桑名駅が生まれ変わりました!
2020年10月24日(土)|投稿者:kclスタッフ
こんにちは、「志るべ」です。
朝夕、めっきりすずしくなりましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
今年の夏は、熱中症対策とコロナ対策、本当にたいへんでした。
と、息つく暇もなく、次はインフルエンザ対策とコロナ対策、油断はできません。
そんな緊張のつづく日々ではありますが、桑名にニュースが・・・
桑名駅が新しくなりました!
2017年にスタートした「桑名駅自由通路」の工事が終了し、踏切まで迂回しなくても東西を自由に通行できるようになりました。
以前のブログでご紹介した場所がこの通り。
こちらは、新旧の桑名駅入口です。
電車を降りて、いつものホームを上がると、改札の向こうには見たことのない景色が広がっています。
オシャレな長い通路、なんだか知らないところに来たみたい。
旅先の駅に降り立ったような新鮮な気持ちになりました。
列車に揺られて、遠くへ行く旅はもちろんすてきですが、いつもの町も少し角度を変えれば、違う景色が見えてくるようです。
この時期だからこそ、住み慣れた桑名の町を旅の気分で歩いてみませんか?
今回、町歩きのおともにご紹介したいのが、桑名のガイドブック『久波奈名所図会』です。
なにやら古めかしいタイトルですが、それもそのはず、書かれたのは江戸時代。序文の日付は享和2年(1802)7月、奥付には文化元年(1804)6月とあります。
ガイドブックは最新版を見るのが基本ですが、ここまで古いとまた別の景色が見えてくるのではないでしょうか。
享和2年から文化元年といえば、初めて実測による日本地図を完成させた、あの伊能忠敬(いのう ただたか)が測量のために日本中を歩いていたころです。伊能忠敬の緻密さと粘り強さ、そしてその健脚ぶりには圧倒されますが、『久波奈名所図会』の作者にも驚かされます。
書いたのは、長円寺(伝馬町)の住職、魯縞庵義道(ろこうあん ぎどう)
この名前、どこかで聞いたことあるという方、おられるのではないでしょうか。桑名の方ならご存じ、あの連鶴「桑名の千羽鶴」の折り方を考案した人物です。
「桑名の千羽鶴」は一枚の紙から複数羽(97羽のものまであります)の連続した鶴を折る独特の連鶴で、桑名市の無形文化財(芸能)に指定されています。
もともと地理や歴史に興味があった義道は、桑名の地理、歴史を研究して地誌『桑府名勝志』を書きあげました。
ところが『桑府名勝志』は少しむずかしくて読みづらいため、誰もが読めるように、挿絵を入れてやさしくまとめ直しました。こうして『久波奈名所図会』が生まれました。
『久波奈名所図会』(長円寺所蔵)も桑名市の有形文化財(典籍)に指定されています。
当時、名所旧跡を挿絵入で紹介した「名所図会」がはやっていました。京の都を描いた『都名所図会』や桑名の時雨蛤も登場する『東海道名所図会』を参考に、『久波奈名所図会』も編集されました。
「名所図会」の魅力はなんといっても挿絵。挿絵の善し悪しで売れ行きが左右されると言われるほどでした。義道はその挿絵を、鍋屋町の工藤麟溪(くどう りんけい)に依頼しました。
麟溪は俳人で、義道も俳句を嗜んでいたことからつながりがあったのではないかと考えられています。
出版をめざして編纂された『久波奈名所図会』ですが、刊行されることはありませんでした。どういう事情があったのでしょうか?
本として出版されなかったのは少し残念ですが、義道が『久波奈名所図会』を書き残してくれたおかげで、わたしたちは今、当時の桑名を知ることができるのですね。
連鶴の折り方を編み出し、桑名の歴史や地理を研究し、『久波奈名所図会』をはじめ数々の著作を残した義道は、まさに「スーパー」住職です。
では少し、『久波奈名所図会』を開いてみましょう。
こちらは、当時の豪商山田彦左衛門の庭園です。
今は、「諸戸氏庭園」となり、紅葉の季節には一般公開されています。
国の重要無形文化財にも指定されている「伊勢大神楽」の様子が「大々神楽獅子舞図」に描かれています。右ページでは「獅子舞」が、左ページでは「放下芸」(曲芸)が行われています。
今も、大福田寺の桑名聖天火渡り祭で「伊勢大神楽」が行われています。
その大福田寺は、
今の大福田寺山門は、こちら。
桑名の町は変わったのでしょうか?それとも、変わっていない?
『久波奈名所図会』を手に、当時の町やそこに暮らす人々に思いを馳せながら、町歩きに出かけてみませんか?
