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#kclスタッフおすすめ本 『かんぺきなこども』

2021年8月27日(金)|投稿者:kclスタッフ

【 衝撃を受けた本 】

『かんぺきなこども』
(ミカエル・エスコフィエ/作,マチュー・モデ/絵,石津 ちひろ/訳 ポプラ社 2019年刊)

 

「うちの子と、かえて~」
タイトルを見て、親歴10数年の自分の事は、たか~い棚の上に、こっそりと置きつつ、こんな事を思いました。
子育て中の皆さんの一定数には、共感していただけるのではないかと思うのですが・・・。

 

さて、タイトルにもなっている「かんぺきなこども」とは、いったいどんな子供なのか?
読んでみると、それはもう「かんぺき」でした。ごはんはこぼさない、お片付けはきちんとする、夜はよく寝る、お行儀は良い、勉強もよくできる。
それなのに、読んでいると、なんだかだんだんと、息苦しくなってきます。

 

何をしても「かんぺき」、親が怒る必要もない、しかも親にまでやさしい、こんな子がうちの子だったら・・・
と考え「はっ!!」としました。
もしかしたら、「かんぺきなこども」の親は、「かんぺきなおや」でないといけないのかも!?と気づいた時、やっぱり「うちの子でいいや」と思い、安心とともに、自分の事を棚から戻し、同時に人としての器の小ささに、ひそかに「衝撃を受けた本」なのでした。

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『かんぺきなこども』

 

▼出版社
ポプラ社

 

※次回更新は2021年9月10日(金)の予定です

#kclスタッフおすすめ本 『ソラリス』

2021年8月20日(金)|投稿者:kclスタッフ

【 繰り返し読む本 】

『ソラリス』(スタニスワフ・レムコレクション )
(スタニスワフ・レム/著,沼野 充義/訳 国書刊行会 2004年刊)

 

繰り返し読む本は、スタニスワフ・レムの『ソラリス』です。
惑星ソラリスの謎を解明するために、地球から派遣された主人公は、到着してすぐにソラリス・ステーションの「ある種の……混乱」を目の当たりにして、自身も謎の現象に巻き込まれていきます。
惑星全体を覆うゼリー状の「ソラリスの海」のことを思いながら、何度読んでもこの小説の世界に魅了されます。

 

著者のスタニスワフ・レムはポーランドの作家で、ポーランド南部の都市クラクフにあるヤギェウォ大学で学びました。
このヤギェウォ大学は1364年にポーランドで最初に設立された大学で、天文学者コペルニクスなども学んだそうです。
クラクフはポーランド文化の中心地で、旧市街には歴史的な建造物が残っており、世界遺産に登録されています。

 

「スタニスワフ・レム・コレクション」(国書刊行会)全6巻のうち、桑名市立中央図書館は『ソラリス』と『高い城・文学エッセイ』の2冊を所蔵しています。
レムの他の作品も面白いので、SF小説が好きな方はぜひ読んでみてください。

 

参考資料:『地球の歩き方 A26 チェコ ポーランド スロヴァキア』(地球の歩き方編集室/編集 ダイヤモンド・ビッグ社,ダイヤモンド社(発売) 2020年刊)

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『ソラリス』
『高い城・文学エッセイ』
『地球の歩き方 A26 チェコ ポーランド スロヴァキア』

 

▼出版社
国書刊行会

 

▼書影画像元
版元ドットコム

 

※次回更新は2021年8月27日(金)の予定です

#kclスタッフおすすめ本 『源氏物語  1』『源氏物語 A・ウェイリー版 1』

2021年8月13日(金)|投稿者:kclスタッフ

【 とにかく読んで欲しい本 】

『源氏物語 1』
 ([紫式部/著],円地 文子/訳 新潮文庫 新潮社 2008年刊)※版元品切
『源氏物語 A・ウェイリー版 1』
 (紫式部/著,アーサー・ウェイリー/英訳,毬矢 まりえ/日本語訳,森山 恵/日本語訳 左右社 2017年刊)

 

学生時代に『源氏物語』を読む機会があった。知人に「円地文子訳が良い」と薦められ読み始めた。
途中、挫折しそうな時もあったが、なんとか54帖読み切った。かなりの日数がかかったが、超大作を読み終え、満足感でいっぱいだったことを覚えている。

 

月日は流れ、おばさんになった頃、クリムトの「接吻」が表紙の『源氏物語』が目にとまった。
私がイメージする『源氏物語』と表紙の絵のイメージがどうにも合わず、自然とページをめくった。

 

訳者はアーサー・ウェイリー。それをまた日本語訳したものだ。
登場人物名がカタカナで独特の表記。女御、更衣といった身位を表す語も「レディ」と書かれており、人物名が理解しやすい。
人物名に限らず、「パレス」「ラブレター」「メッセンジャー」など、古典らしからぬ単語のおかげでストーリーが容易に頭に入ってくる感覚がした。
もちろん、20年ほど前に1度『源氏物語』を読んでいることも、容易に読める理由の1つではあると思うが、それがなかったとしても、かなり読みやすい訳なのではないかと思った。
読んでいる私の頭の中では、円地訳は絵巻物が次から次へと進んでいくようであり、ウェイリー版はテレビドラマを見ているような感じである。

 

2つの訳を味わってみての感想。
円地訳は平安時代の文化や趣をそのまま感じとれる良さがあり、ウェイリー版はストーリーを現代小説に近い感覚で楽しめる。

 

