「歴史の蔵」へようこそ
2021年11月1日(月)|投稿者:kclスタッフ
こんにちは、「志るべ」です。
みなさまいかがお過ごしでしょうか。
秋も深まり、旅に出るのに絶好の季節となってまいりました。
けれど、まだまだ心配な新型コロナウイルス。
なかなか遠くに行けない今、地元桑名をみつめ直してみてはいかがでしょうか?
そんな時にご利用いただきたいのが当館4階の「歴史の蔵」です。
今回は「歴史の蔵」をご案内したいと思います。
3階から見上げると、あの桑名の連鶴(「桑名の千羽鶴」)が見えるのをご存じでしょうか?
連鶴の奥に見えるガラスの部屋が「歴史の蔵」です。
中央の階段を上がっていただくと、正面に見えます。
こちらが「歴史の蔵」の入口です。
「歴史の蔵」には、桑名を中心に三重県に関する資料が収められています。
扉の隣に描かれている絵図は、江戸時代の桑名城下を描いた「文政年間桑名市街之図」(桑名市博物館蔵)
文政6年(1823)の移封(大名の配置替え)の時、桑名藩によって描かれた絵図で、御城とその周辺に住む藩士の家がわかる、いわば住宅地図のようなものです。
『徳川四天王の城-桑名城絵図展-』(桑名市博物館 2016.3 p54,解説p125)、『目でみる桑名の江戸時代』(桑名市立文化美術館/編集 桑名市教育委員会 1983.12 p12-13)に掲載されています。
桑名市立中央図書館では、同様の絵図「桑名藩城下図 文政8年(明治45年写)」(『桑名藩史料集成 付図』桑名市教育委員会 1990.10所収)をご覧いただくことができます。
「歴史の蔵」には数々の貴重な資料が収められています。そのため、入室には利用申込書の記入をお願いしています。
また手荷物はロッカーへお預けください(100円は後で戻ります)
室内に持ち込めるのは筆記用具(鉛筆)と貴重品のみとなります。
万一資料にペンが触れた場合、インクは消すことが難しいため、筆記具は鉛筆の使用をお願いしています。
それではいよいよ中に入りましょう。
室内は少し暗く、ひんやりと感じられます。
「図書館ツアー」の際には参加された方から、「なんだか空気が違う!」という声が聞かれました。
この部屋には、資料を守るためのさまざまな工夫がなされています。
温度を管理し、光による資料の劣化を防ぐため無紫外線褪色防止蛍光灯を使用し、照度も落としています。
また、万一火災が発生した場合、自動消火できる装置も備えています。
そのため外とは「空気が違う」と感じられるのでしょうか。
でもそれだけではないのかも・・・
何百年を経て今に伝わる文書が特別な空気を醸し出しているのかもしれませんね。
「歴史の蔵」の中はこんな配置になっています。
最初に三重県の資料が並んでいます。
次に桑名の資料がテーマごとに集められています。
テーマは次のとおりで、調べたいテーマで資料を探すことができます。
・通史、上代、中世、江戸、幕末維新、新選組、明治大正、昭和~
・桑名人物、松平定信、諸戸清六
・伊勢湾台風、戦災
・石取祭、伊勢大神楽、多度祭
・鋳物、千羽鶴
・桑名詩歌、桑名俳句、松尾芭蕉、桑名小説、桑名随筆、桑名作家、金雀枝
・桑名文化財、桑名埋蔵
・桑名PFI、桑名行政、桑名統計
図書だけでなく雑誌、紀要、新聞縮刷版(中日新聞の三重・北勢版)、地図、年鑑、行政・統計資料なども収められています。
奥に進むと「地域文庫」が並んでいます。
「地域文庫」とは、桑名にゆかりのある方から寄贈していただいた蔵書をまとめたもので、中には桑名市立中央図書館にしかない貴重な史料も含まれています。
桑名藩儒・秋山白賁堂親子の蔵書「秋山文庫」、桑名市の伊藤家に伝わる「伊藤文庫」、桑名市在住の民俗学者・堀田吉雄氏の蔵書「堀田文庫」、多度町在住の児童文学作家・北村けんじ氏の蔵書「北村文庫」、貝塚家(初代桑名市長貝塚栄之助氏の家系)の東洋学者・貝塚茂樹氏の蔵書「貝塚文庫」があります。
