ブログの記事一覧

#kclスタッフおすすめ本 『ミライの授業』

2022年1月7日(金)|投稿者:kclスタッフ

【 とにかく読んで欲しい本 】

『ミライの授業』
(瀧本 哲史/著 講談社 2016年刊)

 

テレビで著者のニュースをやっていました。社会を変革する若者を育てたいと、エンジェル投資家として活躍し、京都大学でも学生を指導する彼の人柄に惹かれた私。
早速図書館で著者の本を調べ、この本を見つけました。

 

私は、めまぐるしく変わる世の中のスピードについていけず、SNSやアプリの活用、そして携帯の操作自体にも、日々の進化に戸惑うばかり。
そんな私が子どもたちに「勉強しなさい」と言っても説得力はなく、彼らは華麗にスルー。
そりゃそうだ、子どもたちの方がパソコンもアプリもSNSもサクサク使いこなしています。
こんな調子だから、未来を生きる子どもたちに何を伝えていったらいいのか、わからなくなってしまいました。そんな時に出会ったこの本。藁をも掴む思いで読み始めます。

 

この本は、2015年に著者の瀧本哲史さんが、未来を生きる14歳の生徒に向けて行った講義を、ぎゅっと凝縮したものです。
「何をどう考えるのが大事なのか」が、分かり易くしかも鋭く指摘されていて、世の中を変えて未来をつくる若者を育てたいという、著者の熱い思いがビシバシ伝わってきます。

 

この本の中で、瀧本さんは、大人たちをこう記しています。
「大人たちは過去の住人だ」
「古い世代の人たちに世界を変える力はない。世界を変えるのは、いつも「新人だ」(トーマス・クーンという科学者の言葉を引用)」
「いま、みなさんには『大人にはみえないもの』が見えています」
等など。
私にはグサグサ突き刺さるものばかり。でも納得です。だからどうしたらいいかわからず、困っていたのだもの。

 

その上で、若者に学ぶ意味を解説し、未来をつくる5つの法則を伝授していきます。
彼は、本気で未来をつくろうと思うなら、過去を知る必要があると断言し、過去の偉人たちが、どんなふうに育ち、何を考え、何に疑問を抱き、どんな壁を乗り越えて世の中を変えたのかを紹介。

 

そこからみえてくる法則を解説します。
世界を変えたニュートンは万有引力そのものを発見したわけではない?
「戦場の天使」と言われるナイチンゲールが、暴いた戦争の真実とは?

戦後、22歳の女性が日本社会を変えた?等。
全部で19人の偉人たちを引き合いに導き出される法則は、まさに圧巻。「なるほど。そう考えればいいのか!」と私の心にストンと落ちてくるのでした。

 

読み終わった後に思ったことは、「ああっ、私が14歳の時にこの本に出会いたかった!」ということ。
しかし彼は最後に、この本を14歳の人だけでなく、すべての「かつて14歳だった大人たち」におくりたいと書いてくれています。たとえ何歳であろうと未来をあきらめることは許されないし、彼自身が未来を信じているからだそうです。少し救われました。未来をつくる法則を実行できるよう、がんばってみようと思えたのです。

 

そして私はいつにもまして真剣に、「この本には、世の中を変え、未来をつくる方法が書かれているの。きっと勉強をする意味もわかるはず」と子どもたちに手渡しました。
子どもたちは、今度はスルーせず、読んで「面白かった!こんな授業があれば良いのに」と言ってくれました。

 

皆さんも、是非!

 

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『ミライの授業』

 

▼出版社
講談社

 

▼書影画像元
版元ドットコム

 

※次回更新は2022年1月14日(金)の予定です

博物館×中央図書館 令和3年度ML連携企画(第5弾)「花乃舎のやまと絵」を開催します!

2022年1月6日(木)|投稿者:kclスタッフ

ML連携とは、博物館(Museum)と図書館(Library)が連携して、共通のテーマに沿って各館の資料を活用した企画を実施し、それぞれの館の特徴や役割を発信する企画です。

中央図書館では博物館展示テーマの関連書籍展示のほか、博物館職員等によるセミナーやワークショップを行います。昨年度に引き続き、年間を通して実施しています。ぜひご参加ください。

 

1/21追記
好評につき、定員に達したため、申込受付を終了いたしました。
ご関心をお寄せいただき、ありがとうございました。
(※キャンセル待ちはありません)

 

画像を選択すると拡大します(PDFファイル)

 

