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#kclスタッフおすすめ本 『ウルド昆虫記バッタを倒しにアフリカへ』
2021年6月18日(金)|投稿者:kclスタッフ
【 とにかく読んで欲しい本 】
『ウルド昆虫記バッタを倒しにアフリカへ』
(前野ウルド浩太郎/著 光文社 2020年刊)
「バッタに食べられたい」
この本の「はじめに」には、上記のような衝撃的な言葉が書かれています。しかも著者は、長年の研究でバッタアレルギーまで発症しており、全身バッタだらけになったら命を落としかねないにも拘わらず。この冒頭から、私の心はわしづかみにされました。
私は昆虫が大のニガテ。ハエ一匹でも、モンスターを倒す勇者ばりのエネルギーと勇気を必要とします。そんな私とは真逆のキャラクターを持つと思われる著者の前野ウルド浩太郎氏。
「バッタが大好きなのに、バッタを倒すとはどういうことなのか?」「いったい彼はどんな人?」という、気持ち悪い物見たさ(ゴメンナサイ)のような興味が湧いてきたのでした。
この本には、長年バッタの大群が農作物を食い尽し、深刻な饑饉をもたらしているアフリカのモーリタニアで、著者が様々な困難に遭いながらも、悪戦苦闘する研究の日々が綴られています。
アフリカではバッタが大発生した時、大量の駆除剤を散布してバッタを殲滅させるという従来の方法だけではなく、野生のバッタの生態を解明することで、問題解決を図る必要がありました。
そこに目をつけた(?)著者は、大量発生すれば、研究しまくれるし、バッタに食べられたいという夢も叶う。さらにバッタ問題が解決できれば、アフリカの人にも喜んでもらえる!と考えたのです。
研究の日々は困難の連続。アフリカの厳しい気候に四苦八苦し、外国の慣習や文化の違いに多くの失敗やトラブルに巻き込まれます。さらに、バッタが大量発生しない(研究自体ができない)まま、研究資金が底をつき、無収入になるという最大の危機が訪れます。
しかし、彼は数々の困難をどこか楽しそうにユーモアたっぷりに綴っているのです。それは、なんとしても研究をしたいという彼の異常な熱意、そして食べられても良いほどのバッタへの愛が溢れているからでしょうか?
そしていつしか、素晴らしい指導者や研究仲間、たくさんの支援者に囲まれて、彼はさらにギアを上げて危機を乗り越えていきます。いつしか私も「もう全く気持ち悪くありません!この先が気になる!」と、どんどん読み進めてしまいました。
この本は、2017年に『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)という新書で発刊された後、読者の方から「子どもたちにも読んでもらいたい」という要請を受け、2020年に児童書として発刊されたものです。児童書では分かり易いように、語句の説明やルビもふられています。つまり、大人も子どもも楽しめる本となっています。
児童書には新しいエピソードもあり、両方読むと2倍楽しめます。この機会にバッタ愛で溢れた彼の研究の日々を覗いてみませんか?
▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『ウルド昆虫記バッタを倒しにアフリカへ』
『バッタを倒しにアフリカへ』
▼書影画像元
光文社
※次回更新は2021年6月25日(金)の予定です
【予告】#kclスタッフおすすめ本
2021年6月11日(金)|投稿者:kclスタッフ
2021年6月18日(金)より、中央図書館スタッフがおすすめする本の紹介コーナー
#kclスタッフおすすめ本
を当ブログ内でスタートします。
おすすめ本は、次の7つのテーマに沿ってご紹介していきます。
・はじめて買った本
・繰り返し読む本
・人生の転機になった本
・装丁が好きな本
・無人島に持っていく本
・とにかく読んで欲しい本
・衝撃を受けた本
絵本や一般書、最近出版された本から古典まで。
同じテーマであってもスタッフ毎に捉え方が異なれば、選ぶ本の種類も異なります。
常日頃から本に触れ、文字に親しむ図書館スタッフが厳選しておすすめする#kclスタッフおすすめ本、今後の展開をぜひご期待ください。
「雪」の本はいかがでしょうか?
2018年12月9日(日)|投稿者:kclスタッフ
みなさま はじめまして。
新しくブログ担当となりました「ばんこ」と申します。
楽しい児童書を中心に、ご紹介できればと思います。
さっそくですが、今回は、寒い季節にぴったりの「雪」に関する本をご紹介します。
「雪は天から送られた手紙である」
この言葉をご存じでしょうか?
