おすすめ本カテゴリの記事一覧
#kclスタッフおすすめ本 『司書が書く図書館員のおすすめ本』
2022年5月20日(金)|投稿者:kclスタッフ
【 とにかく読んでほしい本 】
『司書が書く図書館員のおすすめ本』
(日本図書館協会図書紹介事業委員会/編 日本図書館協会 2021)
2021年6月18日より始まりました、#kclスタッフおすすめ本。
およそ1年間に渡り、今回の1冊を含めて合計30冊の本をご紹介してまいりました。
みなさまと本との出会いのキッカケとなっていれば幸いです。
ご紹介した30冊は、こちらからご覧いただけます。(PDFファイルで開きます)
常日頃から本に触れ、文字に親しむ図書館スタッフが厳選しておすめした#kclスタッフおすすめ本ですが、その「図書館員が本を紹介する」という事自体をテーマに書かれた本があります。
それが、今回ご紹介する『司書が書く図書館員のおすすめ本』です。
この本は、日本図書館協会図書紹介事業委員会が、『図書館雑誌』(2016年10月~2019年2月号)に掲載された全国の司書による書評101点を収録し、書評集としてまとめたものです。
「司書は、書評の書き手としてまだまだ認知されていないのが現状です。」
と、はじめに記載がある通り、「本を紹介する」人として司書を思い浮かべる人は、中々少ないのではないでしょうか。
この本は、司書が書評を書く意味自体に触れ、現在の図書館の選書や蔵書構成の問題についても考えさせられます。
司書の書評だけでなく、その書評を読んだ出版人、書店員、研究者の方々による評価も掲載されています。
どんな時に、どんな人の事を思い本を選んだのか。
その司書の思いを読み取り、想像し、書評を評価する。
ただ「おすすめ本」が掲載されているだけでなく、書評をどう書くのかを知る事も出来ます。
内容が少し難しく感じるかもしれませんが、図書館員だけでなく、本を愛する全ての人に読んでいただきたい一冊です。
来月からも、#kclスタッフおすすめ本はテーマを新たにして続きます。
今後の展開をご期待ください。
▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『司書が書く図書館員のおすすめ本』
▼出版社
日本図書館協会
▼書影画像元
版元ドットコム
#kclスタッフおすすめ本 『今日は誰にも愛されたかった』
2022年5月6日(金)|投稿者:kclスタッフ
【 とにかく読んでほしい本 】
『今日は誰にも愛されたかった』
(谷川 俊太郎/[著],岡野 大嗣/[著],木下 龍也/[著] ナナロク社 2019年刊)
この本には、詩人と歌人による詩と短歌の「連詩」と、本人たちによる「感想戦」が収録されています。
「連詩」とは、複数の詩人が同じ場に集い数行の詩を交互に書き連ねていくものですが、この本では、詩人と歌人がそれぞれ別の場で一編一首に三日をかけて制作しています。
詩人は谷川俊太郎(たにかわ しゅんたろう)さん、歌人は岡野大嗣(おかの だいじ)さんと木下龍也(きのした たつや)さん。やりとりはLINEで行われました。
岡野さんからスタートし、谷川さん→木下さん→谷川さん→岡野さんに戻るという形で進んでいきます。
「受け取った三日後にはバトンを渡す」というルールで、四ヶ月かけてできあがりました。
この順番でわかるとおり、岡野さんと木下さんの間に必ず谷川さんを挟んでいるので、全三十六作品の内、谷川さんが十八編、岡野さんと木下さんがそれぞれ九首を制作しています。
その後、谷川邸で「感想戦」が繰り広げられました。
受け取った作品をどう読み、どのように創作したのか。「感想戦」は三人の話を横で聞いているような気分で読みました。
谷川さんの詩に突如登場する「市川」なる人物に対して、岡野さん、木下さんが「市川」って誰だ? となるところでは、思わず、「そうそう、誰?」とあいづちを打ちました。
本の構成は、最初に、一ページ一作品で作者名の入った「連詩」があり、「感想戦」をはさんで、最後にもう一度、作者名をのぞいた「連詩」が掲載されています。
初めの「連詩」はあくまでそれぞれが独立した作品にみえるのですが、後の「連詩」は不思議、これはもう一つの作品、一編の詩です。最初に、後の「連詩」を読めば、「連詩」であることに気づかないかもしれません。
親子ほど年齢差のある谷川さんと岡野さん、木下さんが、お互いの詩や短歌についてとても楽しそうに話しています。
あとがきで谷川さんが書いているように、「我々三人が年齢は違っても、コトバといちゃつくことに眉をひそめたりはしない人種だから」こそできたことなのでしょう。
ぜひ、詩と短歌による、ちょっと不思議な「連詩」の世界をお楽しみください。
▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『今日は誰にも愛されたかった』
▼出版社
ナナロク社
▼書影画像元
版元ドットコム
※次回更新は2022年5月20日(金)の予定です
#kclスタッフおすすめ本 『ゴーストハント』
2022年4月15日(金)|投稿者:kclスタッフ
【 繰り返し読む本 】
『ゴーストハント1 旧校舎怪談』
(小野 不由美/著 KADOKAWA 2010年刊)
みなさんには繰り返し読みたくなる本はありますか?
