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KCLスタッフブログ ~ブックとラック~

2022年6月17日(金)AM12:00|投稿者:KCLスタッフ

#kclスタッフおすすめ本 『13歳からの地政学』

【 社会を考える 】

『13歳からの地政学』
(田中 孝幸/著 東洋経済新報社 2022年刊)

 

ウクライナの人がインタビューを受けているニュースを見ていました。
その内容は胸にせまるものがありましたが、一方でヨーロッパの人は本当に英語が堪能だな、普通に話せるのだな、と感心しました。
日本人が街中で外国人記者からインタビューを受けて、ほとんどの人が英語で回答できるのだろうか?と。

 

そんなことを思っていた時に出会った本を紹介したいと思います。
本のタイトルにもある「地政学」
辞書を引いてみると「地理的な条件とその国の外交・軍事政策の関係を研究する学問」『三省堂国語辞典』より)とあります。
「13歳からの」とついているので、分かりやすい解説書かなと思い、読み始めました。
しかし、単なる解説書ではなく物語形式になっており、その物語を通して世界情勢全体を理解しようという本だったのです。

 

高校1年の大樹とその妹の中学1年の杏。
夏休みの前日、2人はアンティークショップで古い地球儀を見つけます。
そして店主(通称カイゾク)から「7回この店に来て、わしの話を聞き、最終日に出す問題に答えられたら地球儀をあげよう」と持ち掛けられます。
価格が「時価」となっているその地球儀はかなりの年代物で、4本の支柱に囲まれた立派な作り。
到底、中高生に買える品物ではないため最初は警戒する大樹ですが、予習の必要ナシ、地球儀を使って世界がどう動いているのか一緒に考えようと言われ、2人で挑戦することに。
カイゾクは地球儀を使い、身近な題材を例にとりながら、分かりやすく解説していきます。

 

「世界中の貿易の9割以上が海を使用しているのは何故か」
「大国の苦しい事情って何?」
「核兵器保有国はどこに隠しているの?」等々。

 

そこには最初の私の疑問だった「ヨーロッパの人々が母国語でない英語を普通に使える理由」も書かれていました。
なるほど!と思った私ですが、この本の主人公である兄妹も、驚いたり、納得したり、さらに好奇心が湧いて、いつしか真剣に世界のこと人々のことを考え始めます。

 

難しい世界情勢を解説しているだけでなく、カイゾクと2人の兄妹の物語でもあるので、ついつい先が気になって読み進めることができます。
解説書としても物語としても楽しめます。
ただのアンティークショップの店主とは思えないカイゾクの正体とは?
そして2人は最後の問題をどう解くのでしょうか。

 

皆さんも是非その答えを読んで確かめて下さい。そして、世界のしくみを改めて考えてみませんか。

 

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます

『13歳からの地政学』

 

▼出版社

三省堂

 

▼書影画像元

版元ドットコム

 

 

※次回更新は2022年7月1日(金)の予定です

2022年6月3日(金)AM12:00|投稿者:KCLスタッフ

#kclスタッフおすすめ本 『どうぶつのおやこ』

【 気軽に読む本 】

 

『どうぶつのおやこ』
(薮内 正幸/画 福音館書店 1966年刊)

 

「字のない絵本」
いくつか出版されているのを知ってはいたが、私はそれをあまり選んでこなかった。
子どもが生まれ、夜に絵本を読むようになっても、私は短いストーリーのあるものや言葉の響きが楽しいものを好んで読んでいた。
二人目の出産後、健診に行くとブックスタートとして、『どうぶつのおやこ』をもらった。
渡される時に「この本は絵だけなので、自由に読んであげてね」と言われ、その時は「へー」と思ったくらいで深くは考えなかった。

 

その後、娘(第一子)がその絵本を見つけ、「読んで読んで」とねだる。よしよしと思い、読み始める。
表紙を見せ、「どうぶつのおやこ」ページをめくり…「うさぎがいるね~」、ページをめくり…「………」なかなか言葉が出てこない。
このやさしい感じのどうぶつの絵をみるだけでも楽しいなと思い、ペラペラとめくるが、娘が「おはなしは?」と要求する。悩みつつも適当にストーリーを考えて読み進める。

