#kclスタッフおすすめ本 『無口になったアン夫人』
2022年1月21日(金)|投稿者:kclスタッフ
【 装丁が好きな本 】
『無口になったアン夫人』
(サキ/[著],中西 秀男/訳 国書刊行会 1988年刊)
書庫から出してもらい、はじめて手に取ったとき、異様な装丁に心を奪われました。
この本は、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの編纂した世界幻想文学全集「バベルの図書館」の30巻のうちの一冊です。収録されているのはメルヴィルやポー、カフカといった近代の著名な作家から、『聊斎志異』の蒲松齢、さらには千夜一夜物語まで、まさに世界文学の名にふさわしいシリーズとなっています。
各巻にはボルヘスによる序文が付されており、作家と作品の寸評が書かれています。
さて、本書の著者は短編の名手といわれるサキです。
あらゆるアンソロジーにその作品が収録されており、どこかで読んだことのある話もあるかもしれません。
ブラックユーモアに満ち、退廃的でゴシックな雰囲気のある、しかし軽快な13の掌編がこれでもかと続きます。
装丁は縦長の見慣れない判型に、暗い青色を基調にしたカバー。
表紙のタイトルや著者名は英語、シリーズ名はイタリア語で、出版社名は「Kokusho Kankokai editore」と書かれています。
原書はイタリアのフランコ・マリーア・リッチ社(Franco Maria Ricci)から出版され、日本版はその装丁を踏襲したもの。
うつくしい装丁とともにサキの描き出す世界観に浸ることができ、あらためて読書とは文字を読むだけでは成立しないのだと気づかされました。
「バベルの図書館」シリーズはいずれもうつくしく、また作品によって少しずつ趣が異なります。
残念ながら当館にはこのうち6冊しかありませんが、ぜひ実際に手に取っていただいてそれぞれの風合いをお楽しみください。
参考資料:『ボルヘスの世界』(渋沢 竜彦/ほか著 国書刊行会 2000年刊)
▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『無口になったアン夫人』(バベルの図書館 2)
『人面の大岩』(バベルの図書館 3)
『盗まれた手紙』(バベルの図書館 11)
『悪魔の恋』(バベルの図書館 19)
『輝く金字塔』(バベルの図書館 21)
『パラケルススの薔薇』(バベルの図書館 22)
▼出版社
国書刊行会
※次回更新は2022年02月04日(金)の予定です
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