和菓子をたのしもう!

2025年6月12日(木)|投稿者:kclスタッフ

はじめまして、たがねと申します。

新しくブログを担当させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。

 

さて、私の名前「たがね」は桑名名物のたがねせんべいからいただきました。歯ごたえのある食感とたまり醤油の味がクセになる美味しさですよね。

せんべいといえば和菓子の仲間ですが、みなさんは6月に「和菓子の日」という記念日があるのをご存じですか?

 

6月16日の和菓子の日は、全国和菓子協会によって昭和54年(1979)に制定されました。これは、厄除けを願ってこの日に和菓子を食べる「嘉祥菓子(かじょうがし)」の習わしを由来としています。この風習が始まったのは平安時代。疫病が蔓延した日本で年号を「嘉祥」と改め、その年の6月16日に、16個の和菓子を神前に供えて疫病除けを祈ったとされています。江戸時代には「嘉祥の日」として親しまれ、江戸城では2万個もの和菓子が大名や旗本にふるまわれたそうです。

(『季節を愉しむ366日』 三浦 康子/監修 朝日新聞出版 2022.3 より)

 

ということで、今回は和菓子に関する本をいくつかご紹介したいと思います。

 

 

和菓子といえば、味だけでなく季節感あふれる美しい見た目も楽しみのひとつですよね。

最初にご紹介するのは、目で楽しむ和菓子の世界をじっくり味わえる、こちらの本です。

 

江戸時代の和菓子デザイン』( 中山 圭子/著  ポプラ社 2011.4)

 

この本は、徳川家御用達の菓子屋が残した菓子絵図帳をもとに、植物や動物、自然などのモチーフ別に再構成されたカラーデザイン集です。

 

江戸時代、花鳥風月をかたどった上品な和菓子は裕福な上流階級だけが味わえる高級品でした。そうした「上菓子(じょうがし)」を注文する際に使われたのが、菓子絵図帳です。

本書では、当時の職人たちが工夫を凝らした意匠や、季節感あふれる華やかなデザインが多数紹介されています。植物や風景だけでなく、動物や文様、名所までもが菓子の意匠に取り入れられており、和菓子の表現の幅広さに改めて驚かされます。

和菓子が単なる「食べもの」ではなく、芸術品として人々の心を豊かにしていたことが、ページをめくるたびに伝わってくる1冊です。

 

 

和菓子のデザインの奥深さを感じたところで、次にご紹介するのは、素朴だけど実は奥が深い「ようかん」を掘り下げるこちらの本です。

 

ようかん』(虎屋文庫/著 新潮社 2019.10)

 

「ようかん」と聞くと、どこか地味なお菓子という印象を持つ方もいるかもしれません。甘くて固くて、昔ながらのおやつ、そんなイメージがこの本を読むと大きく変わります。ようかんで有名な株式会社虎屋の資料室である虎屋文庫が監修した本書は、ようかんの起源から現代に至るまでの歴史を丁寧に紐解き、四季折々の美しいようかんのデザインや、全国各地の名物ようかんを紹介しています。

 

特に印象的だったのは、ようかんにも季節の風物や自然を色とりどりに表現する文化があること。色や形、素材の組み合わせによって、桜の花や流水、月の光などを描き出すようかんは、まさに「食べられる芸術品」です。さまざまなデザインのようかんや、その意匠を記した菓子見本帳がカラーで豊富に収録されています。

さらに、ようかんの名前の由来や製法の変遷といった、知的好奇心をくすぐる内容も盛りだくさん。和菓子好きはもちろん日本の文化や美意識に関心のある方にもぜひ手に取っていただきたい1冊です。

 

 

さて、和菓子で大活躍するものといえばあんこ! さまざまな和菓子に使われていて、粒あん、こしあんをはじめ種類も豊富です。

次に紹介するのはそんな「あんこ」に注目した1冊です。

 

究極のあんこを炊く』 (芝崎 本実/実験・検証・菓子作製・文 女子栄養大学出版部 2024.11)

 

あんこを炊くときに「びっくり水」や「渋きり」は本当に必要なのか。そんな疑問に科学の視点から向き合ったのが本書、『究極のあんこを炊く』です。

 

和菓子職人としての経験を持ちながら、調理科学の研究者でもある著者が、伝統技術を丁寧に検証し、「究極のあんこ」を理論と実験で導き出していきます。

基本の粒あん、こしあんに加えて、白あん、うぐいすあん、さらにはくるみあんやミルクあんとアレンジレシピも充実。

見た目にもわかりやすいプロセス写真が豊富に載っていて、初心者から上級者まで楽しめる内容になっています。

和菓子作りをより深く理解したい方にぴったりの、実践と知識が詰まった1冊です。

 

 

最後にご紹介するのは、あんこへの愛がたっぷり詰まったこちら。

 

ずっしり、あんこ』  (青木 玉/[ほか]著 河出書房新社 2015.10)

 

こちらは、芥川龍之介、手塚治虫、糸井重里や上野千鶴子といった多彩な作家や文化人による、「あんこ」にまつわるエッセイを収めたアンソロジーです。

おはぎ、ようかん、たい焼きなど、さまざまな和菓子の思い出や、日常の中での甘味とのかかわりが、それぞれの筆致で綴られています。

 

なかでも私の印象に残ったのは、歌人である穂村弘さんの「あんパン」。駅の売店であんパンを買った何気ない場面から始まりますが、エッセイらしからぬ奇想天外な展開に引き込まれ、夢中で読み進めてしまいました。

同じ「あんこ」というテーマでも、書き手によって語り方はさまざま。まるで、どのお菓子になるかで表情を変えるあんこのようです。気になる作家のエッセイから、ちょっとつまんで読んでみるのもおすすめです。

 

 

今回ご紹介した本以外にも、図書館にはたくさん和菓子に関連した本があります。ぜひ探して読んでみてください。

 

和菓子の本をたくさん読んだので、無性に食べたくなってきました。今年の嘉祥の日には、和菓子を食べて健康を祈願してみたいと思います。みなさんもぜひ嘉祥の日を楽しんでみてください!

 

<参考資料>

季節を愉しむ366日』(三浦 康子/監修 朝日新聞出版 2022.3)

江戸時代の和菓子デザイン』(中山 圭子/著 ポプラ社 2011.4)

ようかん』(虎屋文庫/著 新潮社 2019.10)

究極のあんこを炊く』(芝崎 本実/実験・検証・菓子作製・文 女子栄養大学出版部 2024.11)

ずっしり、あんこ』(青木 玉/[ほか]著 河出書房新社 2015.10)

 

<たがね>

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