 

それも単調になり、もう限界と思った頃に、娘が自分で息子(第二子)に「読んであげる」と言い出した。
私は内心、(いいよいいよ、やってみな。難しいんだから。)と思っていた。
すると、娘は私のマネをし、表紙を見せ、「どうぶつのおやこ!」と始めた。
ひらがなが読めるようになった頃で表紙にだけある唯一の文字をどうどうと読んだ。
ひらがなが読めるようになったから、読みたいと言い出したのだろうと思いながらも、お手並み拝見。

 

ページをめくっても娘の読み聞かせはとまらない。
どうぶつのおやこが人間の親子のように会話をしており、会話が一段落すると次のページに進む。
「うまい!やるな。」と思い最後まで読んでもらった。
読後、とても上手だったし、面白かったと娘に伝え、その夜の絵本の時間は終了した。

 

自分がうまくできなかった悔しさを感じつつ、
「どうぶつの会話だけで話を成り立たせてたな。無理にストーリーを考えなくていいのかぁ。どうぶつ以外の絵(背景など)が何もないから、「〇〇へ行った」とか「△△をした」というストーリーが全然浮かばなかったもんなぁ。自分にも子どもの頃は想像力がいっぱいあったはずなのに。もう、そういう力もなくなってきてしまったんだな」と悲しく思った。

 

その後も、子どもたちは「どうぶつのおやこ」が好きなようで、何度も読んだ。
それからは、そんなに思い込まず、気軽に読むようにしている。
適当に読む方が思ってもみなかった面白い展開になり、私も楽しく読めるようになった。

 

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます

『どうぶつのおやこ』

 

▼出版社/書影画像元

福音館書店

 

 

※次回更新は2022年6月17日(金)の予定です

2022年6月2日(木)AM9:00|投稿者:KCLスタッフ

夏休みの厄介者

こんにちは。ばんこです。

ジメジメとした季節がやってきました。しかし、この季節が終わる頃には、夏休みです。

 

さて、夏休みと言えば、やはり、「自由研究」(桑名では「調べる学習」)ではないでしょうか?
これが休みの最後まで、どっしりと残っていると、なかなか夏休みを楽しめない…
この気持ちは、もしかしたら子どもたちよりも、保護者の方が共感していただけるかもしれません。

 

ということで、今回は、「自由研究」=「調べる学習」についての本を、いろいろご紹介したいと思います。
夏休みの自由研究に、自分自身の国を作ってしまった男の子の絵本があります。

ウエズレーの国
ポール・フライシュマン/作,ケビン・ホークス/絵,千葉 茂樹/訳
あすなろ書房 1999.6

 

いじめられっ子で、家族とも上手くいっていないウエズレー少年は、夏休みに自分だけの国を作る事にしました。
植物を育て、住むところ、服、食べ物、遊びまで、必要なものは何でも自分で作り上げていきます。
仕上げにはなんと文字までつくって、ウエズレーの国の歴史書を書いてしまいます。
近所の友達は、夏休み中、なんだか楽しそうなウェズレーに興味津々。
しょうがないから、少しお手伝いをさせてあげたりもします。
さて、夏休みが終わるころ、ひとりぼっちだったウェズレーには、どんな変化が
起きているのでしょうか?
とても楽しい自由研究のお話です。

 

何を研究するか?テーマを決めることもなかなか難しいです。
やってみたい事と、内容が年齢に合わず、どうやって調べよう?どうやってまとめよう?等…
ウェズレーのような自由研究は、なかなかハードルが高いですが、
まずは、ちょっとした疑問に目を向けてみてはいかがでしょうか?

