今年も桜が咲きました
2026年3月28日(土)|投稿者:kclスタッフ
こんにちは、志るべです。
今年も桜の季節がやってまいりました。
この季節になると、ああ、今年も桜が咲いた、桜に会えた、そんな気持ちになります。
やっぱり日本人にとって、桜は特別な花なのでしょうか。
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わたし さくらです
せはひくいけど
これでも
りっぱなさくらです(『さくららら』より)

『さくららら』(升井 純子/文,小寺 卓矢/写真 アリス館 2021.3)
この本の主人公は「日本一遅く咲く桜」の“さくらちゃん”
北海道北部の小さな町、幌加内(ほろかない)のチシマザクラ(千島桜)です。
桜と聞いて思い浮かべる、幹が太くて背の高い姿とは少し異なります。
幹が立ち上がらず、根元から分かれて枝を伸ばします。
4月、一面雪景色の中に小さなつぼみがのぞいています。
5月の風が雪をとかします。
つぼみはちょっとかたいけど、もうすぐ、もうすぐ。
“さくらちゃん”が咲くのをみんな待っています。
この作品は“さくらちゃん” の写真に、“さくらちゃん”自身の言葉が添えられています。
“さくらちゃん”は言います。
わたしがさく日は わたしがきめる
文章を記した升井純子さんは、2014年5月28日、「ようやく桜が開花した」という記事を、新聞の片隅で見つけました。そして、「ようやく」というのはどういう意味なのだろうかと考えます。
桜が咲くことになんの決まりがあるというのでしょう。一本一本、咲きたい時が咲き時でしょうに。
そう考えた升井さんの想いが、“さくらちゃん”の言葉になりました。
写真を撮った小寺卓矢さんは、主人公にふさわしい理想の“さくらちゃん”になかなか出会えませんでした。でもある時、気づきます。
ぼくら人間の理想どおりに生きる桜なんて、一番この本の“さくらちゃん”らしくないと。
そこで、あちこち捜し歩くのをやめて、着想の原点となった新聞記事の桜をたずね、“さくらちゃん”を撮影しました。
こうして生まれた『さくららら』
青空に向かって咲く“さくらちゃん”の姿、ぜひご覧ください。
“さくらちゃん”だけでなく、日本中の桜がそれぞれ自分で咲く日を決めています。

『にっぽん桜めぐり』(深澤 武/写真・文 青菁社 2024.1)
表紙の写真は、旧小川町立小川小学校下里分校(埼玉県小川町)の桜です。
なんて美しいのでしょう。
2011年に廃校となった木造校舎を背景に咲く桜が表紙を飾っています。
この本は植物の本の棚に並んでいますが、写真集としても楽しめる美しさです。
風景の一部としての桜が、品種や歴史、豆知識を織り交ぜながら紹介されています。
日本国内に自生する野生の桜は10種(沖縄のカンヒザクラを自生種とするなら11種)ありますが、野生種を交配して生まれた栽培品種は数百種になるといいます。
チシマザクラは野生種のタカネザクラの変種、と書かれています。
さて次は、桜にまつわる不思議なお話です。

『桜待つ、あの本屋で』(浅倉 卓弥/著 ハーパーコリンズ・ジャパン 2025.5)
舞台は、世界のどこともわからぬ場所にある本屋。店の前には一本の大きな枝垂れ桜があります。
その花は白から薄紅、そして緋色へと、地面に近づくにつれ赤味を増し、一つの樹に桜色のグラデーションが描かれます。
店の名は「咲良」、迎えるのは一人の少女と一匹の三毛猫。
ただしこの本屋へ来ることができるのは、少女と同じ本の同じ個所を、同じ季節の同じ日の、同じ時刻に読んだ人だけ。しかも、よく晴れた春の日の、満開の桜の樹の下で、という条件付きでした。
後悔や悲しみ、過去への想い、心に何かしらを抱えた人が、本をきっかけに「咲良」へと導かれていきます。
少女が住む世界は、どんな時代のどんな場所ともつながることができる世界。
そして、少女の世界とこちらの世界をつなぐ鍵となるものは、“本”。
本とはまさに未知への扉だ。足を踏み入れた者を温かく迎え入れ、どんな場所にも、どんな時間にもいざなってくれる。
そう少女は思います。
この作品で「鍵」となった本は、『星の王子さま』(サン=テグジュペリ)、『夢十夜』(夏目漱石)、『ピーター・パンとウェンディ』(ジェームズ・M・バリー)、『春と修羅』(宮沢賢治)です。
改めて読んでみてはいかがでしょう。
最後の桜は、絵本でどうぞ。

『さくらの谷』(富安 陽子/文,松成 真理子/絵 偕成社 2020.2)
まだ風の冷たい3月、枯れ木におおわれた山々を歩いていた「わたし」は、そこだけが満開のさくらに埋め尽くされた谷をみつけます。谷底のさくらの木のまわりでは、色とりどりの鬼たちがお花見の宴会をしていました。赤鬼に手招きされ、「わたし」も輪にまざります。そのうちかくれんぼが始まるのですが、そこにはなつかしい人たちの姿が・・・あっちの木のうらから、こっちの木のかげから。
それはもう会えなくなってしまった人たちでした。
どこかにこんな「さくらの谷」があるかもしれない、そう思わせてくれる作品です。
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美しく咲いてさっと散ってしまう桜には、人々を何か不思議な世界にいざなう力があるのでしょうか。
今年の桜前線はどのあたりまで進んでいるのでしょう。
日本中に有名な桜はたくさんありますが、立派でなくても、地元の“さくらちゃん”をみつけて楽しみたいものですね。
<紹介資料>
『さくららら』(升井 純子/文, 小寺 卓矢/写真 アリス館 2021.3)
『にっぽん桜めぐり』(深澤 武/写真・文 青菁社 2024.1)
『桜待つ、あの本屋で』(浅倉 卓弥/著 ハーパーコリンズ・ジャパン 2025.5)
『星の王子さま』(サンテグジュペリ/著,池澤 夏樹/新訳 集英社 2005.8)
『夢十夜 他二篇』 夏目 漱石/作 岩波書店 2007.1)
『ピーター・パンとウェンディ』(J.M.バリー/作,石井 桃子/訳,F.D.ベッドフォード/画 福音館書店 2003.6)
『宮沢賢治コレクション 6 春と修羅』(宮沢 賢治/著 筑摩書房 2017.8)
『さくらの谷』( 富安 陽子/文, 松成 真理子/絵 偕成社 2020.2)
<志るべ>


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