第5弾は博物館展示「やまと絵のしらべ –帆山花乃舎と復古大和絵– 」の開催に合わせて、関連書籍展示と桑名市博物館職員によるセミナー「花乃舎のやまと絵」を行います。

 

博物館では、幕末から明治にかけて活躍した、桑名出身の画僧・帆山花乃舎の絵画作品を展示します。

帆山唯念(ほやまゆいねん)は、号を花乃舎(はなのや)と言い、三重県・桑名の真宗高田派・䑳崇寺(りんそうじ)の住職を務めながら復古大和絵派の絵師として活躍した画僧です。

(復古大和絵派は、江戸末期に興った画派で、平安・鎌倉の古典的大和絵の様式にさかのぼって研究し,復興を試みる作画活動を行っていました。)

 

博物館展示「やまと絵のしらべ –帆山花乃舎と復古大和絵– 」について、セミナーを聞いて、博物館展示への理解を深めてみませんか?

 

※状況により変更・中止となる場合がございます。予めご了承いただきますようお願いいたします。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

企画名:博物館×中央図書館 令和3年度ML連携企画 セミナー「花乃舎のやまと絵」

講師:桑名市博物館  鈴木 亜季

日時:令和4年2月5日(土) 午後1時30分から午後3時

場所:くわなメディアライヴ 2階 第1会議室

定員:30名(先着順、事前申込制)※定員になり次第締め切ります

申込み方法:直接窓口、または電話で中央図書館へ

申込み開始:1月14日(金)午前9時~  ※受付は午後5時まで

合わせ:桑名市立中央図書館  〒511-0068 桑名市中央町三丁目79  0594-22-0562

カテゴリー:イベント | コメント (0) | 

新年のご挨拶 2022

2022年1月4日(火)|投稿者:kclスタッフ

あけましておめでとうございます
今年も桑名市立中央図書館とスタッフブログ「ブックとラック」を
よろしくお願いいたします

 

 

新しい年を迎え、中央図書館は1月4日より開館しております。
何かとあわただしい年末年始ですが、読書はお楽しみいただけたでしょうか?
昨年は新型コロナウイルス感染症の影響で、休館せざるを得ない時期もありました。
今年はこの事態が終息し、通常通り開館できることを願っております。

 

さて、恒例となりました図書館入口の干支飾り、
今年は「トラ」が一年間みなさまをお迎えいたします。

 

図書館入口でお待ちしています。

 

 

表情、骨格、毛の感じ、いかにもトラですね。
このトラ、マスキングテープだけで表現されています。
テープをちぎって貼り付ける・・・という緻密な作業を重ねて制作されました。

 

トラはアジア大陸に分布する食肉目ネコ科最大の動物です。
とはいえネコと違い、バッタリ道端で出会うということはありません。
それもそのはず、日本に野生のトラは生息していません。
この近くでお目にかかれるのは東山動植物園でしょうか。
東山動植物園にはスマトラトラがいます。
スマトラトラは、

 

現存するトラの亜種の中では最小で、体重は75~150kgである。肩より後方の縞模様は2本ずつの束になる。熱帯雨林に単独で生息し広いなわばりをもつ。毛皮目的の密猟や近年の森林伐採による生息域の減少・分断により、近い将来の絶滅が危惧されており、野生下での生息数はおよそ300~500頭とされている。(東山動植物園HP http://www.higashiyama.city.nagoya.jp/04_zoo/friend/2018/02/post-7.html

 

とあります。
WWF(World Wide Fund for Nature 世界自然保護基金)によると、スマトラトラだけでなく「20世紀初め、世界に10万頭が生息していたとされる野生のトラ。アジアの自然の頂点に立つこの動物は、今では 2154~3159頭(成獣のみ)が生き残るのみと推定」https://www.wwf.or.jp/campaign/speciallp/tiger/)されているそうです。

 

野生のトラを脅かす原因は大きく3つ、「森林破壊」「密猟」「違法取引」
まさに人間がトラを絶滅に追い込んでいるのですね。

 

トラは古来よりアジア文化の中で、強いものの象徴としてお話にもたくさん描かれてきました。
その中から1冊、絵本をご紹介します。

 

『もしも、ぼくがトラになったら』 ディーター・マイヤー/文,フランツィスカ・ブルクハ ルト/絵,那須田 淳/訳 光村教育図書 2013.2

 

主人公のオスカーは、ちいさなネズミのおとこのこ。森はこわいところで、ママからは、「おそとに でては いけません」といわれています。けれどどうしてもがまんできず、外にでてみたオスカー。フクロウにおそわれそうになったところを助けてくれたのはハリネズミのイゾドール。りっぱなハリを持つイゾドールから「ねっこのまほうつかい ブルツルさま」を紹介してもらい、もりでいちばんつよい動物「トラ」に姿を変えたオスカーですが・・・

 

さてつづきはどうなるのでしょう?