今回紹介させていただくのは、夏になると読みたくなる小野不由美さん作の『ゴーストハント』です。
初版は絶版になっていたのですが、2010年に大幅な改稿の上、全7巻で刊行。ようやく読むことができた作品です。
主人公谷山麻衣の通う高校には、木造の旧校舎があります。
この校舎はすでに使われていないのですが、取り壊そうとしてもそのたびに事故が起きます。
旧校舎には、霊が取り憑いている。
その霊が、旧校舎を取り壊そうとする人を呪っている……
と、生徒の間では噂になっていました。
この事態の究明に雇われたのが、霊能者たち。渋谷サイキックリサーチ、通称SPR。
ひょんなことから彼らとかかわりを持った麻衣は、所長ナルの手伝いを始めます。
お坊さん、巫女、エクソシスト、テレビでも有名な霊媒少女……
次々現れる個性豊かなメンバーたちと関係を深めていきます。
そんな麻衣たちを待ち受けるのは、霊能者にも説明できない怪奇現象。
それほどまでに、旧校舎には恐ろしいものが取り憑いているのでしょうか?
主人公麻衣は、霊能者であれば当然知っていることを知りません。
作者は、麻衣の目線で説明をしてくれているので、霊についての知識がない読者も読みやすいと思います。
会話のやり取りや次第に深まっていく信頼と関係性も読んでいて楽しく、女子高生麻衣の成長には目を見張るものがあります。
異なる立ち位置の霊能力者だからこそ見えるものや知識、考え方があります。
それぞれの立場から意見を言い合い、時には対立し新たな発想を得るという場面はとても楽しく感じました。
結末はぜひ、読んでみてください。
怖いもの見たさで、お手に取っていただければ幸いです。
▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『ゴーストハント 1 旧校舎怪談』
『ゴーストハント 2 人形の檻』
『ゴーストハント 3 乙女ノ祈リ』
『ゴーストハント 4 死霊遊戯』
『ゴーストハント 5 鮮血の迷宮』
『ゴーストハント 6 海からくるもの』
『ゴーストハント 7 扉を開けて』
▼出版社
KADOKAWA
※次回更新は2022年5月6日(金)の予定です
#kclスタッフおすすめ本 『仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ』
2022年4月1日(金)|投稿者:kclスタッフ
【 とにかく読んでほしい本 】
『仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ』
(川上 徹也/著 ポプラ社 2020年刊)
この本に登場する小林書店は兵庫県尼崎市に実在する書店で、その店主・小林由美子さんをモデルにした小説です。出版社と書店をつなぐ「出版取次会社」の新人営業社員となった主人公の大森理香が、小林さんと出逢い成長していく物語です。
ちょっと珍しいのは、主人公の成長物語(ノベル)と小林さんのエピソード(ノンフィクション)を組み合わせた「ノンフィクション&ノベル」ともいえる形式であるところです。
語られる小林さんの言葉は、いつも主人公を元気づけます。そして彼女の仕事に対する向き合い方が変わって、大きな仕事を任されるまでになります。
書店の仕事での話ですが、全ての業種に共通するような「仕事の基本」ともいえることが盛り込まれていて、自己啓発本を読むように、ためになりました。
私はこの本を読んでから、仕事から帰ったときにはどんなに疲れていてもまずは「疲れた~」と言わずに、「お留守番ありがとう。おかげで楽しく仕事頑張れたよ」と家族に感謝の気持ちを伝えるようになりました。
小林さんの仕事と人との関わりを大事にする姿勢は素敵だと思いましたし、どの人にも自分に当てはめて、はっとする気づきが得られる本なのではないかなと思います。
ぜひ一度、皆さんにも読んでもらいたい本です。
そして、この本の中で由美子さんが主人公に読むのを薦める『百年文庫』というシリーズもおすすめです。
『百年文庫 1 憧』
