夏と祭り

2025年8月4日(月)|投稿者:kclスタッフ

こんにちは、なばなです。

今年も桑名で石取祭が開催されました。

石取祭は、桑名の町屋川で石を採り、氏神に納める石取という民間行事が祭礼化したものです。

太鼓と鉦で囃しながら、祭車を曳いて回る石取祭。

その騒々しさから、「日本一やかましい祭り」と言われています。

打ち鳴らされる音はかなりのものですが、聞いていると、不思議と真夏に負けないパワーを貰える気がします。

 

祭りで元気になるという感覚は、昔からあったようです。

 

祭りや正月などの特別な行事を意味する「ハレ」という概念があります。

反対に、日常を維持する活力を「ケ」と言います。

「ケ」は、時に心身の不調により欠如します。

この「ケ」が欠如することを「ケガレ(気枯れ)」と言います。

そこで、人々は「ハレ」である祭りによって「ケガレ」を祓い、活力を回復させました。

祭りは、日常で失った気力を回復させる場でもあったのです。

『正月とハレの日の民俗学』宮田 登/著 大和書房 1997.4 より)

 

暑さによる不調が増える夏は、「ケガレ」の状態になりやすい時期だと言えます。

そこで今回は、猛暑で溜まった「ケガレ」を少しでも祓えるよう、「祭り」をテーマにした本を紹介したいと思います。

 

 

まずご紹介するのはこちらです。

 

『江戸に花咲く 時代小説アンソロジー』(宮部 みゆき/著,諸田 玲子/著,西條 奈加/著,高瀬 乃一/著,三本 雅彦/著 文藝春秋 2024.1)

 

こちらは5人の作家による、江戸の祭りをテーマにした短編集。

ミステリーから人情噺まで、祭りのさまざまな側面を描いた物語は、読むほどに引き込まれていきます。

中でもおすすめなのは、宮部みゆきの「氏子冥利」

三島屋の小旦那は、ある日、神田明神で石段から落ちかけた老人を助けます。

老人は何やら事情を抱えている様子。

小旦那が尋ねると、老人は、自分の身に起きた数奇な出来事を語り始めます。

話が進むうちに、ホラーのような緊迫感が高まっていきます。

どんな結末が待っているのか、ぜひ読んで確かめてください。

 

 

続いては、日本の祭りにくわしくなる1冊をご紹介します。

 

『日本の祭り解剖図鑑 四季折々の行事からみる日本文化の魅力』(久保田 裕道/著 エクスナレッジ 2023.8)

 

有名な祭りから地方のマイナーなものまで、日本全国の祭りを紹介しています。

シンプルな図に解説がついた、とてもわかりやすい図鑑です。

祭りの歴史についても書かれていて、日本文化への理解も深まります。

理解が深まると、面白さも倍増するもの。

今まで意識しなかった祭りの場面を、新たな視点で楽しめるようになります。

もっと知りたい、あの名場面が見たい、行ってみたい。

読むほどに、そんな気持ちが湧いてきます。

日本の祭りが、より好きになる1冊です。

 

 

日本だけでなく、世界の祭りを知りたい方には、こちらがおすすめです。

 

『世界の祭りと衣装 The festivals and costumes in the world』(パイインターナショナル/編著 パイインターナショナル 2019.9)

 

タイトル通り、世界の祭りとその衣装の写真を集めた本です。

美しい伝統衣装に奇怪な仮装、カラフルなパレードとはじける笑顔。

一枚一枚が鮮やかで、眺めていると世界中の祭りを見に行きたくなります。

コラムでは、西洋の祭りの解説や各国の仮面の紹介があり、好奇心が刺激されます。

世界の祭りの魅力を存分に伝えてくれる素敵な写真集です。

 

 

最後に紹介するのはこちらの本です。

 

『星祭りの町』(津村 節子/著 新潮社 1996.2)

 

舞台は、第二次世界大戦が終わったばかりの日本。

七夕祭りで有名な町に疎開してきた三姉妹と祖母の暮らしを描いた物語です。

著者の自伝的小説でもあります。

進駐軍の基地となり変貌していく町、先の見えない社会情勢。

淡々と描かれる情景はリアルで、胸に迫ります。

厳しい現実に翻弄されながらも、三姉妹は生きる道を模索し、少しずつ自立していきます。

戦争で中断していた七夕祭りが昔の賑わいを取り戻していく様子は、三姉妹が前に進んでいく姿と重なります。

この夏、ぜひ読んでいただきたい本です。

 

ちなみに、話に登場する七夕祭りは、「狭山市入間川七夕まつり」として現在も開催されています。

今年は終わっていますが、機会があれば行ってみたいですね。

 

暑い夏はまだまだ続きそうです。

実際の祭りはもちろん、本の中の祭りも楽しんで、今年の夏を乗り切りましょう。

 

<紹介・参考資料>

『正月とハレの日の民俗学』(宮田 登/著 大和書房 1997.4)

『江戸に花咲く 時代小説アンソロジー』(宮部 みゆき/著,諸田 玲子/著,西條 奈加/著,高瀬 乃一/著,三本 雅彦/著 文藝春秋 2024.1)

『日本の祭り解剖図鑑 四季折々の行事からみる日本文化の魅力』(久保田 裕道/著 エクスナレッジ 2023.8)

『世界の祭りと衣装 The festivals and costumes in the world』(パイインターナショナル/編著 パイインターナショナル 2019.9)

『星祭りの町』(津村 節子/著 新潮社 1996.2)

<なばな>

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