世界で初めて人工的に雪の結晶を作りあげた中谷宇吉郎(なかや うきちろう 1900年~1962年)の言葉です。
中谷宇吉郎は、優秀な科学者であるだけでなく、素晴らしいエッセイも書かれています。
タイトルの印象的な言葉のほか、人工雪を作るプロセスなどが詳細に書かれており、実際に実験がおこなわれた、北海道の寒さを感じることができます。また化学者らしく論理的な思考で、日々のちょっとした疑問に対し、私達にもわかりやすく説明してくれています。
児童書ながら、読みごたえのある1冊です。
『雪は天からの手紙(岩波少年文庫)中谷宇吉郎エッセイ集』
(中谷 宇吉郎/[著],池内 了/編 岩波書店 2002)
大人になると、ついついやっかいだなぁ と思ってしまう雪ですが、雪合戦、雪だるま、ソリ遊びと子ども達には大人気です。
そんな「雪」が大好きな子どもの目線で書かれた絵本があります。
作者はユリ・シュルヴィッツです。
少し灰色がかった表紙一面に降る雪。
一見、暗い印象ですが、読んでみると、大人も子どもも、雪が降ることが待ち遠しくなってきます。
『ゆき』
(ユリ・シュルヴィッツ/作,さくま ゆみこ/訳 あすなろ書房 1998)
みなさんご存じのように、雪の結晶には一つとして同じ形のものはありません。
この雪の結晶が、どのようにつくられているのかを、小さな子どもにも解りやすく教えてくれる本があります。
雪の赤ちゃんは、実は雲の中にある小さなチリです。
このチリを芯にして、雲の中を落ちながらどんどん成長していきます。
地面に向かって落ちながら、湿度や気温によって様々な形に変化し成長するのです。
一つとして同じ形はない 環境によって変化する 雪も人間も同じだなぁと感じます。
『雪の結晶ノート』
(マーク・カッシーノ/作,ジョン・ネルソン/作,千葉 茂樹/訳 あすなろ書房 2009)
こちらは、表紙からとても綺麗な雪の結晶の写真に、谷川俊太郎さんのやさしい詩が添えられています。
中谷宇吉郎も研究をした、北海道 大雪山の雪の結晶の写真です。
『きらきら』
(谷川 俊太郎/文,吉田 六郎/写真 アリス館 2008)
生涯をかけて、雪の結晶の写真を撮り続けた人がアメリカにいます。
ウィルソン・A・ベントレー(1865年~1931年)です。そのベントレーの伝記絵本です。
アメリカの豪雪地帯である、バーモント州生まれのベントレーは、農夫として生活しながら、アマチュアの雪の研究家として、高く評価されています。
彼が死ぬ間際に出版した『snow crystals』(洋書 1931年)は世界中の科学者に影響を与えました。
『雪の写真家 ベントレー』
(ジャクリーン・ブリッグズ・マーティン/作,メアリー・アゼアリアン/絵,千葉 茂樹/訳 BL出版 1999)
実は日本には、ベントレーよりも100年ほど前、江戸時代に雪の結晶の本を書いた殿様がいます。
下総国古河藩第4代当主(現在の茨城県)土井利位(どい としつら [寛政元(1789)年~嘉永元(1848)年])です。
この殿様は、写真ではなく、絵で雪の結晶を記録し、『雪華図説』(1832年)という一冊の本にまとめています。
こちらから見る事ができますので、ぜひご覧下さい。
『雪華図説』(国立国会デジタルコレクション)
『江戸時代の科学者 2 関東・中部・伊能忠敬ほか』
(西田 知己/著,たごもり のりこ/絵 汐文社 2014)
古くから雪は、多くの人を魅了してきたようです。
綺麗な雪の結晶も良いですが、身近なおもしろい雪の写真がのった本もあります。
題名の通り、おかしな雪の写真がメインになっています。
笑ってしまうような雪や、氷が登場します。
ひらがなで書かれているので、小さなお子様でも自分で読める本になっています。
『おかしなゆきふしぎなこおり』
(片平 孝/写真・文 ポプラ社 2012)
これからどんどん寒さが増してきます。
“天からの手紙”でもある「雪」に、親しんでみてください。
そして、雪の降る日に外に出て、これらの本に描かれていることを体感し、楽しんでみてはいかがでしょうか?
<参考図書>
『雪は天からの手紙』中谷 宇吉郎/[著],池内 了/編 岩波書店 2002
『中谷宇吉郎 雪を作る話』中谷 宇吉郎/著 平凡社 2016
『ゆき』ユリ・シュルヴィッツ/作,さくま ゆみこ/訳 あすなろ書房 1998
『雪の結晶ノート』マーク・カッシーノ/作,ジョン・ネルソン/作,千葉 茂樹/訳 あすなろ書房 2009
『きらきら』谷川 俊太郎/文,吉田 六郎/写真 アリス館 2008
『雪の写真家ベントレー』ジャクリーン・ブリッグズ・マーティン/作,
メアリー・アゼアリアン/絵,千葉 茂樹/訳 BL出版 1999
『おかしなゆき ふしぎなこおり』片平 孝/写真・文 ポプラ社 2012
『江戸時代の科学者 2 関東・中部・伊能忠敬ほか』西田 知己/著,
たごもり のりこ/絵 汐文社 2014
※以下の2冊は、桑名市立中央図書館では所蔵しておりません
『snow crystals』(by W.A. Bentley and W.J. Humphreys)
『雪華図説』(土井 利位/著,1832)
「雪華図説」は、「近代デジタルライブラリー」でインターネット公開されています。
ぜひご覧ください。
<ばんこ>