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#kclスタッフおすすめ本 『行った気になる世界遺産』

2022年3月4日(金)|投稿者:kclスタッフ

【 とにかく読んで欲しい本 】

『行った気になる世界遺産』
(鈴木 亮平/[著] ワニブックス 2020年刊)

 

本編冒頭にこんな言葉が書かれている。
「この旅行記は、フィクションです。」
著者は、世界遺産検定1級の持ち主でもある、俳優の鈴木亮平さん。
この『行った気になる世界遺産』は、鈴木亮平さんの“妄想”旅行記である。

 

この本では、30か所の世界遺産が紹介されている。遺跡の魅力はもちろん、その道中や現地の人とのふれあい、そしておいしそうなソウルフードの描写は、「本当に行っていないの?」と思うほどリアリティがあり、どんどん引き込まれる。
さらに、ダイナミックかつ繊細な遺跡の絵や挿絵も全て鈴木亮平さんが描かれたというから、驚きだ。
「フィクションだけど嘘はつきたくない」と徹底的に調べて書いたという、鈴木さんの誠実な人柄を感じる。

 

私が特に印象深かったのが、シリアの「パルミラ遺跡」だ。この遺跡は、シリアの内戦により、今は存在しない。
それでも鈴木さんは、現地の人の温かさ、遺跡の魅力をありありと描いている。
シリアの平穏が一日でも早く訪れることを私も願う。
何百年と残った遺跡も、いつ消滅してもおかしくないのだ。

 

首里城やノートルダム大聖堂の火災のニュースも大変ショックな出来事だった。
しかし、人々は歴史的な財産を復興させようと、奮起する。

 

その一つが、ポーランドの「ワルシャワ旧市街」である。
かつて「北のパリ」と呼ばれるほど美しかったその街は、ナチスドイツ軍の攻撃により瓦礫と化した。
復興はもはや不可能と言われたが、市民たちは残されたスケッチをもとに、破壊される前と寸分違わぬ街を見事に復元したのである。

 

世界遺産の歴史的背景やストーリーを知ることで、より一層遺跡の魅力を感じることができることを、この本が教えてくれた。

 

最後に、この旅行記が刊行されたのが、2020年の9月。
コロナ禍により、海外はもとより国内ですら、自由に行くことができなくなってしまい、その状況は今でも続いている。
こんな今だからこそ、ぜひこの“妄想”旅行記を読んでほしい。想像すれば、どこへでも、いつでも行けるのだ。

 

そしていつの日か、かけがえのない世界遺産を自分の目で見ることが私の夢である。

 

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『行った気になる世界遺産』

 

▼出版社
ワニブックス

 

▼書影画像元
版元ドットコム

 

※次回更新は2022年3月18日(金)の予定です

#kclスタッフおすすめ本 『くつしたどろぼう』

2022年2月18日(金)|投稿者:kclスタッフ

【 とにかく読んで欲しい本 】

『くつしたどろぼう』
(ゆうき/ぶん,もりの みさこ/え マイルスタッフ 2020年刊)

 

皆さんのお家では、お子さんのくつしたが、いつの間にか片方なくなってしまうことってありませんか?
どこを探しても見つからない。たしかにくつしたが両方あったはずなのに?いつなくったのだろうか・・・

 

本の表紙に描かれているのは、くつしたから覗くかわいらしい目ととんがった真っ赤なお鼻?
なんだろうと思い、本を手に取るとタイトルに「くつしたどろぼう」とある。
興味を惹かれ本をひらいてみると、今まで不思議に思っていたある謎の答えがそこには広がっていました。

 

この本に登場する“かれら”は家のすみにすんでいます。
人間にバレないよう、こっそり片方のくつしたを盗んでいきます。
本には今まで盗んだ片方のくつしたがたくさん描かれている場面があり、色とりどりでとても鮮やかです。

 

私は今も片方だけくつしたがないときがあります。
私の場合はただ単に失くしただけですが、子どもの時はもしかしたら、かれらに盗まれていたのかもしれません。

 

はたして“かれら”は片方のくつしただけ盗んでどうするのでしょう?ぜひ読んで確かめてください。

 

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『くつしたどろぼう』

 

▼出版社
マイルスタッフ

 

※次回更新は2022年3月4日(金)の予定です

#kclスタッフおすすめ本 『春にして君を離れ』

2022年2月4日(金)|投稿者:kclスタッフ

【 繰り返し読む本 】

『春にして君を離れ』
(アガサ・クリスティー/著,中村 妙子/訳 早川書房 1981年刊)

 

「ミステリーの女王」として有名なアガサ・クリスティー。
小説を読んだことが無い人でも名前や映画やドラマなどで知っている方も多いと思いますが、今回紹介させていただくこの小説は、ミステリーではなく、殺人も犯人も探偵も登場しません。

 

イギリスの中流階級の家庭の主婦、主人公のジョーンが結婚してバグダッドに暮らす末娘の急病のため、娘のもとへ向かい、鉄道や自動車でロンドンまで戻る途中に悪天候で足止めにあう。
持ってきた本も読みつくし、手紙を書こうにも便せんもなく、少し前に異国の鉄道宿泊所でばったり会って、短く言葉を交わした学生時代の友人の言葉から、ずんずん色々な出来事を振り返り、考えもしなかった事実が浮かび上がって来るという物語で、心理描写が読むものを惹きつける小説です。

 

また、時代背景は戦前で主にイギリスが舞台なのですが、働きすぎによるストレスや、支配する母親と娘の関係、転職して農場を経営したかった夫と妻の関係や不倫、使い込みの公金横領など、現代社会にも起きている出来事が登場します。

 

