読んで味わう旅の時間

2025年12月9日(火)|投稿者:kclスタッフ

こんにちは、たがねです。

12月に入り、外に出るのがちょっと億劫になる季節になってきました。遠出をするのは大変だけど、旅気分は味わいたい…そんなときにピッタリなのが旅行エッセイです。ページをめくるだけで知らない風景に出会えたり、誰かの視点を借りてちょっとそこまで気分を味わえたり。エッセイを読んで次に行きたい場所を見つけるのも楽しいですよね。

今回は、気軽に読めて思わずどこかへ出かけたくなるような、旅エッセイをいくつかご紹介します。

 

まずはこちら、

 

『だいたい四国八十八ケ所』(宮田 珠己/著 本の雑誌社 2011.1)

 

 

 

お遍路といえば「厳かな巡礼の旅」というイメージがありますが、旅行エッセイストの宮田珠己さんは「一周してみたい、全部回ってみたい、いっぱい歩きたい」という理由でお遍路の旅に出ます。四国八十八ヶ所をめぐりながら出会う風景の観察や人々へのツッコミが軽快につづられています。旅の途中、自転車でしまなみ海道を渡ったり、カヌーで四万十川を下ったりと寄り道もあり最後まで飽きずに楽しく読めます。足にできたマメとの戦いや、単調な道への愚痴など思わず笑ってしまう場面もたっぷり。お遍路の基礎知識も自然と頭に入るので、旅の案内書としてもエッセイとしても楽しめる1冊です。

 

 

次に紹介するのはこちら、

 

『死ぬまでに行きたい海』(岸本 佐知子/著 スイッチ・パブリッシング 2020.12』

 

著者は翻訳家・岸本佐知子さん。岸本さんが気の向くままに出かけて、見聞きしたことを綴ったエッセイ22編が収録されています。

タイトルには「海」とありますが、海へ行ったことを書いたエッセイではありません。海外の話もありますが、岸本さんが出不精なため基本的には家から近い東京近郊に行った話が多いです。近所の景色も岸本さんが見るとどこか新鮮で、読みながら「そんなところに目を向けるんだ!」とクスっとしてしまいます。旅らしい大きな事件は起きないけれど、小さな発見や思い出話がじんわり楽しい1冊です。文の途中に挿し込まれている写真は岸本さん自身がスマートフォンで撮ったものだそうです。文章の雰囲気にぴったりの味のある写真を見るのも楽しいと思います。

静かな語り口の不思議な余韻が残る文章で、年末のあわただしい時間の合間に読むと、気持ちが落ち着きそうです。

 

 

最後に紹介するのはこちら、

 

『我的日本』(呉 佩珍/編訳,白水 紀子/編訳,山口 守/編訳 白水社 2019.1)

 

日本を旅した時、外国の人はどんなところに心を動かされているんだろう? そんな素朴な疑問にこたえてくれるのが、この1冊です。台湾の作家18人が、それぞれの視点で日本各地を旅して出会った風景や人、ちょっとした驚きや違和感まで、瑞々しい語り口で綴っています。お花見や大阪弁などふだん見慣れた日本の文化も、海外の作家の目を通すとまったく違って見えるのが面白いところ。日本人にとってあたりまえの文化が外からはどう見えるのか、読んでいると新鮮な気持ちになります。いつもの日本を別の国の人が旅する日本として楽しめる旅エッセイ集です。

 

 

旅の本を読むと、いつも見ている風景が少し違って見えるかもしれません。そんな視点の変化も旅エッセイの楽しさのひとつ。

図書館では他にも旅行エッセイを所蔵しているので、気になる1冊を手に取って、旅行気分を味わってみてくださいね。

 

<参考資料>

だいたい四国八十八ケ所』(宮田 珠己/著 本の雑誌社 2011.1)

死ぬまでに行きたい海』(岸本 佐知子/著 スイッチ・パブリッシング 2020.12)

我的日本』(呉 佩珍/編訳,白水 紀子/編訳,山口 守/編訳 白水社 2019.1)

 

<たがね>

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