あけましておめでとうございます 2025
2025年1月5日(日)|投稿者:kclスタッフ
あけましておめでとうございます。しちりです。
今年も桑名市立中央図書館とスタッフブログ「ブックとラック」をよろしくお願いします。
桑名市立中央図書館は、1月4日から開館しております。
皆さま、お正月はいかがお過ごしでしょうか?
今年は巳年ですね。
巳(み)という字は、「長くて曲がり、尾をたらしたヘビの形」(『例解新漢和辞典』p335)を表す象形文字からきており、十二支の中で六番目の動物に蛇を割り当てて、蛇年=巳年としたのだそうです。
そこで今年は、干支の「ヘビ」が出てくる絵本や児童書をご紹介し、新年を感じてみたいと思います。
こちらは、「十二支むかしむかしシリーズ」のひとつです。
子どもに恵まれなかった老夫婦が、池のほとりでヘビのたまごを見つけるところからお話は始まります。
老夫婦はヘビの子を「おふじ」と名付けて、大切に育てていました。ところが、ぐんぐん育つおふじはいつしか村人から怖がられ、山に捨てられることになってしまいます。
大切に育てていたおふじと、泣きながらお別れをするおじいさんとおばあさん。おふじと老夫婦にはどんな展開が待ち受けているのでしょうか?
この後一体どうなるのだろう? ハッピーエンドであってほしい! とハラハラドキドキが存分に味わえる本です。
おふじがおもちを大好きなのも、お正月にぴったりですね。
こちらも昔話ですが、落語になっているので、知っている方もいらっしゃるかもしれません。
芝居役者のたのきゅうは、おかあさんが病気という知らせをふるさとの村から受け、急いで村へ向かいます。
その道中、山の中で大きなヘビに遭遇します。大きなヘビは旅人を襲うという「うわばみ」でした。
たのきゅうは、なんとか生き延びようと、芝居で培った得意の早変わりで侍や娘の姿に変装し、うわばみを楽しませます。
自分を怖がらずに何にでも変装するたのきゅうに感心したうわばみは、たのきゅうに怖いものを尋ね、自身も自分の怖いものを打ち明けます。
こうして、たのきゅうは無事お母さんのいる村へ帰ることができたのですが…。
機転が利くたのきゅうの賢さが際立つ点と、軽快なリズムで展開される内容が、この昔話が長く読み継がれている要因ではないかと思います。
巳年のお正月にぜひ読んでおきたい一冊です。
『たのきゅう』では、おおきなヘビのことをうわばみと書いてありました。うわばみとはもともと、「古代語ヲロチに代わって十五世紀ごろから現れた語」(『暮らしのことば新語源辞典』p134)だそうです。
オロチと言えば、古事記に出てくる八岐(やまた)の大蛇(オロチ)を思い出します。
ある日イザナギの子、スサノオは、泣いている老夫婦に出会います。八岐の大蛇が老夫婦の娘を毎年ひとりずつ食べ、とうとう今年は最後の娘が食べられてしまうと、泣いていたのです。そこでスサノオはその娘を妻にするかわりに、八岐の大蛇を退治することを約束します。
古事記の本はいろいろありますが、こちらの古事記はとにかく読みやすいし面白い!