NHKカガクノミカタ 自分だけの「フシギ」、見つけよう,小学生・中学生の「問い」をたてる力を育てる! 1 観察してみよう
NHK「カガクノミカタ」制作班/編,ヨシタケシンスケ/絵 NHK出版 2019.8

 

ヨシタケシンスケさんの絵が非常に目を引くこの本は、教育番組を書籍化したものです。
一つの不思議から、予想をたて、次の不思議へと探っていく過程を紹介しています。
シリーズは3冊あり、取り上げられているテーマが面白いです。
テーマを見つけるきっかけにしてみてはどうでしょうか?
後半には、研究のまとめ方も、簡単にのっています。
まずは、気になる不思議を探してみてください。

 

NHKカガクノミカタ 自分だけの「フシギ」、見つけよう,小学生・中学生の「問い」をたてる力を育てる! 2 予想してみよう
NHK「カガクノミカタ」制作班/編,ヨシタケシンスケ/絵 NHK出版 2019.8

 

NHKカガクノミカタ 自分だけの「フシギ」、見つけよう,小学生・中学生の「問い」をたてる力を育てる! 3 実験してみよう
NHK「カガクノミカタ」制作班/編,ヨシタケシンスケ/絵 NHK出版 2019.8

 

気になる不思議を見つけたら、それが、もしかしたらものすごい発明につながるかもしれません。

ややっ、ひらめいた!奇想天外発明百科
マウゴジャタ・ミチェルスカ/文,アレクサンドラ・ミジェリンスカ/絵,
ダニエル・ミジェリンスキ/絵,阿部 優子/訳 徳間書店 2016.2

 

大昔から現代までの、非常におもしろい発明の成功作・失敗作を集め、ユニークなイラストで紹介しています。
古代の神殿の自動ドアから、3Dプリンターでつくる月面基地まで、突っ込みどころ満載ですが、なぜそうなる?と、他人の思考をちょっとのぞいてみるのも楽しいものです。

 

さて、実際に自由研究をやってみよう!…となると、家にあるもので出来ないかなぁ~とか、短時間で終わらないかなぁ~とか…希望はいろいろ出てくると思います。
そこで、子供が楽しめ、お腹もいっぱいになり、宿題も終わるそんな一石三鳥な本です。

ふしぎ!理科実験スイーツ おいしい自由研究
WILLこども知育研究所/編著,ダンノマリコ/料理,尾嶋 好美/科学監修 金の星社 2021.6

 

この本のなによりうれしいところは、家にあるモノで手軽に出来るところ。
わざわざ薬局や、ホームセンターで買ってきて準備するものが(ほとんど)ない!←この準備が面倒くさい…
実験→予想→結果→わかったこと の順番でのっているので、この通りに書いていけば、まとめまで、出来てしまいます。(まとめかたの例ものっています。)
保護者にとっても、夏休みの「お昼ごはん」と「おやつ」は、重大案件なので、自分でつくってくれるのであれば、非常に助かります…

そして、作るのが楽しい!と思ってもらえたら、ちょっと変わったスイーツを作る本があります。

古典がおいしい!平安時代のスイーツ
前川 佳代/著,宍戸 香美/著 かもがわ出版 2021.9

 

平安時代の古典に出てくるスイーツレシピの本です。枕草子の「けずり氷」、源氏物語の「椿餅」等…
現代風の材料に置き換えてはありますが、平安時代の雰囲気を味わってみてはいかがでしょうか?
簡単な作者の紹介や、作品の内容なども載っています。
これをきっかけに、読書感想文に、古典作品を読んでみよう!
なんていうことになるかも?しれません。

 

調べるのは良いけど、やっぱりまとめ方がよくわからない…自由研究の際、一番悩むポイントではないかと思います。
賞をとった人の研究を、がっつりと見てみたい方におススメするのが、第22回「図書館を使った調べる学習コンクール」の小学生部門で、「文部科学大臣賞」を受賞した作品を書籍化したものです。

桃太郎は盗人なのか? 「桃太郎」から考える鬼の正体
倉持 よつば/著 新日本出版社 2019.9

 

作者の倉持よつばさんは、この作品のために、200冊以上の本を読み、いろいろな鬼に関係する場所に出かけ、専門家の話を聞き、作家さんの講演会に参加し…
とにかく調べる事に対する熱量がすごい!
調べようと思ったきっかけは、『空からのぞいた桃太郎』という一冊の絵本だったそうです。

空からのぞいた桃太郎
影山 徹/著 岩崎書店 2017.9

 

絵本から、調べたい事を見つけ、それを実行する、本人も素晴らしいですが、周りの大人の方々の協力も素晴らしいなぁと思います。
中央図書館には、第17回「桑名市図書館を使った調べる学習コンクール」の上位入賞作品のレプリカが展示してあります。そちらも是非参考にして見てください。