 

児童の展示コーナーでは、1月25日まで「「とら」が登場するお話」を集めています。オスカーがどうなったのか、つづきはこちらでご覧ください。

 

ところで、トラを表す漢字には「虎」と「寅」があります。
この二つの漢字、どう違うのでしょう?

 

「虎」と「寅」はどう違う?

 

「寅」という漢字は方位や時刻を表しているようです。
神様が動物たちを呼び集めて早く到着した順に十二支を決めた、という話はご存じの方も多いと思いますが、三番目に到着したのが「虎」で、「陰陽五行方位陣(いんようごぎょうほういじん)」にあてはめると三番目が「寅」にあたるということなのですね。

 

『漢書(かんじょ)』(中国、前漢一代のことを記した歴史書)や『論衡(ろんこう)』(中国、漢代の思想書)の中にも「寅」について書かれた箇所があります。
なにやらむずかしそうな書物ですが、この機会に繙(ひもと)いてみてはいかがでしょう。
国立国会図書館のデジタルコレクションで見ることができます。
こちらをどうぞ。
『前漢書』巻21上 律暦志 第一上 (コマ番号:7)
『論衡』 3巻 物勢篇 (コマ番号:93)

 

 

そして、もうひとつみなさまをお迎えするものが、
今年の四字熟語「大賢虎変(たいけんこへん)」

 

今年の四字熟語です。

 

この言葉の中にもトラがいます。
「虎変」は、虎の毛が美しく立派に生え変わることをいい、見事に変化や改革をすることのたとえとされます。
「大賢虎変」は、すぐれた賢者が、時の流れに合わせて、日々自己変革すること。または、すぐれた統治者の制度改革によって、古い制度が新しくてより良い制度に改められることをいいます。

 

「大賢虎変」とは・・・

 

この言葉は『易経(えききょう)』(革篇)に由来しています。
中国における重要古典、儒教の基本書に「四書五経(ししょごきょう)」があります。
「四書」は、『大学(だいがく)』『論語(ろんご)』『孟子(もうし)』『中庸(ちゅうよう)』の四経典。
「五経」は、『易経』『書経(しょきょう)』『詩経(しきょう)』『礼記(らいき)』『春秋(しゅんじゅう)』の五経書。
『易経』は「五経」の中の一つで、占いの理論と方法を説く書とされています。

 

虎の毛が美しく生え変わるように、よりよい制度に改められ、よりよい社会になってほしいものです。
そして、どうぞ今年は新型コロナウイルスが終息し、穏やかな世の中となりますように。

 

<参考資料>
『トラ学のすすめ アムールトラが教える地球環境の危機』 関 啓子/著 三冬社 2018.6 489.5/セ
『ネコ科大型肉食獣の教科書』  秋山 知伸/著 雷鳥社 2016.10 489.5/ア
『干支の漢字学』 水上 静夫/著 大修館書店 1998.1 148.8/ミ(書庫)
『十二支の民俗誌』 佐藤 健一郎/著,田村 善次郎/著 八坂書房 2000.1 382.1/サ
『四字熟語・成句辞典』 竹田 晃/著 講談社 1990.1 R/813.4/タ
『中国文化史大事典』 大修館書店 2013.5 R/222/チ
『全釈漢文大系 10 易経下』 全釈漢文大系刊行会/編集 集英社 1981 928/ス/10
『もしも、ぼくがトラになったら』 ディーター・マイヤー/文,フランツィスカ・ブルクハルト/絵,那須田 淳/訳 光村教育図書 2013.2 E/ブ

 

国立国会図書館デジタルコレクション
『前漢書 100卷 附考證. [9]』 巻21上 律暦志 第一上
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2600632 (コマ番号:7)
『論衡  30卷. 巻1-3』 3巻 物勢篇
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/753435 (コマ番号:93)

<志るべ>

 