(ポプラ社 2010年刊)
一冊ごとに漢字一文字でテーマを決め、日本と海外を分け隔てることなく短編3篇を集めたアンソロジーです。
百冊あって、色々な作家の作品に触れられるのが良いところです。
好きな作家さんの意外な一面を知ることが出来たり、新しくお気に入りの作家さんが見つかるかもしれません。
▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ』
『百年文庫 1 憧』
▼出版社
▼書影画像元
※次回更新は2022年4月15日(金)の予定です
#kclスタッフおすすめ本 『はじまりの日』
2022年3月18日(金)|投稿者:kclスタッフ
【 繰り返し読む本 】
『はじまりの日』
(ボブ・ディラン/作,ポール・ロジャース/絵,アーサー・ビナード/訳 岩崎書店 2010年刊)
“Forever Young”を日本語に訳するならば、何と訳しますか?
英語が苦手な私は「永遠に若く」と、ただ単語を直訳してしまうのですが、訳者のアーサー・ビナードはとても面白い訳をつけました。
それが、この絵本のタイトル『はじまりの日』です。
『はじまりの日』は、ミュージシャンのボブ・ディランが1974年に発表した楽曲「Forever Young」を基にしています。
「Forever Young」はディランが自身の息子に対して“自然に沸いた想い”を曲にしたものです。
ディランのファンであった私は、図書館で彼の名前が記されたこの本を見つけた時「『はじまりの日』なんて曲あったかなぁ」と不思議に思いながら本を開き、その訳の面白さに心を奪われました。
なぜ、「Forever Young」が「はじまりの日」と訳されたのか。
それは、ディランと同じく英語を母国語とし、日本の文化や言語に触れながら生活するビナード氏だからこそ生まれた訳だと思います。
『日本語ぽこりぽこり』
(アーサー・ビナード/著 小学館 2005年刊)
ビナード氏の著書『日本語ぽこりぽこり』では、ビナード氏自身が出会った“英語と日本語の差異”について記されています。
その一部を以下に抜粋します。
英語にはBless youという慣用句があって(God bless youの短縮形)、だれかがくしゃみをしたら、周りの人が必ずいってあげる言葉。
直訳すれば「神の加護があなたにありますように」になるが、(中略)身を守るために発したマジナイだ。
喫茶店で打ち合わせをしていて、相手の大くしゃみで話が途切れたとしても、英語ならこっちが反射的にBless youといえば、まるで何もなかったかのように、自然と話がつながって進んでいく。
しかし日本語では、そうすんなりとはいかない。(中略)やはりイマイチしっくりこない。
抜粋した箇所にある“God bless you”は、実は楽曲「Forever Young」にも登場します。
『はじまりの日』を読んだ後、ビナード氏に興味を持った私は『日本語ぽこりぽこり』で上記の箇所を見つけた際、「あの訳を思いついた時、しっくりきたんだろうなぁ」と思わず笑ってしまいました。
ビナード氏の訳に惚れ込んだ『はじまりの日』ではありますが、ポール・ロジャースの絵がまた曲の良さを引き立てています。
ディランの楽曲を愛する人であれば、「おや」と思う仕掛けがたくさん散りばめられた、とても素敵な絵です。
楽曲を聴けばこの絵本が読みたくなり、絵本を読めば楽曲が聴きたくなる。
何度も繰り返し触れてしまう、そんな魅力ある、大好きな作品です。
ちなみに、楽曲はこちらのアルバムに収録されています。
ぜひ、絵本と共に手に取ってみてください。
(ボブ・ディラン/演奏 Sony Music Labels 2016.12 「いつまでも若く」)
▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『はじまりの日』
『日本語ぽこりぽこり』
▼書影画像元
版元ドットコム (『日本語ぽこりぽこり』)
※次回更新は2022年4月1日(金)の予定です