 

 

自由研究ではないですが、夏休みの宿題によくある工作。
学校の授業でも、最近はキットが多いなぁ~と個人的に思います。

ノマはちいさなはつめいか
ヒョン ドク/文,チョウ ミエ/絵,かみや にじ/訳 講談社 2010.5

 

小さなノマが、段ボールで汽車を作る それだけのお話なのですが、自分の作りたいものを考え、材料をそろえるところから始めて、試行錯誤し、何かを作ることって、最近あったかな?
と考えてしまいました。
なんでもお店でそろう時代です。
今どきではない事も、忙しい保護者の面倒くささもわかっていますが、この本を読むと、自分で考える事は大事だなぁと思います。

 

子どもたちが、新しい事をはじめる時によく言っていたのが、「失敗したら恥ずかしい」です。
でも、自由研究は『失敗』しないと良いものが出来ません。
予想通りの結果に終わってしまったら、そこで終わり。
予想と結果が違う事を『失敗』とするのなら、どんどん『失敗』したら、どんどん研究が進みます。
「『失敗』してもいいんだよ」と教える絶好の機会!かもしれません。
ぜひ、今年の夏休み、親子でも、自由研究に挑戦してみてはいかかでしょうか?
「図書館を使った調べる学習コンクール」には親子の部もあります。)

 

参考図書

ウエズレーの国』ポール・フライシュマン/作,ケビン・ホークス/絵,千葉 茂樹/訳 あすなろ書房 1999.6
NHKカガクノミカタ 自分だけの「フシギ」、見つけよう,小学生・中学生の「問い」をたてる力を育てる! 1 観察してみよう』NHK「カガクノミカタ」制作班/編,ヨシタケシンスケ/絵 NHK出版 2019.8
NHKカガクノミカタ 自分だけの「フシギ」、見つけよう,小学生・中学生の「問い」をたてる力を育てる! 2 予想してみよう』NHK「カガクノミカタ」制作班/編,ヨシタケシンスケ/絵 NHK出版 2019.8
NHKカガクノミカタ 自分だけの「フシギ」、見つけよう,小学生・中学生の「問い」をたてる力を育てる! 3 実験してみよう』NHK「カガクノミカタ」制作班/編,ヨシタケシンスケ/絵 NHK出版 2019.8
ややっ、ひらめいた!奇想天外発明百科』マウゴジャタ・ミチェルスカ/文,アレクサンドラ・ミジェリンスカ/絵,
ダニエル・ミジェリンスキ/絵,阿部 優子/訳 徳間書店 2016.2
ふしぎ!理科実験スイーツ おいしい自由研究』WILLこども知育研究所/編著,ダンノマリコ/料理,尾嶋 好美/科学監修 金の星社 2021.6
古典がおいしい!平安時代のスイーツ』前川 佳代/著,宍戸 香美/著 かもがわ出版 2021.9
桃太郎は盗人なのか? 「桃太郎」から考える鬼の正体』倉持 よつば/著 新日本出版社 2019.9
ノマはちいさなはつめいか』ヒョン ドク/文,チョウ ミエ/絵,かみや にじ/訳 講談社 2010.5

 

 

 

 

 

 

2022年5月20日(金)AM9:00|投稿者:KCLスタッフ

#kclスタッフおすすめ本 『司書が書く図書館員のおすすめ本』

【 とにかく読んでほしい本 】

『司書が書く図書館員のおすすめ本』
(日本図書館協会図書紹介事業委員会/編 日本図書館協会 2021)

 

2021年6月18日より始まりました、#kclスタッフおすすめ本
およそ1年間に渡り、今回の1冊を含めて合計30冊の本をご紹介してまいりました。
みなさまと本との出会いのキッカケとなっていれば幸いです。

 

ご紹介した30冊は、こちらからご覧いただけます。(PDFファイルで開きます)

 

常日頃から本に触れ、文字に親しむ図書館スタッフが厳選しておすめした#kclスタッフおすすめ本ですが、その「図書館員が本を紹介する」という事自体をテーマに書かれた本があります。
それが、今回ご紹介する『司書が書く図書館員のおすすめ本』です。

