#kclスタッフおすすめ本 『春にして君を離れ』

2022年2月4日(金)|投稿者:kclスタッフ

【 繰り返し読む本 】

『春にして君を離れ』
(アガサ・クリスティー/著,中村 妙子/訳 早川書房 1981年刊)

 

「ミステリーの女王」として有名なアガサ・クリスティー。
小説を読んだことが無い人でも名前や映画やドラマなどで知っている方も多いと思いますが、今回紹介させていただくこの小説は、ミステリーではなく、殺人も犯人も探偵も登場しません。

 

イギリスの中流階級の家庭の主婦、主人公のジョーンが結婚してバグダッドに暮らす末娘の急病のため、娘のもとへ向かい、鉄道や自動車でロンドンまで戻る途中に悪天候で足止めにあう。
持ってきた本も読みつくし、手紙を書こうにも便せんもなく、少し前に異国の鉄道宿泊所でばったり会って、短く言葉を交わした学生時代の友人の言葉から、ずんずん色々な出来事を振り返り、考えもしなかった事実が浮かび上がって来るという物語で、心理描写が読むものを惹きつける小説です。

 

また、時代背景は戦前で主にイギリスが舞台なのですが、働きすぎによるストレスや、支配する母親と娘の関係、転職して農場を経営したかった夫と妻の関係や不倫、使い込みの公金横領など、現代社会にも起きている出来事が登場します。

 

主人公のジョーンの心の中がほとんどの小説ですが、エピローグは夫の心の中が書かれており、ある意味、推理物の謎ときの答えになっており、怖い結末になっています。

 

1890年生まれのアガサ・クリスティーの小説を、児童文学も多数翻訳されている1923年生まれの中村妙子さんが訳されているので、時代が出ている日本語の文章ですが(例えば職業婦人という言葉など)そういった事を含めて時代を感じていただけたらと思います。

 

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『春にして君を離れ』

 

▼出版社
早川書房

 

※次回更新は2022年2月18日(金)の予定です

コメントを残す

※が付いている欄は必須項目です。
メールアドレスがサイト上で公開されることはありません。




ブログ記事検索

最近の投稿

月別記事一覧

カテゴリー