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#kclスタッフおすすめ本 『源氏物語  1』『源氏物語 A・ウェイリー版 1』

2021年8月13日(金)|投稿者:kclスタッフ

【 とにかく読んで欲しい本 】

『源氏物語 1』
 ([紫式部/著],円地 文子/訳 新潮文庫 新潮社 2008年刊)※版元品切
『源氏物語 A・ウェイリー版 1』
 (紫式部/著,アーサー・ウェイリー/英訳,毬矢 まりえ/日本語訳,森山 恵/日本語訳 左右社 2017年刊)

 

学生時代に『源氏物語』を読む機会があった。知人に「円地文子訳が良い」と薦められ読み始めた。
途中、挫折しそうな時もあったが、なんとか54帖読み切った。かなりの日数がかかったが、超大作を読み終え、満足感でいっぱいだったことを覚えている。

 

月日は流れ、おばさんになった頃、クリムトの「接吻」が表紙の『源氏物語』が目にとまった。
私がイメージする『源氏物語』と表紙の絵のイメージがどうにも合わず、自然とページをめくった。

 

訳者はアーサー・ウェイリー。それをまた日本語訳したものだ。
登場人物名がカタカナで独特の表記。女御、更衣といった身位を表す語も「レディ」と書かれており、人物名が理解しやすい。
人物名に限らず、「パレス」「ラブレター」「メッセンジャー」など、古典らしからぬ単語のおかげでストーリーが容易に頭に入ってくる感覚がした。
もちろん、20年ほど前に1度『源氏物語』を読んでいることも、容易に読める理由の1つではあると思うが、それがなかったとしても、かなり読みやすい訳なのではないかと思った。
読んでいる私の頭の中では、円地訳は絵巻物が次から次へと進んでいくようであり、ウェイリー版はテレビドラマを見ているような感じである。

 

2つの訳を味わってみての感想。
円地訳は平安時代の文化や趣をそのまま感じとれる良さがあり、ウェイリー版はストーリーを現代小説に近い感覚で楽しめる。

 

訳者の力ってすごい。

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『源氏物語 1』
『源氏物語 A・ウェイリー版 1』

 

▼出版社
新潮社
左右社

 

▼書影画像元
版元ドットコム
※①『源氏物語 1』は書影なし

 

※次回更新は2021年8月20日(金)の予定です

#kclスタッフおすすめ本 『アンジュール ある犬の物語』

2021年8月6日(金)|投稿者:kclスタッフ

【 はじめて買った本 】

『アンジュール ある犬の物語』
(ガブリエル・バンサン/作 ブックローン出版 1986年刊)

 

はじめて買った本には、人それぞれ思い入れがあるのではないでしょうか。
私が自分ではじめて買ったのは、この絵本でした。

 

大学生で一人暮らしを始めた私は、田舎から都会で洒落た港街に移り住みました。
自分の世界が一気に広がり、開放感、充実感、楽しさを味わう一方、一人で生活する大変さや、寂しさなどを感じ、はじめての事もたくさん経験しながら、今振り返ると刺激的な毎日を送っていたと思います。
どこか自分が少し大人になったような気がして、ちょっと背伸びしたい、そんな時期だったのかなぁと、この絵本を買った時のことを思い出します。

 

一人でぶらぶらと街歩きをしていた日、当時できたばかりで珍しかった、雑貨も買えるおしゃれな本屋さんで、表紙の犬の絵とPOPに惹かれて手に取りました。
POPの内容は覚えていませんが、とにかく、この絵本に衝撃を受けました。
素敵だな、カッコイイ!とひきつけられて、食費も切り詰めるような生活だったのに、衝動買いをしてしまいました。

 

それ以来、学生時代はもちろん就職して引っ越しても、結婚して子供ができても、ずっと手放さずに本棚にある大事な本の一つです。

 

この本は、中央図書館では児童コーナーに配架されていますが(最初にこの本を図書館で見つけた時は、嬉しくてにんまりしてしまいました)、大人の方にも是非読んでみてほしいと思います。
実際には、読むというより感じてもらいたい本です。
文章がなく、鉛筆デッサンだけで表現されている~ある犬の物語~ですが、この物語に言葉は必要ないのです。
犬の容姿と表情で、全て語られているからです。本を開いてページをめくるたびに、この絵にひきつけられ、犬の気持ちに寄り添って自分もうなだれたり絶望したり、そして最後にほっとした気持ちになります。

 

ずいぶんと大人になった今でも、変わらずこの作品に魅了され、やっぱり素敵だなぁと思うのです。
作品に文章はありませんが、最後のもりひさしさんによる解説も素晴らしいので、興味を持たれた方はこの本を図書館で探してみてください。

 

そして、皆さんもご自身ではじめて買った本は何だったかな?と思い返して、その本を開いてみてください。
きっと、その本を買われた当時の思い出までよみがえって、懐かしい体験ができると思いますよ!

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『アンジュール ある犬の物語』(ブックローン出版 1986年刊)
『アンジュール ある犬の物語』(BL出版 2000年刊)

 

▼出版社
BL出版(前ブックローン出版株式会社)

 

▼書影画像元
版元ドットコム

 

※次回更新は2021年8月13日(金)の予定です

#kclスタッフおすすめ本 『夜市』

2021年7月23日(金)|投稿者:kclスタッフ

【装丁が好きな本】

『夜市』
(恒川 光太郎/著 KADOKAWA 2005年刊)

 

夏祭の醍醐味と言えば花火、御神輿、お囃子、屋台…お祭り好きの日本人にとっては、どれも血が騒ぐもの。ちなみに私は花より団子派、花火より屋台を楽しみたい派です。

 

この屋台ですが、夜店や露店、縁日なんて言葉でも表現されますが、皆さん『夜市』という言葉はご存じでしょうか。
「よいち」や「よるいち」といった読み方をされ、夜に立つ市のことを指します。私が最初に惹かれたのは、まさに背表紙に浮かんだこのタイトルです。

 

薄暗く落ち着いたカバーデザインを見て手に取りました。あまり聞きなれない言葉ではありますが、文字に表すとより本の世界観が想像しやすいのでは…
本選びは直感と一目惚れがモットー。怪しい雰囲気が少しでも琴線に引っかかった方は、一見の価値ありです!

