#kclスタッフおすすめ本 『夜市』
2021年7月23日(金)|投稿者:kclスタッフ
【装丁が好きな本】
『夜市』
(恒川 光太郎/著 KADOKAWA 2005年刊)
夏祭の醍醐味と言えば花火、御神輿、お囃子、屋台…お祭り好きの日本人にとっては、どれも血が騒ぐもの。ちなみに私は花より団子派、花火より屋台を楽しみたい派です。
この屋台ですが、夜店や露店、縁日なんて言葉でも表現されますが、皆さん『夜市』という言葉はご存じでしょうか。
「よいち」や「よるいち」といった読み方をされ、夜に立つ市のことを指します。私が最初に惹かれたのは、まさに背表紙に浮かんだこのタイトルです。
薄暗く落ち着いたカバーデザインを見て手に取りました。あまり聞きなれない言葉ではありますが、文字に表すとより本の世界観が想像しやすいのでは…
本選びは直感と一目惚れがモットー。怪しい雰囲気が少しでも琴線に引っかかった方は、一見の価値ありです!
時刻は真夜中。
何の前触れもなく聴こえた『夜市が開かれる』という声に背中を押されて、二人の男女がとある岬近くの駐車場へ赴きます。足元も不確かな暗闇の中、仄白い光と共に現れたのは不思議な露店の群れや、買い物をする異形の者たち。彼らもまた夜市で買い物をする「お客様」なのですが、この市にはある絶対のルールがありました。
それは、『夜市に入ったら、買い物をするまで出られない』というものです。
しかし売られている品物はどれも目が飛び出すような高額商品ばかりで、中には人を売る店やバッタ物を平気で売りつけてくる商人もいました。そんな中、彼らがこの不可思議で不条理な「夜市」から脱出するために講じた方法とは…
短編だから時間の短い夏の夜にも打って付けです。コロナのおかげでお祭りも屋台も自粛ムードの中、気分だけでも日常から切り離されたいと思っている方へ、夜の外出にワクワクしていたあの頃を思い出しながら読んでもらいたい一冊です。ホラー小説の入口としてもどうぞ。
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『夜市』
▼書影画像元
KADOKAWA
※次回更新は2021年8月6日(金)の予定です
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