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春の見つけかた
2025年3月3日(月)|投稿者:kclスタッフ
こんにちは、志るべです。
日差しに春のぬくもりが感じられるようになってきた今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
春風に誘われて「今日は薄手のコートで行こう!」と外に出て、「やっぱりまだ早かった・・・」ってことありませんか?
春の見極めはむずかしい。
この季節、口ずさみたくなる歌に「早春譜」があります。
♫春は名のみの 風の寒さや 谷の鶯 歌は思えど
時にあらずと 声も立てず 時にあらずと 声も立てず♫(『学園愛唱歌選集 ピアノ伴奏編』より)
三月に入るとウグイスは忘れずに鳴き始めます。
春の訪れをじっと待って、「今」という時に鳴く。
人間はついその日の気温に惑わされ、薄着をして風邪をひいたりしますが、鳥たちはもう少し冷静に「時」を判断しているようです。
ではいったいどうやってその時を知るのでしょう?
動物行動学者の日高先生にきいてみましょう。
日高さんは小さい頃から虫が大好きな昆虫少年でした。その後もさまざまな生き物の研究をつづけ、動物行動学者になりました。
動物の行動を調べると、その動物がどのように環境に適応しているのか、どのような社会を作っているのか、ほかの種とどのような関係を持っているのかなど、たくさんわかることがあるそうです。
『春の数えかた』(日高 敏隆/著 新潮社 2001.12)
日高さんは滋賀県立大学の学長として彦根で多くの時を過ごされました。
こちらは、その時に書かれた文章をまとめた一冊です。
とてもわかりやすく書かれ、この作品で第50回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞されています。
さて、ウグイスです。
小鳥が、日長(ひなが)、つまり一日の内の昼の長さで季節を知ることは半世紀以上前に実験的に明らかにされているそうです。
けれど日長は気温とは関係がない。
日の長さではもう春でも、年によってはまだ寒い日が続くこともある。
日高先生によると、生き物たちは温度を積算しているというのです。
寒い日が三日続いたら、その後四日温かい日が続く。
三寒四温を経て次第に春になっていきます。
その揺れ動く毎日の気温に反応するのでなく、鳥や虫たちは気温を積算している、と。
それもただ足していくのではなく、ある一定温度より低い、極端に寒い日の気温は数えません。この一定の温度は発育限界温度と呼ばれているそうです。
そして、積算した気温の総量が一定値を越えると、虫たちは、ああ春になったなと感じ、卵から孵ったり、サナギが幼虫になったりするというのです。
くわしくは、本文をご覧くださいね。
ところで、わたしたちに春を感じさせてくれる「ホーホケキョ」の声。
ヒナは自然にさえずることができるようになるのでしょうか?
それとも学習の賜物?
もう一度、日高先生に聞いてみましょう。

『生き物たちに魅せられて』(日高 敏隆/著 青土社 2014.10)
こちらでは、ウグイスだけでなくチョウにカエル、クジャク、トンボ、イヌ、ネコ、ゾウといろいろな動物たちの不思議でおもしろい行動について語られています。日高さんの生き物への興味、愛情が詰まった一冊です。
さて、ウグイスです。
ウグイスのオスが大人になったら「ホーホケキョ」と鳴くことは、決まっているのだそうです。遺伝的にプログラムされている、と。
けれど自然にさえずれるようになるかというとそうではなくて、やっぱり親のさえずりを聞いて学習しなければなりません。隔離して何も聞かせないでおくと、大人になっても「ホーホケキョ」とは鳴きません。
それもカラスの声には無関心で、ウグイスの声を聞かせると熱心に学習するというのです。
おもしろいですね。
みなさんは、春の訪れを何に感じますか?
ここ桑名で春を知らせるといえば、白魚。
あの芭蕉さん(松尾芭蕉)も旅の途中で桑名を訪れ、白魚の句を詠んでいます。
貴重な白魚、どうやっていただきましょうか。
ふっくらと卵でとじた白魚丼には、はまぐりのお吸い物を添えて・・・
かき揚げもいいですね。
やっぱり、溜まり醤油と砂糖で炊き上げた紅梅煮でしょうか。
『三重の味 千彩万彩』によると、白魚は過熱すると白くなるけれど、溜まり醤油で煮るとほんのり赤みを帯びて、紅梅を思わせる色合いとなるところから紅梅煮と名付けられたとか。
ちょっとお高いですが、春を味わいたい一品です。
気温を積算する能力は備わっていませんが、人間も動物です。
自分の五感を信じて、春を見つけに出かけましょう。
ただし、風邪をひかないよう、くれぐれも着るものにはお気をつけくださいね。
<参考資料>
『学園愛唱歌選集 ピアノ伴奏編』(松山 祐士/編 ドレミ楽譜出版社 1994.12)
『春のかぞえ方』(日高 敏隆/著 新潮社 2001.12)
『生き物たちに魅せられて』(日高 敏隆/著 青土社 2014.10)
『三重の味 千彩万彩』(みえ食文化研究会/編集 みえ食文化研究会 2006.6)
<志るべ>
ブックリサイクルを開催します
2025年2月27日(木)|投稿者:kclスタッフ
「こばと春休みスペシャル2025」を開催します!
