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KCLスタッフブログ ~ブックとラック~

2021年12月17日(金)AM9:00|投稿者:KCLスタッフ

#kclスタッフおすすめ本 『日本史を学ぶための図書館活用術』

【 とにかく読んで欲しい本 】

『日本史を学ぶための図書館活用術』
(浜田 久美子/著 吉川弘文館 2020年刊)

 

調べごとがある人はもちろん、さしあたり調べたいことがない人も、本書を読めばさまざまな辞典を引きたくなる、図書館に来たくなるのではないでしょうか。

 

初めて日本史を学ぶ人のために、辞典や年表の活用方法を紹介した一冊です。

タイトルに「図書館活用術」とありますが、図書館の利用案内ではなく図書館の所蔵する参考図書のガイドブックとなっています。

著者は国立国会図書館で長年人文系のレファレンスを担当した浜田久美子氏。

日本古代史の研究者でもあり、その立場から学生の辞典の利用機会が減少していることへの危惧もあって執筆を決意したと記しています。

本の冒頭にはレポートを作成するための情報収集の仕方や、集めた資料のまとめ方、出典の書き方なども紹介されており、初めて課題に取り組む学生にはよい道案内となるでしょう。

 

さて、本書の内容ですが、辞典ごとに項目数や配列方法、収録範囲、索引の有無といった基本事項や図版・付録の使い方まで解説するほか、辞典の成立背景まで知ることができます。

また、紙の辞書のほか、最近の研究論文を探すためのデータベースも取り上げられています。辞典類は刊行から数十年以上経過しているものも多く、先行研究の把握も必要なためです。

 

さらに本書では、史料を読むための古語辞典やくずし字辞典も扱っています。

当館の「歴史の蔵」にも江戸時代の資料などがありますが、中を開いて「読めない……」とがっかりするのではなく、これらの辞典も駆使して取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

ちなみに、本書を刊行した吉川弘文館からは『日本史を学ぶための<古代の暦>入門』『日本史を学ぶための古文書・古記録訓読法』『日本古代史を学ぶための漢文入門』『日本近代史を学ぶための文語文入門』なども出版されています。

 

いずれも中央図書館で所蔵しているので、調べものの際はこちらもぜひ参考にしてください。

 

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『日本史を学ぶための図書館活用術』
『日本史を学ぶための<古代の暦>入門』(細井 浩志/著 吉川弘文館 2014年刊)
『日本史を学ぶための古文書・古記録訓読法』(苅米 一志/著,日本史史料研究会/監修 吉川弘文館 2015年刊)
『日本古代史を学ぶための漢文入門』(池田 温/編 吉川弘文館 2006年刊)
『日本近代史を学ぶための文語文入門』(古田島 洋介/著 吉川弘文館 2013年刊)

 

▼出版社
吉川弘文館

 

▼書影画像元
版元ドットコム

 

※次回更新は2021年12月24日(金)の予定です

2021年12月10日(金)AM9:00|投稿者:KCLスタッフ

#kclスタッフおすすめ本 『わすれられないおくりもの』

【 繰り返し読む本 】

『わすれられないおくりもの』
(スーザン・バーレイ/さく え,小川 仁央/やく 評論社 1986年刊)

 

ご紹介する本は、スーザン・バーレンさんが書かれた『わすれられないおくりもの』という絵本です。

 

年老いたアナグマは、知らないことがないくらい物知りで、自分に死が迫っていることも知っていました。
そして森の友達たちに手紙を残して、とうとう旅立ってしまいました。
かけがえのない友を失った森のみんなは、深い悲しみを抱えて冬を越しました。
そして春になり、外に出られるようになったみんなは、お互いにアナグマとの思い出を語り合ったのです…。

 

この絵本は、「死」というテーマについて、悲しい気持ちをそっと包み込んでくれる温かく優しい物語です。
大切な人を残して旅立つ者の気持ち、そして残された者の気持ちが丁寧に描かれています。
森の動物たちはアナグマからそれぞれ知恵や工夫という「宝物」をもらい、お互い助け合っていくことができました。
「死」を通して、生き方をも教えてくれるお話です。

