七月六日はサラダ記念日
2025年7月1日(火)|投稿者:kclスタッフ
「この味が いいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
(『サラダ記念日』より)
こんにちは、志るべです。
暑くなってきましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
俵万知さんの歌集『サラダ記念日』は、一大短歌ブームを巻き起こしました。
出版されたのは昭和62年(1987)。もう38年前になるのですね。
国語の授業で習った、という方もおられるかもしれません。
短歌といえば、なじみがあるのはせいぜい百人一首。文語で書かれた歌は、言葉の響きは美しいけれど意味がよくわからない・・・ そんな印象をガラリと変えてくれたのが『サラダ記念日』でした。日々のできごとが今の言葉で詠まれ、失恋だって明るくさらりと表現されています。
「こんな風に詠んでいいんだ!」と新鮮な驚きを感じたものです。毎日を記念日にして、指折りながら言葉をひねり出したりして。
時は流れ、今また令和の短歌ブームが起きています。若者の短歌人口もかなり増えているのではないでしょうか。SNSの力は大きいですが、雑誌への投稿も人気があります。
最初にご紹介するのはこちら。

『すごい短歌部』(木下 龍也/著 講談社 2024.11)
文芸誌「群像」の連載記事「群像短歌部」を書籍化したものです。
読者から寄せられた短歌を歌人の木下さんが選び、講評を加えています。木下さんも同じテーマで短歌を詠み、自身の作品は完成形だけでなく、最初にできた短歌から完成作品までを順に並べ、変化を分析しています。作品作りの手の内を見せてくれることで、作者が何を感じ、どのように推敲していったのかがわかるようになっています。テーマに合わせて読むにはどうすればいいのか等、短歌初心者へのヒントも示されています。とはいえ、短歌に公式はないのだそうです。
ところで、短歌を詠むには題材が必要です。
短歌や俳句の世界では、題材を求めて「吟行」という名の遠足に出かけます。
次の1冊はこちら。

『短歌遠足帖』(東 直子/著,穂村 弘/著,岡井 隆/[ほか述] ふらんす堂 2021.2 )
歌人のお二人、東直子さんと穂村弘さんがゲストとともに短歌遠足に出かけます。どこかに出かけ、何かを見て、会話をして、短歌を詠んで、感想を伝えあう、そんな様子がつづられています。
歌人の岡井隆さんと行く動物園への遠足に始まり、小説家の朝吹真理子さんと鎌倉へ、脚本家の藤田貴大さんと東京タワーへ、漫画家の萩尾望都さんと上野公園へ、そして最後は芸人の川島明さんと行く大井競馬場で締めくくられています。
仲間とどこかに出かけて短歌を詠む「短歌遠足」、なんだか楽しそうですね。
ただし、その場で詠んで発表するというのは、かなりのプレッシャーではありますが。
歌人の穂村さんといえば、前回のブログで「たがね」が紹介したあんこのエッセイ「あんパン」(『ずっしり、あんこ』に収録)を書かれた方です。穂村さんは絵本もたくさん翻訳しています。どうしても絵本のつづきを読んでほしいオオカミのお話『このほんよんでくれ!』は言葉と絵がぴったりで、翻訳であることを忘れてしまいます。穂村さん人気です。
最後にご紹介するのは短歌を題材とした小説です。

『うたうとは小さないのちひろいあげ』(村上 しいこ/著 講談社 2015.5)
高校生の桃子は、親友の綾美が不登校になった原因は自分にあるという思いを抱えながら学校生活を送っていました。そんな桃子があるきっかけで「うた部」に入部することになり、うた部での人や短歌との出会いによって桃子も、そして綾美も変わっていきます。
著者の村上しいこさんは三重県の方で、子どもたちに向けて数々の作品を発表されています。
村上さんは、平成13年(2001)に毎日新聞《小さな童話大賞》で「俵万智賞」を受賞し、それかきっかけで童話作家としてデビューされました。それから14年がたち、『うたうとは小さないのちひろいあげ』が出版されました。短歌とのご縁を感じますね。
あとがきには、「あの時、賞に選んでくれた俵万智先生に少しは恩返しができるような作品になったかな」と書いておられます。
ちなみにこのお話の中で短歌遠足はピクニック短歌、「ピク短」という言葉で表現されています。
みなさまも「短歌遠足」もしくは「ピク短」に出かけて、一首いかがでしょうか。
<紹介・参考資料>
『サラダ記念日』(俵 万智/著 河出書房新社 1987.5)
『すごい短歌部』(木下 龍也/著 講談社 2024.11)
『短歌遠足帖』(東 直子/著,穂村 弘/著,岡井 隆/[ほか述] ふらんす堂 2021.2 )
『うたうとは小さないのちひろいあげ』(村上 しいこ/著 講談社 2015.5)
『ずっしり、あんこ』(青木 玉/[ほか]著 河出書房新社 2015.10)
『このほんよんでくれ!』(ベネディクト・カルボネリ/文,ミカエル・ドゥリュリュー/絵,ほむら ひろし/訳 クレヨンハウス 2019.7)
<志るべ>
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