2025年2月27日(木)|投稿者:kclスタッフ
イベント情報【開館20周年記念イベント】第5弾 「はじめての製本」を開催しました!
2025年2月25日(火)|投稿者:kclスタッフ
2025年2月16日(日)、「桑名市立中央図書館 開館20周年記念イベント第5弾」として製本のイベントを開催しました。
申込開始時からたくさんのご応募があり、すぐに定員となりました。
ご応募、ありがとうございました。
はじめに一連の作業工程を見せるために、参加者の皆さんに1か所に集まって、
講師役のスタッフの手元を確認してもらいました。
皆さん集中して説明を聞いています。
そのあと、各テーブルに戻り、本文の糸綴じを中心に作業してもらいました。
イベント中に、糸の長さはどうしたらよいのか、
どういう紙を使うのかなど、さまざまな質問を受けました。
関心の高さが伝わってきました。
皆さん、時間内に無事完成しました!
今回の「はじめての製本」で「桑名市立中央図書館開館20周年記念イベント」はすべて終了です。
各イベントにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
来年度もさまざまなイベントを企画しています。お楽しみに!
浮世絵ってなんだ?
2025年2月1日(土)|投稿者:kclスタッフ
こんにちは、かぶらです。
暦の上ではもうすぐ春。しかし、まだまだ寒い日が続きますね。
あんまり寒いと家に籠りがちになってしまいますが、少しでも暖かな日にはお散歩がてら図書館へお越しになりませんか?
中央図書館では、3月25日(火)まで4階「歴史の蔵」前にて郷土特集「浮世絵に見る桑名」を開催中です。
あの有名絵師が描いた桑名や、桑名をテーマとした浮世絵によく見られる“ある物”についてなどをパネルでご紹介しています。
江戸の人々が見た色鮮やかな「描かれた桑名」を、ぜひご覧ください。
ところで、浮世絵と聞くと、どんな絵を思い浮かべますか?
日本髪を結った美人画、ド迫力の役者絵、風景を鮮やかに切り取った名所絵…
思い浮かぶものは数あれど、ではその浮世絵とは一体何なのか?どうやって描かれているの?
今回は、そんな知っているようで実は知らない浮世絵にまつわる資料をご紹介します。
まずは、浮世絵とは何か?どう描かれているのか?の疑問を一挙に解決してくれるこちら。
日本文化歴史研究家でもある著者が「いいなぁ」と思った浮世絵を厳選し、それをもとに浮世絵の世界を紹介してくれる入門書です。
ただ作品そのものだけではなく、浮世絵の制作工程や、絵師に比べると見落とされがちな彫師・刷師による超絶技巧なども紹介されています。
浮世絵が生まれた江戸時代から明治時代初期の新聞錦絵まで、豊富な浮世絵をオールカラーで楽しめる一冊です。
そういえば、どこかで桑名の風景を描いた浮世絵を見たことがあるような、ないような…?
