子/訳 ダイヤモンド社 2023.1

<しちり>

 

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