 

私は読む度に、もし自分がアナグマだったら何ができるだろうと考えてしまいます。
これからも、人生の折に繰り返し読みたい本です。

 

お子さんだけでなく、大人の方にもぜひ読んでいただきたいです。

 

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『わすれられないおくりもの』

 

▼出版社
評論社

 

▼書影画像元
版元ドットコム

 

※次回更新は2021年12月17日(金)の予定です

2021年12月3日(金)AM9:00|投稿者:KCLスタッフ

#kclスタッフおすすめ本 『独楽吟』

【 とにかく読んで欲しい本 】

「独楽吟」(『日本古典文学大系 93 近世和歌集』所収)
(橘曙覧/著 岩波書店 1976年刊)

 

「独楽吟」は福井出身の幕末の歌人・国学者、橘曙覧(たちばなのあけみ)の連作短歌全52首をいいます。
すべての歌が、「たのしみは・・・」ではじまり、「・・・とき」で終わっています。
日々の暮らしのなかで感じる楽しみが、今に通じる分かりやすい言葉で綴られています。

 

平成6年(1994)6月13日、クリントン米大統領が、天皇・皇后両陛下の訪米歓迎式典のスピーチで「独楽吟」のなかの一首を引用したことで再び注目されるようになったとのこと。ご記憶の方、おられるでしょうか。

 

本を読む楽しみを詠んだ歌もあります。
たのしみは 珍しき書(ふみ) 人にかり 始め一ひら ひろげたる時 (うん、うん)
たのしみは 人も訪(と)ひこず 事(こと)もなく 心をいれて 書(ふみ)を見る時 (ゆっくり読みたい!)
たのしみは そぞろ読みゆく 書(ふみ)の中に 我とひとしき 人をみし時  (そう、そう)

 

気の置けない友のありがたさを詠んだ歌も。
たのしみは 心をおかぬ 友どちと 笑ひかたりて 腹をよるとき (アハハ!)

 

こんな歌も・・・
たのしみは いやなる人の 来たりしが 長くもおらで かへりけるとき (やっぱりね)

 

人と会うことを控え、家に居る時間の多い今だからこそ「独りを楽しむ歌」が心にしみるのかもしれません。
さいごに、クリントンさんが引用された歌はこちら。
たのしみは 朝おきいでて 昨日まで 無(なか)りし花の 咲ける見る時 (咲いてる!)

 

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
「独楽吟」(『日本古典文学大系 93 近世和歌集』所収)

 

▼出版社
岩波書店

 

※次回更新は2021年12月10日(金)の予定です

2021年11月26日(金)AM9:00|投稿者:KCLスタッフ

#kclスタッフおすすめ本 『まどのむこうのくだものなあに?』

【 繰り返し読む本 】

『まどのむこうのくだものなあに?』
(荒井 真紀/さく 福音館書店 2020年刊)

 

この本との最初の出会いは、『こどものとも年中向き』2019年7月号でした。
表紙の赤いイチゴなどが印象的で、とっても美味しそう!
出てくる果物はとてもリアルで、手を伸ばせば食べられそうです。
それぞれ拡大されて全体と断面が描かれており、ページにあいた窓からのぞくといつもと違う印象になります。
よく食べる果物が、小さな窓を通しただけで違う表情を見せてくれるのが驚きでした。

 

その時は買わなかったのですが、ずっと心の隅に残っていました。後に、こどものとも絵本として出版されたのを知り、自分用に購入しました。
購入してからはすぐ取り出せるところに置いておき、自分一人でゆっくりと眺めたり、甥っ子が遊びに来たら読み聞かせとして何度も読んだりしています。

 

この絵本は表紙に「まどのむこうの くだもの なあに?」と書いてあるだけで、中には文字がありません。
文字の無い絵本なので、厳密にいうと繰り返し読む本とは言えないかもしれません。
でも、文字がないからこその楽しみがあります。