日本を代表する児童文学者の斉藤洋さんが楽しい語り口で書いています。
お子さんだけでなく、古典が少し苦手だなという大人の方が読んでも楽しめます。
スサノオが八岐の大蛇を退治する場面の迫力を、この本で味わってみてください。
こちらは、三重県出身の絵本作家、tsupera tsuperaさんの絵本です。
へびが何かを飲み込み、次のページで何を飲み込んだのかを答え合わせする、という形で話が進みます。「えええっ?こんなものまで?!」 とヘビが飲み込んだものにびっくりすること間違いなし!です。
作者の発想の豊かさに感服。
答え合わせのページの背景が真っ黒なので、背景とのコントラストで飲み込んだものがくっきり浮かびあがり、驚きが増します。
読んでいて飽きない仕掛けになっています。
どんなものを飲み込んだのか、是非読んで確かめていただきたいです。
ヘビがレストランを始める? いったいどうやって料理するの? と、設定からツッコミ満載の絵本です。もうこれは、面白いとぞいう匂いがプンプンしますね。
ヘビのレストランにやって来たぶたくん。
自分で作らないといけないけれど、ヘビのいう通りに作れば、「とびきりおいしい料理」が食べれると聞かされて、キッチンにやってきます。
材料を前に、歌を歌いながら踊ったり、変なおまじないを言わされたり、うまくできないと怒られて何度でもやり直しさせられます。
さすがのぶたくんも怒って帰ろうとするのですが…。
はたして「とびきりおいしい料理」は食べられるでしょうか?
そして、ヘビのレストランの評判はどうなるでしょうか?
絵本ならではの楽しい展開なので、読むと笑ってしまうかもしれません。初笑いにピッタリです。
ところで外国では、蛇は表面が傷ついても脱皮をすると元通りの姿にもどるため、再生と治癒のシンボルとしての意味があるようです。
世界保健機関(WHO)のマークには、ヘビが巻きついた杖の絵が描かれているのをご存じでしょうか?
これは、「アスクレピオスの杖」といい、ギリシャ神話に登場する医学の神アスクレピオスがこの杖を持っていたことから、WHOのシンボルマールに取り入れられました。
最後にアスクレピオスと再生のお話を紹介します。
こちらの本の、ヘビつかい座・ヘビ座のお話にアスクレピオスは登場します。
アスクレピオスは、ケンタウルス族の賢者ケイローンから医術を学び、多くの人を助けていました。治療にはヘビが使われていましたが、ある時アスクレピオスは、助けたい一心から死者を生き返らせてしまいます。
死者が生き返ると地上に人があふれて秩序が保てなくなるため、大神のゼウスはアスクレピオスを殺してしまいます。しかし、多くの人の命を救ったアスクレピオスの功績をたたえて、天にあげて星座にしました。
この本には、他にも四季折々の星座のお話が載っていますので、この機会にじっくり読んでみるのもおすすめです。冬の澄んだ夜空を見上げるのが楽しくなるかもしれません。
以上、ヘビの出てくる絵本や児童書をご紹介しました。
今年もたくさんの本を手にとっていただけるよう、さまざまな本の紹介をしていきたいと思っております。
本年もよろしくお願いいたします。
<紹介資料>
・『おもちのすきなヘビのおふじ』(谷 真介/文,赤坂 三好/絵 佼成出版社 2006.12)
・『たのきゅう』(小沢 正/文,太田 大八/画 東京 教育画劇 1996.4)
・『古事記 -日本のはじまりー』(斉藤 洋/文,高畠 純/絵 講談社 2018.7)
・『へび のみこんだ なに のみこんだ』(tupera tupera/さくえほんの杜 2011.12)
・『ヘビのレストラン』(深見 春夫/作 PHP研究所 2017.11)
・『星座と神話 大じてん』(永田 美絵/著 成美堂出版 2022.6)
<引用および参考資料>
・『干支の漢字学』(水上 静夫/著 大修館書店 1998.12)
・『例解新漢和辞典』(山田 俊雄/編著,戸川 芳郎/編著,影山 輝國/編著 第5版三省堂 2021.2)
・『暮らしのことば新語源辞典』(山口 佳紀/編 講談社 2008.11)
・『たのきゅう』(川端 誠/作 クレヨンハウス 2003.6)
・『読み出したら止まらない古事記』(島崎 晋/著,中村 隆/イラスト PHP研究所 2012.1)
・『調べてみよう!国際機関の仕事~SDGs時代へ 3』(吉村 祥子/監修 汐文社 2022.3)
・『星座と星座神話』(沼澤 茂美/著,脇屋 奈々代/著 誠文堂新光社 2006.3)
<しちり>
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