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2022年9月9日のアーカイブ

2022年9月9日(金)AM12:00|投稿者:KCLスタッフ

#kclスタッフおすすめ本 『こんぴら狗』

【 とにかく読んで欲しい 】

『こんぴら狗』
(今井 恭子/作,いぬんこ/画 くもん出版 2017年刊)

 

私は犬を飼っています。とてもやんちゃな性格なので、いつも目が離せません。
どこの家も同じだと思うのですが、犬や猫一匹で旅に出すなんて恐ろしい事、実行できませんよね。
ですが、江戸時代には犬だけで旅をさせることがあったそうです。

 

 

お伊勢参りをする「おかげ犬」は、長旅できない主人の代わりに一匹で伊勢まで旅したと言われています。

『犬の伊勢参り』
(仁科 邦男/著 平凡社 2013年刊)

『犬の伊勢参り』によると、江戸時代後期の大名、松浦静山は、日光東照宮へ参った帰り道で赤毛の参代犬に遭遇したそうです。
その犬は木札を首にかけ、紐には多くの小銭を通していました。
この赤犬と共にいた人が言うには、奥州からお伊勢参りをしているらしい。
共にいた人も犬が誰に木札を付けられたのかは知らず、とりあえずお伊勢参りに行く犬なのであれば日光までは一緒に連れて行ってあげようということで共にいたそうです。

 

そして数日後、松浦静山は早朝に再び赤犬と出会います。
静山が乗った輿の隣を、吠えもせず、また余所の犬に吠えられることもなくついてきました。
そうして過ごすうち、いつの間にか赤犬は消え、どこかに行ったようです。
静山は、犬が人の手を借りずに伊勢神宮へお参りをしていたことを珍しく思い、自らの随筆に書き記しました。

 

こういった資料が他にもいくつか残っていて、私はとても驚きました。
実際旅した犬たちは、どんな様子だったのだろう…。
どんな感じで江戸から伊勢へ、そしてまた江戸へ帰っていたのか…。

 

 

そこで『こんぴら狗』を紹介したいと思います。
この本は、江戸時代、裕福な商人の家で飼われていた犬・ムツキが、主人の代わりにこんぴら参りをするというお話です。
ムツキの飼い主である線香問屋「郁香堂」の跡継である長男が病で帰らぬ人となり、その翌年にはムツキを可愛がっていた娘、弥生も病になったため、ムツキは弥生の快癒を祈願する「こんぴら狗」としてこんぴら参りに向かうことになりました。

 

この本は、『犬の伊勢参り』に書いてあるような事がしっかりとしたストーリーで描かれていて、感情移入しながら読むことができました。
ムツキもたくさんの人たちに助けられ、いくつもの困難を乗り越えてこんぴら参りをやり遂げます。
中でも印象的なエピソードは、ムツキが三重県を通過する時のことです。

 

伊勢湾を船で渡る際、大嵐にあい、同行していたご隠居が風邪をひいてしまいます。
ムツキが心配そうにご隠居の様子を見るシーンがとても胸にぐっときました。
鈴鹿山脈を越えてもご隠居の体調は戻らず、このあたりからムツキにとってつらく悲しい旅路となっていき、ついにはご隠居も帰らぬ人となってしまいます。

 

ひとりになったムツキは、このあとどのようにして金毘羅までたどり着き、江戸へ帰還するのか…
この部分はぜひ読んでいただければと思います。

ひとつ言えることは、犬好きなら感動で号泣すること間違いなしです!興味がある人はぜひお手に取ってみてください。

 

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『こんぴら狗』
『犬の伊勢参り』

 

▼出版社
くもん出版 (こんぴら狗)
平凡社 (犬の伊勢参り)

 

▼書影画像元
版元ドットコム

 

 

 

※次回更新は2022年9月23日(金)の予定です