 

例えば、ページをめくる度に「まどのむこうの くだもの なあに?」と問いかけながら読むことがあれば、「これはなんの果物でしょうか?」とか、「赤くてツブツブのこれは何かな?」と毎回違う言葉で読んでいます。時には読まずに、ページを次々めくって遊ぶこともあります。

 

私が好きな本なので甥っ子によく見せていたら、遊びに来ると必ず置いてある場所から持ってきて「はいっ!」と渡してくれるようになりました。
最初の文字が言えないのか、“イチゴ”は「んご」、”ミカン“は「んかん」、”パイナップル”は「っぷる」となるのがかわいいです。
買ってすぐの時に本を食べられたこともありましたが、口をもぐもぐしながら見ている姿はかわいく、歯形が付いたページもいい思い出です。

 

なかなか会うことができませんが、会うたびにちょっとずつ言える言葉が増えていくので、甥っ子の成長を感じます。
いつまで一緒に本を読めるのかなと思いつつ、次に会える時にどんな成長を見せてくれるのか楽しみです。

 

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『まどのむこうのくだものなあに?』
『こどものとも年中向き [2019]-7』(福音館書店 2019年刊)

 

▼出版社
福音館書店

 

 

※次回更新は2021年12月3日(金)の予定です

2021年11月12日(金)AM9:00|投稿者:KCLスタッフ

#kclスタッフおすすめ本 『十二単衣を着た悪魔』

【 とにかく読んで欲しい本 】

『十二単衣を着た悪魔』
(内館 牧子/著 幻冬舎 2012年刊)

 

「おのれ光源氏!」
思い出したのは、そう叫んだ友人の顔でした。
「源氏物語」の授業が始まった頃、展開される恋愛模様への不満がとうとう爆発した時のことで、この一言を皮切りに周囲から次々と文句が飛び出ました。
「浮気性すぎるぞ光源氏」「流されるな女性陣」「もっと諫めろ天皇」…等々
そして、誰かが漏らした呟きが印象的でした。
「名作って言っても、もう現代人の感覚だと受け入れきれないんだよね。」

 

思い出したきっかけは、この小説、『十二単を着た悪魔』
この話は、唯一光源氏と敵対し続ける女性、弘徽殿の女御を中心に書かれた小説なのです。
主人公は、弟へのコンプレックスを持った現代に生きる普通の男性。ある時「源氏物語」世界に入り込み、弘徽殿の女御の元で陰陽師として生きることに。
そうして、物語では描かれなかった話の裏側を知っていくのです。

 

話は「源氏物語」に沿って進みますが、光源氏を陥れようとしては毎回失敗する弘徽殿の女御の心境は、まさに「おのれ光源氏!」
そんな彼女は、もともと生まれる時代を間違えたような現代的な感覚と気の強さの持ち主。
光源氏の行動を非難する時は笑ってしまうほど的確で、それでいて自分の計画が失敗したら烈火のごとく怒ってすぐ復活。
その前向きさは悪役と知りつつも思わず応援したくなるほどです。

 

主人公も次第にほだされて彼女のために動くようになり、光源氏を始め様々な登場人物と出会います。
そして彼らの起こす騒動に巻き込まれていくのです。
騒動の原因は基本彼らの身勝手な行動なのですが、読み進める中でそこに隠された葛藤が徐々に明らかになっていきます。
そして主人公はやがて光源氏とも深く関わっていき…

 

解釈は人それぞれ、本来の源氏物語のままでいいという方もいるでしょう。
それでもこの話を読み終わった時、千年超えるくらいじゃ変わらない、身勝手で必死な人間の姿がそこに浮かび上がってきます。

 

「おのれ光源氏!」
それが感想じゃ、「源氏物語」は勿体ない。
そう思わせてくれる作品です。ぜひ読んでみてください。

 

 

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『十二単衣を着た悪魔』

 

▼出版社
幻冬舎

 

▼書影画像元
版元ドットコム

 

※次回更新は2021年11月26日(金)の予定です