 

時刻は真夜中。
何の前触れもなく聴こえた『夜市が開かれる』という声に背中を押されて、二人の男女がとある岬近くの駐車場へ赴きます。足元も不確かな暗闇の中、仄白い光と共に現れたのは不思議な露店の群れや、買い物をする異形の者たち。彼らもまた夜市で買い物をする「お客様」なのですが、この市にはある絶対のルールがありました。

 

それは、『夜市に入ったら、買い物をするまで出られない』というものです。
しかし売られている品物はどれも目が飛び出すような高額商品ばかりで、中には人を売る店やバッタ物を平気で売りつけてくる商人もいました。そんな中、彼らがこの不可思議で不条理な「夜市」から脱出するために講じた方法とは…

 

短編だから時間の短い夏の夜にも打って付けです。コロナのおかげでお祭りも屋台も自粛ムードの中、気分だけでも日常から切り離されたいと思っている方へ、夜の外出にワクワクしていたあの頃を思い出しながら読んでもらいたい一冊です。ホラー小説の入口としてもどうぞ。

 

▼本の貸出状況はこちらから確認いただけます
『夜市』

 

▼書影画像元
KADOKAWA

 

※次回更新は2021年8月6日(金)の予定です

 

#kclスタッフおすすめ本 『あめ、ゆき、あられ くものいろいろ』

2021年7月16日(金)|投稿者:kclスタッフ

【 とにかく読んで欲しい本 】

『あめ、ゆき、あられ くものいろいろ』
(かこ さとし/絵と文 農山漁村文化協会 2005年刊)

 

皆さんは、小さいお子さんから「どうして雲はできるの?」と質問されたらどう答えますか?
私が実際に聞かれたときは、しどろもどろになって、結局うまく答えられませんでした…お恥ずかしい限りです…

 

なんとなく理解はしているのですが、5歳の子にもわかりやすく説明するのはとても難しいと感じました。
皆さんも、お子さんから説明に困る質問をされたことはないですか?

 

私は答えられなかったことが悔しかったので、後日、図書館の本で簡単にまとまっている本がないか探したところ、とってもいい本が見つかりました!
それが、かこ さとしさんの『あめ、ゆき、あられ くものいろいろ』です。
小さいお子さんでもわかるような言葉でやさしく書かれていて、「これなら私も上手に説明できるぞ!」と思いました。

 

雲の発生についてだけでなく、雨や雪、ひょうやあられをふらすいろいろな形の雲についても書かれていますので、この1冊で天気のことがだいたいわかるようになっています。

 

この本は“かこさとしの自然のしくみ地球のちからえほん”というシリーズの4冊目ですが、他9冊も同様に地球や自然のふしぎについて簡潔にまとめてくれています。よろしければそちらもご覧ください。

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『あめ、ゆき、あられ くものいろいろ』

 

▼出版社
農山漁村文化協会

 

▼書影画像元
版元ドットコム

 

※次回更新は2021年7月23日(金)の予定です

 

#kclスタッフおすすめ本 『くもりときどきミートボール』

2021年7月2日(金)|投稿者:kclスタッフ

【 衝撃を受けた本 】

『くもりときどきミートボール』
(ジュディ・バレット/文,ロン・バレット/絵,青山 南/訳
ほるぷ出版 2004年刊)

 

「空から食べものが降ってきたらいいのになぁ」
空から雨や雪が降るように、おいしい飴やジュースが降ってきたらいいなと、一度は考えたことがある人は多いと思います。この絵本は、おじいちゃんが寝る前にしてくれた、おかしな町のお話です。

 

カミカミゴックンという町では、1日に3回食べものが空から降ってきます。
例えば、ソーセージにジュースにトーストなど。
そのかわり、雨は降りません。町の天気予報は、何が降ってくるかという予報です。
メニューは天気次第なので、何が降ってくるのかワクワク感があって楽しそうです。

 

わたしが衝撃を受けたのは、空から降ってくる食べ物は必ずしも私たちの用意した皿の上に落ちてくるわけでないということです。
当たり前のことですが、小さい頃の想像の中では自分の口の中、あるいは自分の前に落ちてきてくれる食べものしか考えていませんでした。
でも、道に落ちたり、屋根の上に落ちたり、いろいろなところに食べものが降ってきます。
道に落ちてしまった食べものはそのまま放置すると腐ってしまうので、専門の人が毎日掃除してくれます。
料理をする必要はありませんが、かわりに掃除を毎日こまめにしないといけません。

 

毎日こまめに掃除するのが苦手な私は、カミカミゴックン町では暮らせないです。
具体的に想像すると、楽しいことだけじゃなく、いろいろ大変なこともあることがこの本を読んで気づかされました。
どういうことが起きるのか、いろいろな角度から考える大切さを知りました。

 

楽しくおいしい生活を送っているカミカミゴックン町の人たちですが、だんだん天気がおかしくなっていきます。
ずっと同じものが降り続けたり、どんどん大きくなったり…。
異常気象に困った町の人はどうするのか、ぜひ読んで確かめてみてください。

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『くもりときどきミートボール』

 

▼書影画像元
ほるぷ出版

 

※次回更新は2021年7月16日(金)の予定です

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