でも誰の作品だったのかわからない!という方におすすめなのが、こちら。
2013年に桑名市博物館で開催された「特別企画展 北斎・広重・国芳 浮世絵に見る東海道五十三次・桑名」の公式図録です。
桑名市博物館所蔵作品のほか、全国各地からお借りした桑名を描いた浮世絵が収録され、葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳等が描いた色鮮やかな桑名を一挙にご覧いただけます。
作品解説や論考もあり、読み応えたっぷりです。
日本各地の博物館や美術館に大切に収蔵されている浮世絵は、世界中の博物館や美術館でも見られます。
中でもイギリスの大英博物館では「北斎展」を開催するほどのコレクションがあり、現地の人々にとっても浮世絵は身近な存在となっているようです。
世界中の人々を魅了する浮世絵。
そんな浮世絵に魅せられた、ある一人の芸術家の人生を書いた作品があります。
売れない画家・ゴッホと、そんな兄を献身的に支える弟で画商のテオドルス。
代表作「ひまわり」や、本書の表紙にも使用された「星月夜」で知られ、日本人に広く愛されるゴッホですが、生前に売れた彼の作品はたった1点だけだったといいます。
そんな彼が抱えた孤独と闇、そこに刺した一筋の光“浮世絵”との出会いとその後を、フィクションとノンフィクションを織り交ぜて書かれた、読み始めたら手を止めることができない作品です。
本書に登場する日本人画商「林忠正」は、明治期に実在した人物です。
ゴッホはよく知っていても、彼の名はあまりなじみがない、という方も多いのではないでしょうか。
彼とゴッホが実際に友人関係にあったかはわかりませんが、当時の日本では屑同然に扱われた浮世絵を、世界に誇る日本の芸術として広めた手腕を知ることが出来る一冊がこちら。
林忠正は嘉永6年(1853)に越中国高岡(現在の富山県高岡市)に生まれ、大学南高(現在の東京大学)でフランス学を学びました。
明治33年(1900)にフランス・パリで開催されたパリ大博覧会では、日本の事務総長を務めています。
語学力と商才、そして美術作品に対する深い愛情を持ち合わせた彼がいたからこそ、貴重な浮世絵が失われることなく今も世界中で大切にされていることがよくわかる一冊です。
本書では北斎の代表作「神奈川沖波裏」に深く影響を与えた、といわれる「波の伊八」についても取り上げています。
「波の伊八」とは、彫工・武志伊八郎信由(たけしいはちろうのぶよし)のことで、彼の彫刻作品「波に宝珠」は北斎の「神奈川沖波裏」の波によく似ています。
伊八の作品が北斎に影響を与えたように、北斎をはじめとした浮世絵師の作品もまた、後の芸術家に多くの影響を与えました。
明治に入ると、新政府は近代化を推し進めるため西洋の技術をどんどん取り入れました。
印刷技術もそのひとつで、300年もの間日本で広く用いられてきた木版印刷は衰退し、版元の数も次第に減ってしまいました。
それでも、月岡芳年や小林清親ら現役浮世絵師により、版画の技術は紡がれていきます。
当時、世界の愛好家に好まれたのは北斎や歌麿など江戸期の有名浮世絵師の作品でしたが、国内では伊東深水や吉田博、川瀬巴水など新しい作風の絵師が登場し、「新版画」が確立されました。
現在では新版画も江戸期の浮世絵師と同様に世界で愛され、Apple者の共同創業者、スティーブ・ジョブズ氏も新版画の熱心なコレクターであったそうです。
オランダの美術商でキュレーターである本書の著者も日本の版画に魅了された一人で、各地で日本美術を紹介する展覧会を企画し、アムステルダムの私設美術館「日本の版画」の館長兼キュレーターを務めています。
そんな彼が厳選した美しい「新版画」を楽しめる一冊です。
今回ご紹介いたしました資料の他にも、当館には浮世絵に関する資料がたくさんございます。
図書館へ行くのは難しい…という方は、次のサイトからご覧いただけます。
お家で、もしくは旅先などで美しい日本の芸術に触れてみてください。
●国立国会デジタルコレクション
国立国会図書館所蔵の錦絵のうち、江戸期のものはほぼ全て画像公開されています。
対象欄の「錦絵」を選択し、階層欄の「巻号を除く」のチェックを外して検索してください。
●ジャパンサーチ
ジャパンサーチは、国が保有する様々な分野のコンテンツのメタデータを検索・閲覧・活用できるプラットフォームで、国立国会図書館がシステムを運用しています。
気になる浮世絵師の名前や作品を入力すると、様々な資料をご覧いただくことができます。
●デジタル浮世絵博物館
立命館大学アート・リサーチセンターが運用する浮世絵のデータベースです。
国内だけでなく、世界の美術館・博物館のデータベースからも浮世絵をご覧いただけます。
<参考資料>
『面白いほどよくわかる浮世絵入門』(深光 富士男/著 河出書房新社 2019)
『北斎・広重・国芳』([葛飾 北斎/ほか画],桑名市博物館/編集 桑名市博物館 2013)
『たゆたえども沈まず』(原田 マハ/著 幻冬舎 2017)
『海渡る北斎』(神山 典士/文,蟹江 杏/絵 冨山房インターナショナル 2023)
『新版画の世界』(クリス・ウーレンベック/著,ジム・ドウィンガー/著,フィーロ・オウウェレーン/著,古家 満葉/訳監修,鮫島 圭代/訳 パイインターナショナル 2023)
『海を越えた日本人名事典 新訂増補』(富田 仁/編集 日外アソシエーツ,紀伊國屋書店(発売) 2005)
<かぶら>