 

この本は、日本図書館協会図書紹介事業委員会が、『図書館雑誌』(2016年10月~2019年2月号)に掲載された全国の司書による書評101点を収録し、書評集としてまとめたものです。
「司書は、書評の書き手としてまだまだ認知されていないのが現状です。」
と、はじめに記載がある通り、「本を紹介する」人として司書を思い浮かべる人は、中々少ないのではないでしょうか。
この本は、司書が書評を書く意味自体に触れ、現在の図書館の選書や蔵書構成の問題についても考えさせられます。

 

司書の書評だけでなく、その書評を読んだ出版人、書店員、研究者の方々による評価も掲載されています。
どんな時に、どんな人の事を思い本を選んだのか。
その司書の思いを読み取り、想像し、書評を評価する。
ただ「おすすめ本」が掲載されているだけでなく、書評をどう書くのかを知る事も出来ます。

 

内容が少し難しく感じるかもしれませんが、図書館員だけでなく、本を愛する全ての人に読んでいただきたい一冊です。

 

 

来月からも、#kclスタッフおすすめ本はテーマを新たにして続きます。
今後の展開をご期待ください。

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『司書が書く図書館員のおすすめ本』

『図書館雑誌 2016-10」

 

▼出版社
日本図書館協会

 

▼書影画像元
版元ドットコム

 

2022年5月6日(金)AM9:00|投稿者:KCLスタッフ

#kclスタッフおすすめ本  『今日は誰にも愛されたかった』

【 とにかく読んでほしい本 】

『今日は誰にも愛されたかった』
(谷川 俊太郎/[著],岡野 大嗣/[著],木下 龍也/[著] ナナロク社 2019年刊)

 

 

この本には、詩人と歌人による詩と短歌の「連詩」と、本人たちによる「感想戦」が収録されています。
「連詩」とは、複数の詩人が同じ場に集い数行の詩を交互に書き連ねていくものですが、この本では、詩人と歌人がそれぞれ別の場で一編一首に三日をかけて制作しています。

 

詩人は谷川俊太郎(たにかわ しゅんたろう)さん、歌人は岡野大嗣(おかの だいじ)さんと木下龍也(きのした たつや)さん。やりとりはLINEで行われました。
岡野さんからスタートし、谷川さん→木下さん→谷川さん→岡野さんに戻るという形で進んでいきます。
「受け取った三日後にはバトンを渡す」というルールで、四ヶ月かけてできあがりました。
この順番でわかるとおり、岡野さんと木下さんの間に必ず谷川さんを挟んでいるので、全三十六作品の内、谷川さんが十八編、岡野さんと木下さんがそれぞれ九首を制作しています。

 

その後、谷川邸で「感想戦」が繰り広げられました。
受け取った作品をどう読み、どのように創作したのか。「感想戦」は三人の話を横で聞いているような気分で読みました。
谷川さんの詩に突如登場する「市川」なる人物に対して、岡野さん、木下さんが「市川」って誰だ? となるところでは、思わず、「そうそう、誰?」とあいづちを打ちました。

 

本の構成は、最初に、一ページ一作品で作者名の入った「連詩」があり、「感想戦」をはさんで、最後にもう一度、作者名をのぞいた「連詩」が掲載されています。
初めの「連詩」はあくまでそれぞれが独立した作品にみえるのですが、後の「連詩」は不思議、これはもう一つの作品、一編の詩です。最初に、後の「連詩」を読めば、「連詩」であることに気づかないかもしれません。

 

親子ほど年齢差のある谷川さんと岡野さん、木下さんが、お互いの詩や短歌についてとても楽しそうに話しています。
あとがきで谷川さんが書いているように、「我々三人が年齢は違っても、コトバといちゃつくことに眉をひそめたりはしない人種だから」こそできたことなのでしょう。

 

ぜひ、詩と短歌による、ちょっと不思議な「連詩」の世界をお楽しみください。

 

 

▼本の貸出状況は、こちらから確認いただけます
『今日は誰にも愛されたかった』

 

▼出版社
ナナロク社

 

▼書影画像元
版元ドットコム

 

※次回更新は2022年5月20日(金)の予定です