『こちらあみ子』
(今村 夏子/著 筑摩書房 2011年刊)
この本を読み終わった後、何日かずっとモヤモヤした気持ちが残っていた。
登場人物達の声が、映像が、消えることなく胸を締めつけてくる作品だった。
あみ子の純粋な気持ちや言葉や行動は誰とも交わることがなく、時に無下にされ、その理由があみ子にはわからない。
あみ子と周囲とのズレが文章では淡々と描かれていき、その背面に潜む狂気が少しずつ、目立たぬように顔をのぞかせ、はっとさせられる。
誰しも自分の気づかぬ間に人を傷つけ、壊してしまう可能性がある。
無垢は時に凶器となり、常識は時に誰かの首を絞める。
相手を気遣う、敬う、思いやる─それが掛け違ってしまうと、こうも相手を打ちのめしてしまうのか。
救いようがなく、ただひたすらに苦しいのに、あみ子の言葉で紡ぎだされた日常は飄々としていて、ある意味すがすがしくも感じられる。
どんな形であれ、いつまでも心に残るということは名作なんだと思う。
読んだ人、一人一人にこの本の感想を聞いてみたい。
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『こちらあみ子』
▼出版社
筑摩書房
▼書影画像元
版元ドットコム
※次回更新は2021年11月12日(金)の予定です
『フェアリー・レルム 1』
(エミリー・ロッダ/著,岡田 好惠/訳,仁科 幸子/絵 童心社 2005年刊)
エミリー・ロッダさんの書かれた『フェアリー・レルム』という作品をご紹介したいと思います。
おばあちゃんの大切なブレスレットをさがしていたジェシーは、ひょんなことから妖精の王国「フェアリー・レルム」にまぎれこんでしまいました。
そこでふしぎな妖精たちに出会い、大好きなおばあちゃんのたいへんな秘密を知ることになります。
ジェシーは妖精たちと一緒に王国の危機に立ち向かっていきます。
王道のファンタジーであり、あたたかく、優しい世界が紡がれる物語です。
私にとってこの本は、小学生の頃に出会い、読書の楽しさやファンタジーの面白さを教えてくれた作品です。
話がテンポよく進み、展開も分かりやすく、夢中になって読んでいました。
また、魔法の呪文なども子ども心をくすぐり、口ずさんでいた覚えがあります。
子ども向けに書かれた作品ではありますが、大人の方も楽しめます。
読み進めていく度に出会うエルフやユニコーン、ノームにピクシーたち、たくさんのキャラクターたちがとても個性的で魅力的です。
全部で10巻ありますが、1巻ずつ完結しています。
試しに1巻を読んでみてはいかがでしょうか。
2巻、3巻と続けて読みたくなってくるかもしれません。
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『フェアリー・レルム 1』
『フェアリー・レルム 2』
『フェアリー・レルム 3』
『フェアリー・レルム 4』
『フェアリー・レルム 5』
『フェアリー・レルム 6』
『フェアリー・レルム 7』
『フェアリー・レルム 8』
『フェアリー・レルム 9』
『フェアリー・レルム 10』
▼出版社
童心社
※次回更新は2021年10月22日(金)の予定です
『全日本食えば食える図鑑』
(椎名 誠/著 新潮社 2005年刊)
この本を書店で初めて目にした時、それは衝撃的でした。
まず「全日本食えば食える図鑑」というタイトル。
具体的な内容はともかく、なるほど普段食べないようなものを食べるんだなと、言いたいこと・やりたいことが全ての題名に集約されていて、表紙を見ただけで伝わってくる真っ向勝負っぷりに感心しました。
日本各地で食されている珍しいもの、変わったものを実際に食べて、その土地で出会った人々の交流についても書かれています。
ヤシガニ、エチゼンクラゲ、イソギンチャクといった名前は聞いたことあるものの、「それ食べれるの!?」と驚いたもの。
ワラスボ、ゲンゲ、アラのように「そもそもそれはどういう存在で?」と疑問に思ったもの。
どれもどんな味か想像できないものばかりで、実用的ではないかもしれませんが、同時にこんな本もあるんだぁと、とても興味深く面白い内容でした。
手に取って、最初の数ぺージだけでもいいので読んでみてください。
そして「で、味は?」と思ったなら、最後まで読むことをオススメします。
日本の食文化の奥深さを再発見できる一冊でした。
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『全日本食えば食える図鑑』
▼出版社
新潮社
▼書影画像元
版元ドットコム
※次回更新は2021年10月8日(金)の予定です
『ごぶごぶごぼごぼ』
(駒形 克己/さく 福音館書店 1999年刊)
たぶん、人生の中の読んだ回数で言えば、文句なしにNO.1です。
ただし、「繰り返し、読み聞かせた本」になります。
長女に読み聞かせてから、長男、次女と3人の子ども達にず~っと読み聞かせをしてきました。赤ちゃんに読み聞かせるための、必要条件を満たしている本だと思います。
まず、紙が厚く丈夫。ちょっとやそっとじゃ破けません。少々舐めても大丈夫!
壊れる心配がなく、0歳児に安心して読み聞かせができます。
短いオノマトペの繰り返しは、読むことが途中で苦痛になることもなく、しかも、穴が空いていて指を突っ込めるという赤ちゃんが大好きな仕掛け絵本的な要素もあります。
一冊用意すれば、長く楽しめること間違いなしです。
作者の駒形克己さんは、世界的な造形作家。その駒形さんが、実際に自分の子育ての中で作られた、赤ちゃん絵本。
赤ちゃんたちのベストセラー(?)です。
桑名市には、乳幼児向けのブックスタート事業として、絵本を5冊セットにして貸出する「ゆめはま文庫」があります。(セット内容は「乳幼児向け絵本リスト(PDF)」をご覧ください)
こちらは、桑名市にお住まいの方がご利用できるサービスとなっておりますが、その中の0歳Aセットにも入っています。
興味のある方はぜひ、スタッフにお声がけください。
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『ごぶごぶごぼごぼ』
▼書影画像元
福音館書店
※次回更新は2021年9月24日(金)の予定です
『かんぺきなこども』
(ミカエル・エスコフィエ/作,マチュー・モデ/絵,石津 ちひろ/訳 ポプラ社 2019年刊)
「うちの子と、かえて~」
タイトルを見て、親歴10数年の自分の事は、たか~い棚の上に、こっそりと置きつつ、こんな事を思いました。
子育て中の皆さんの一定数には、共感していただけるのではないかと思うのですが・・・。
さて、タイトルにもなっている「かんぺきなこども」とは、いったいどんな子供なのか?
読んでみると、それはもう「かんぺき」でした。ごはんはこぼさない、お片付けはきちんとする、夜はよく寝る、お行儀は良い、勉強もよくできる。
それなのに、読んでいると、なんだかだんだんと、息苦しくなってきます。
何をしても「かんぺき」、親が怒る必要もない、しかも親にまでやさしい、こんな子がうちの子だったら・・・
と考え「はっ!!」としました。
もしかしたら、「かんぺきなこども」の親は、「かんぺきなおや」でないといけないのかも!?と気づいた時、やっぱり「うちの子でいいや」と思い、安心とともに、自分の事を棚から戻し、同時に人としての器の小ささに、ひそかに「衝撃を受けた本」なのでした。
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『かんぺきなこども』
▼出版社
ポプラ社
※次回更新は2021年9月10日(金)の予定です