カテゴリー:スタッフブログ, 児童 | コメント (0) | 

#kclスタッフおすすめ本 『あるヘラジカの物語』

2021年12月24日(金)|投稿者:kclスタッフ

【 衝撃を受けた本 】


『あるヘラジカの物語』
(星野 道夫/原案,鈴木 まもる/絵と文 あすなろ書房 2020年刊)

 

星野道夫が遺した一枚の写真から生まれた物語。
自然で暮らす動物たちの壮絶なドラマと命の繋がりが描かれている。

 

星野道夫といえば、教科書にも載っている『森へ』が有名だが、多くの野生生物の姿を写真におさめている。
同じ動物好きとして親交のあった鈴木まもるは、ある夜、星野の遺した二頭のヘラジカの不思議な写真を夢にみて、アラスカへ飛び、この絵本ができあがった。
命をかけて戦うオス同士の激しい戦いのあと、絡まってはずれなくなってしまった角。
引くに引けない戦いが緊張感をもって描かれ、死をもって二頭の戦いは終わる。

 

しかし、その後も命のリレーは繋がっていく。
読み終わったあと、何とも言えない喪失感と生命の残酷さ、それでも命を繋いでゆく自然界の姿に衝撃を受けた。
荒々しい戦いの描写の後、また始まる新しい命の描写。失う「命」と生まれる「命」。
どちらの命も美しいと思える素晴らしい絵本。

 

読んだ後、みなさんはどのように感じますか?

 

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『あるヘラジカの物語』
『森へ』(星野 道夫/文・写真 福音館書店 1996年刊)

 

▼出版社
あすなろ書房

 

▼書影画像元
版元ドットコム

 

※次回更新は2022年1月7日(金)の予定です

#kclスタッフおすすめ本 『日本史を学ぶための図書館活用術』

2021年12月17日(金)|投稿者:kclスタッフ

【 とにかく読んで欲しい本 】

『日本史を学ぶための図書館活用術』
(浜田 久美子/著 吉川弘文館 2020年刊)

 

調べごとがある人はもちろん、さしあたり調べたいことがない人も、本書を読めばさまざまな辞典を引きたくなる、図書館に来たくなるのではないでしょうか。

 

初めて日本史を学ぶ人のために、辞典や年表の活用方法を紹介した一冊です。

タイトルに「図書館活用術」とありますが、図書館の利用案内ではなく図書館の所蔵する参考図書のガイドブックとなっています。

著者は国立国会図書館で長年人文系のレファレンスを担当した浜田久美子氏。

日本古代史の研究者でもあり、その立場から学生の辞典の利用機会が減少していることへの危惧もあって執筆を決意したと記しています。

本の冒頭にはレポートを作成するための情報収集の仕方や、集めた資料のまとめ方、出典の書き方なども紹介されており、初めて課題に取り組む学生にはよい道案内となるでしょう。

 

さて、本書の内容ですが、辞典ごとに項目数や配列方法、収録範囲、索引の有無といった基本事項や図版・付録の使い方まで解説するほか、辞典の成立背景まで知ることができます。

また、紙の辞書のほか、最近の研究論文を探すためのデータベースも取り上げられています。辞典類は刊行から数十年以上経過しているものも多く、先行研究の把握も必要なためです。

 

さらに本書では、史料を読むための古語辞典やくずし字辞典も扱っています。

当館の「歴史の蔵」にも江戸時代の資料などがありますが、中を開いて「読めない……」とがっかりするのではなく、これらの辞典も駆使して取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

ちなみに、本書を刊行した吉川弘文館からは『日本史を学ぶための<古代の暦>入門』『日本史を学ぶための古文書・古記録訓読法』『日本古代史を学ぶための漢文入門』『日本近代史を学ぶための文語文入門』なども出版されています。

 

いずれも中央図書館で所蔵しているので、調べものの際はこちらもぜひ参考にしてください。

 

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『日本史を学ぶための図書館活用術』
『日本史を学ぶための<古代の暦>入門』(細井 浩志/著 吉川弘文館 2014年刊)
『日本史を学ぶための古文書・古記録訓読法』(苅米 一志/著,日本史史料研究会/監修 吉川弘文館 2015年刊)
『日本古代史を学ぶための漢文入門』(池田 温/編 吉川弘文館 2006年刊)
『日本近代史を学ぶための文語文入門』(古田島 洋介/著 吉川弘文館 2013年刊)

 

▼出版社
吉川弘文館

 

▼書影画像元
版元ドットコム

 

※次回更新は2021年12月24日(金)の予定です

ブログ記事検索

最近の投稿

月別記事一覧

カテゴリー