訳者の力ってすごい。

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『源氏物語 1』
『源氏物語 A・ウェイリー版 1』

 

▼出版社
新潮社
左右社

 

▼書影画像元
版元ドットコム
※①『源氏物語 1』は書影なし

 

※次回更新は2021年8月20日(金)の予定です

#kclスタッフおすすめ本 『アンジュール ある犬の物語』

2021年8月6日(金)|投稿者:kclスタッフ

【 はじめて買った本 】

『アンジュール ある犬の物語』
(ガブリエル・バンサン/作 ブックローン出版 1986年刊)

 

はじめて買った本には、人それぞれ思い入れがあるのではないでしょうか。
私が自分ではじめて買ったのは、この絵本でした。

 

大学生で一人暮らしを始めた私は、田舎から都会で洒落た港街に移り住みました。
自分の世界が一気に広がり、開放感、充実感、楽しさを味わう一方、一人で生活する大変さや、寂しさなどを感じ、はじめての事もたくさん経験しながら、今振り返ると刺激的な毎日を送っていたと思います。
どこか自分が少し大人になったような気がして、ちょっと背伸びしたい、そんな時期だったのかなぁと、この絵本を買った時のことを思い出します。

 

一人でぶらぶらと街歩きをしていた日、当時できたばかりで珍しかった、雑貨も買えるおしゃれな本屋さんで、表紙の犬の絵とPOPに惹かれて手に取りました。
POPの内容は覚えていませんが、とにかく、この絵本に衝撃を受けました。
素敵だな、カッコイイ!とひきつけられて、食費も切り詰めるような生活だったのに、衝動買いをしてしまいました。

 

それ以来、学生時代はもちろん就職して引っ越しても、結婚して子供ができても、ずっと手放さずに本棚にある大事な本の一つです。

 

この本は、中央図書館では児童コーナーに配架されていますが(最初にこの本を図書館で見つけた時は、嬉しくてにんまりしてしまいました)、大人の方にも是非読んでみてほしいと思います。
実際には、読むというより感じてもらいたい本です。
文章がなく、鉛筆デッサンだけで表現されている~ある犬の物語~ですが、この物語に言葉は必要ないのです。
犬の容姿と表情で、全て語られているからです。本を開いてページをめくるたびに、この絵にひきつけられ、犬の気持ちに寄り添って自分もうなだれたり絶望したり、そして最後にほっとした気持ちになります。

 

ずいぶんと大人になった今でも、変わらずこの作品に魅了され、やっぱり素敵だなぁと思うのです。
作品に文章はありませんが、最後のもりひさしさんによる解説も素晴らしいので、興味を持たれた方はこの本を図書館で探してみてください。

 

そして、皆さんもご自身ではじめて買った本は何だったかな?と思い返して、その本を開いてみてください。
きっと、その本を買われた当時の思い出までよみがえって、懐かしい体験ができると思いますよ!

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『アンジュール ある犬の物語』(ブックローン出版 1986年刊)
『アンジュール ある犬の物語』(BL出版 2000年刊)

 

▼出版社
BL出版(前ブックローン出版株式会社)

 

▼書影画像元
版元ドットコム

 

※次回更新は2021年8月13日(金)の予定です

#kclスタッフおすすめ本 『夜市』

2021年7月23日(金)|投稿者:kclスタッフ

【装丁が好きな本】

『夜市』
(恒川 光太郎/著 KADOKAWA 2005年刊)

 

夏祭の醍醐味と言えば花火、御神輿、お囃子、屋台…お祭り好きの日本人にとっては、どれも血が騒ぐもの。ちなみに私は花より団子派、花火より屋台を楽しみたい派です。

 

この屋台ですが、夜店や露店、縁日なんて言葉でも表現されますが、皆さん『夜市』という言葉はご存じでしょうか。
「よいち」や「よるいち」といった読み方をされ、夜に立つ市のことを指します。私が最初に惹かれたのは、まさに背表紙に浮かんだこのタイトルです。

 

薄暗く落ち着いたカバーデザインを見て手に取りました。あまり聞きなれない言葉ではありますが、文字に表すとより本の世界観が想像しやすいのでは…
本選びは直感と一目惚れがモットー。怪しい雰囲気が少しでも琴線に引っかかった方は、一見の価値ありです!

 

時刻は真夜中。
何の前触れもなく聴こえた『夜市が開かれる』という声に背中を押されて、二人の男女がとある岬近くの駐車場へ赴きます。足元も不確かな暗闇の中、仄白い光と共に現れたのは不思議な露店の群れや、買い物をする異形の者たち。彼らもまた夜市で買い物をする「お客様」なのですが、この市にはある絶対のルールがありました。

 

それは、『夜市に入ったら、買い物をするまで出られない』というものです。
しかし売られている品物はどれも目が飛び出すような高額商品ばかりで、中には人を売る店やバッタ物を平気で売りつけてくる商人もいました。そんな中、彼らがこの不可思議で不条理な「夜市」から脱出するために講じた方法とは…

 

短編だから時間の短い夏の夜にも打って付けです。コロナのおかげでお祭りも屋台も自粛ムードの中、気分だけでも日常から切り離されたいと思っている方へ、夜の外出にワクワクしていたあの頃を思い出しながら読んでもらいたい一冊です。ホラー小説の入口としてもどうぞ。

 

▼本の貸出状況はこちらから確認いただけます
『夜市』

 

▼書影画像元
KADOKAWA

 

※次回更新は2021年8月6日(金)の予定です

 

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