「秋山文庫」は、桑名藩(久松松平家)の史料を中心としています。天明期までの家臣の由緒を収録した『天明由緒 文政十丁亥』や久松松平家家中永代分限帳(家格、役割、扶持嵩などを記したもの)といえる『本の籬(もとのまがき)』などもあります。
これら貴重な史料は「帙(ちつ)」という中性紙でできた入れ物に納めて保管されています。
桑名市立中央図書館では、資料の状態を守りながら広くご利用いただくために地域資料のデジタル化を行い、ホームページで一部を公開しています。『天明由緒 文政十丁亥』、『本の籬(もとのまがき) 』も原本をホームページでご覧いただくことができます。活字で読みたいという方のためには『天明由緒 桑名藩士の来歴』(藤谷 彰/編集 桑名市教育委員会 2008.3)、『本の籬(もとのまがき)』(『桑名藩史料集成』 桑名市教育委員会 1990 所収)もあります。
最後に壁面をご案内します。
こちらには歴史の専門書が置かれています。
日本史を研究する上での基礎史料(古典籍)の集成ともいえる『国史大系(全67冊)』(吉川弘文館 1998-2001)、寛政年間(1789-1801)に幕府が編集した大名や旗本の家譜集である『寛政重修諸家譜(全26冊)』(続群書類従完成会 1981)等々、歴史をじっくり調べる際の必需品(本)が並んでいます。
歴史の蔵についてご案内してまいりましたが、桑名や三重、そして歴史を調べる際の強い味方が「歴史の蔵」です。
歴史を学び、桑名を再発見する場として、ぜひ「歴史の蔵」をご利用ください。
<参考資料>
『桑名市立中央図書館 開館10周年記念 地域文庫コレクション』桑名市教育委員会事務局 生涯学習課 中央図書館 2015.3 AL/026/ク
『徳川四天王の城-桑名城絵図展-』桑名市博物館 2016.3 AL/221/ク
『目でみる桑名の江戸時代』 桑名市立文化美術館/編集 桑名市教育委員会 1983.12 AL/221/ク
『桑名藩史料集成 付図』桑名市教育委員会 1990.10 L/292/ク/地図
『天明由緒』 L/AKI/テ
『天明由緒 桑名藩士の来歴』 藤谷 彰/編集 桑名市教育委員会 2008.3 AL/221/テ
『本の籬(もとのまがき)』 L/AKI/モ
『本の籬(もとのまがき)』(『桑名藩史料集成』 桑名市教育委員会 1990 AL/221/ク 所収)
<志るべ>
国書データベースで貴館が「長崎秘話」070-0008-006 41コマをお持ちと知りました。内容がわたしが探しているものかどうか、確認したいのです。というのは「通航一覧」で引用されている、1808年(文化5年)のフェートン号事件に係るものかどうかです。もしそうであればコピー(デジタル)が欲しいのです。どうすればよいかお教え下さい
大井 昇様
スタッフブログをごらんいただき、ありがとうございます。
おたずねの「長崎秘話」は、当館の地域文庫コレクションの一つ「秋山文庫」に含まれるもので、内容は「文化5~10年頃の佐賀付近の見聞録。英・露・仏等の諸外国との交易やそれに関連した人々の様子を記す」とあります。
当館ホームページで公開しておりますので、以下の順でご覧いただくことができます。
トップページの「メニュー」→「中央図書館」→「地域資料」→「歴史の蔵デジタル資料」と進み、検索窓に「長崎秘話」と入力してご覧ください。
秋山文庫は桑名藩儒者であった秋山白賁堂(はくひどう)(1789~1874)、その長男寒緑(かんりょく)(1837~1897)、次男罷斎(ひさい)(1849~1927)の三人の蔵書で、主に桑名藩(久松松平家)の史料が収められています。
ぜひご利用ください。