主人公のジョーンの心の中がほとんどの小説ですが、エピローグは夫の心の中が書かれており、ある意味、推理物の謎ときの答えになっており、怖い結末になっています。

 

1890年生まれのアガサ・クリスティーの小説を、児童文学も多数翻訳されている1923年生まれの中村妙子さんが訳されているので、時代が出ている日本語の文章ですが(例えば職業婦人という言葉など)そういった事を含めて時代を感じていただけたらと思います。

 

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『春にして君を離れ』

 

▼出版社
早川書房

 

※次回更新は2022年2月18日(金)の予定です

#kclスタッフおすすめ本 『無口になったアン夫人』

2022年1月21日(金)|投稿者:kclスタッフ

【 装丁が好きな本 】

『無口になったアン夫人』
(サキ/[著],中西 秀男/訳 国書刊行会 1988年刊)

 

書庫から出してもらい、はじめて手に取ったとき、異様な装丁に心を奪われました。

 

この本は、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの編纂した世界幻想文学全集「バベルの図書館」の30巻のうちの一冊です。収録されているのはメルヴィルやポー、カフカといった近代の著名な作家から、『聊斎志異』の蒲松齢、さらには千夜一夜物語まで、まさに世界文学の名にふさわしいシリーズとなっています。
各巻にはボルヘスによる序文が付されており、作家と作品の寸評が書かれています。

 

さて、本書の著者は短編の名手といわれるサキです。
あらゆるアンソロジーにその作品が収録されており、どこかで読んだことのある話もあるかもしれません。
ブラックユーモアに満ち、退廃的でゴシックな雰囲気のある、しかし軽快な13の掌編がこれでもかと続きます。

 

装丁は縦長の見慣れない判型に、暗い青色を基調にしたカバー。
表紙のタイトルや著者名は英語、シリーズ名はイタリア語で、出版社名は「Kokusho Kankokai editore」と書かれています。
原書はイタリアのフランコ・マリーア・リッチ社(Franco Maria Ricci)から出版され、日本版はその装丁を踏襲したもの。
うつくしい装丁とともにサキの描き出す世界観に浸ることができ、あらためて読書とは文字を読むだけでは成立しないのだと気づかされました。

 

「バベルの図書館」シリーズはいずれもうつくしく、また作品によって少しずつ趣が異なります。
残念ながら当館にはこのうち6冊しかありませんが、ぜひ実際に手に取っていただいてそれぞれの風合いをお楽しみください。

 

参考資料:『ボルヘスの世界』(渋沢 竜彦/ほか著 国書刊行会 2000年刊)

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『無口になったアン夫人』(バベルの図書館 2)
『人面の大岩』
(バベルの図書館 3)
『盗まれた手紙』
(バベルの図書館 11)
『悪魔の恋』
(バベルの図書館 19)
『輝く金字塔』
(バベルの図書館 21)
『パラケルススの薔薇』
(バベルの図書館 22)

 

▼出版社
国書刊行会

 

 

※次回更新は2022年02月04日(金)の予定です

#kclスタッフおすすめ本 『こいぬがうまれるよ』

2022年1月14日(金)|投稿者:kclスタッフ

【 繰り返し読む本 】

『こいぬがうまれるよ』
(ジョアンナ・コール/文,ジェローム・ウェクスラー/写真,つぼい いくみ/訳 福音館書店 1982年刊)

 

皆さんは、動物は好きですか?犬や猫などのペットは飼っていますか?

 

子どもの頃、私は動物、特に犬が大好きでした。当時、週末や長期休暇になると、犬や猫がいる祖母の家に泊まりに行くことが楽しみで仕方がなかった記憶があります。

 

そんな私が幼稚園の頃からずっと繰り返して読んでいる本が、今回紹介する『こいぬがうまれるよ』という写真絵本です。
約40年前に出版された絵本なので、一度は読んだことがある方もいるかもしれません。
児童書でよく見かける、カラフルで、かわいいイラストの絵本ではなく、白い表紙にセピア色の子犬の実写、そして黒字のタイトル…
今思えば、写真絵本とはいえ、子ども向けにしては随分シックな感じだと思います。
それでも、セピア色の写真の子犬1匹が愛くるしい目でこちらを向いている表紙に私はそそられました。

 

ページをめくると、
「いいことおしえてあげようか?」
と問いかけられ、「え?なに?なに?」と好奇心でページをめくりたくなります。
当時の自分と同じくらいの女の子の目線で、親犬の出産から、生まれた子犬1匹を引き取って飼うまでを写真と文で追いかけていきます。

 

地面につきそうなくらい大きなお腹の母犬が陣痛と出産で苦しんでいる姿…
生まれた子犬たちが日に日に成長していく姿…

 

子どもの頃は、子犬の愛くるしさ、主人公の女の子目線で読んでいましたが、大人になってからは、主人公の女の子目線ではなく、母犬に対してのいろいろな思いが強くなります。無償の愛で母犬が子犬たちを育てていく姿を見て、私を産んでくれた母親のことを思い出すと共に、感謝の気持ちが溢れてきます。

 

「あぁ、最近、お母さんと話していないなぁ…」
「オカン、いちいちうるさいなぁ…」
こんなこと、思った方はぜひ…

 

命の大切さを知るとともに、母親への感謝の気持ちが溢れる絵本です。

 

!ご注意!
児童向け絵本とはいえ、生まれた瞬間の写真もありますので、苦手な方はご注意ください。

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『こいぬがうまれるよ』(1982年刊)
『こいぬがうまれるよ』(2000年刊)

 

▼出版社
福音館書店

 

※次回更新は2022年1月21日(金)の予定です

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