<参考資料>
※桑名市立中央図書館では『久波奈名所図会』の写本と翻刻本(活字本)を所蔵しています。
(写本)
『久波奈名所図会』〔義道/著〕,〔工藤 麟渓/書・画〕享和2年[1802]序 3冊 L292ギ
『久波奈名所図会 上』〔義道/著〕,〔工藤 麟渓/装画〕享和2年7月序 1冊 L292ギ
(翻刻本)
『久波奈名所図会 影印校注 上巻』 義道/著,工藤 麟渓/装画 久波奈古典籍刊行会 1977 AL292ギ
『久波奈名所図会 影印校注 中巻』 義道/著,工藤 麟渓/装画 久波奈古典籍刊行会 1977 AL292ギ
『久波奈名所図会 影印校注 下巻』 義道/著,工藤 麟渓/装画 久波奈古典籍刊行会 1977 AL292ギ
『桑府名勝志 1~6』 義道/編 北勢史談会 1951 L292ソ
※デジタル資料を公開(PDFファイルで開きます)
『桑名市博物館紀要 第14号』 桑名市博物館 2020 AL069ク
『連鶴史料集 魯縞庵義道と桑名の千羽鶴』 桑名市博物館/編纂 岩崎書店 2016 AL754レ
<志るべ>
令和2年度桑名市立中央図書館アンケートを実施しています。
2020年10月1日(木)|投稿者:kclスタッフ
いつも桑名市立中央図書館をご利用いただき、ありがとうございます。
よりよい図書館にしていくため、皆様のご意見をお伺い致したく、アンケートにご協力をお願いします。
実施期間は以下の通りです。
アンケート実施期間:令和2年10月1日~10月31日
アンケート回収期間:令和2年10月1日~11月14日
アンケート用紙は桑名市立中央図書館で配布中です。館内の各所にアンケート用紙と回収ボックスを設置してあります。記入いただいたアンケート用紙をお入れください。
または、下のバナーよりPDFファイルを印刷して、図書館へお持ちいただくことでアンケートに回答することも可能です。
ご参加・ご協力をお待ちしております。
「あいたいきもち」
2020年2月16日(日)|投稿者:kclスタッフ
会ひたくて 逢ひたくて 踏む 薄氷
(『B面の夏』 黛 まどか/著 KADOKAWA 1994 より)
こんにちは、「志るべ」です。
みなさま、いかがお過ごしですか。
寒い日がつづきますが、暦の上ではもう春。
冒頭の句も春の句で、季語は「薄氷」です。
『季語辞典』(関屋 淳子/文,山梨 勝弘/写真,富田 文雄/写真 パイインターナショナル 2012)には、「薄氷」は「うすらい」と読み、春先に寒さが戻り、うすうすと張る氷のこと。「うすごおり」とも読む、とあります。
会いたくて薄氷にそっと足をのせる気持ち、わかります。
ですが、この句から「薄氷をバリバリ踏んで、会いたい(逢いたい)人に会いに(逢いに)行く!」という勇ましい気持ちを読みとる女子高生がいるとか・・・
たのもしい限りです。
そもそも「会う」と「逢う」はどう違うのでしょう?
『漢字の使い分けときあかし辞典』(円満字 二郎/著 研究社 2016)によると、「会う」は、人が集まって話などをすること。「人と人とが面と向かって話などをする」場合に用いられる、とあります。
「逢う」は、漢詩では、旅の途中でたまたま一緒になってまた別れる、というような使い方が多く、「一緒にいる時間が貴重である」というニュアンスを持ち、「あう」ことの貴重さに重点を置きたい場合に用いるのがふさわしい、とあります。
「逢瀬」という言葉もありますが、「逢う」には、大切で、何か特別な意味合いが込められているようですね。
いずれにしても「あいたいきもち」には正直に、(「そっと」それとも「バリバリ」?)薄氷を踏んで会いに(逢いに)行った方がいいのかもしれません。
春は一歩を踏み出すのにふさわしい季節です。
もちろん「あいたい」対象は人ばかりではありません。
野の花に魅せられて、野の花に逢いたくて、世界を旅した人がいます。
『野の花に逢いたくて フランス旅日記』(高橋 永順/写真と文 冬樹社 1989)
高橋永順さんは、写真家でフラワーアーティスト。
この本には、フランス各地で出会った野の花の写真と、旅先でのできごとを綴った文章が収められています。
花教室も開設している永順さんの花選びの基本は、「今日はこれをいけたい!」とまっすぐに心に飛びこんで来る花を選ぶこと」(『永順花のレッスン』 高橋 永順/著 文化出版局 1988より)だそうです。
野生動物に会いたくて日本中を駆け巡った人もいます。
『野生動物に会いたくて』(増井 光子/著 八坂書房 1996)
増井光子さんは獣医学博士で、上野動物園の園長もされた方です。
野生動物はどんな風に暮らしているのだろう?その生態に興味を抱いて日本中を巡りました。
動物の定点観察というのは、興味のない人にはなんとも退屈なものです。じっと座ってただひたすら動物が現われるのを待っているだけなのですから。でも私は、いつか現われるだろう相手のことを思いつつ待っている、その時間が好きです。・・・と語っています。
「あいたいきもち」は、待つ時間も楽しい時間へと変えてくれるようです。
ペンギンたちに会いたくて、南極まで行った人もいます。
『ペンギンたちに会いたくて わたしの南極研究記』(加藤 明子/著 くもん出版 2009)
加藤明子さんは、南極鳥類研究者で、日本女性で初めて南極観測の外国隊に参加されました。
オーストラリア南極観測隊、フランス南極観測隊、そして日本南極観測隊とともに、計4回にわたり南極の海鳥類の調査にあたっています。ペンギンの背中に「データロガー」という小さな電子記録計を取りつけることで、ペンギンの生態をくわしく調査しました。
ちなみに、氷山は南極大陸に積もった雪がかたまってできた氷が流れ出したものなので、なめてもしょっぱくないそうです。
光の具合によって空色に見えたり、深い藍色に見えたり、深緑色に見えることもあり、夕日にあたるとピンク色や紫色に見えます。なんとも美しく、なんとも不思議な景色でした、と語られています。
「あいたいきもち」を抱くのは、人間だけとはかぎりません。
ケムシにあいたくてたまらないオオカミもいました。ただし、これは絵本の中のおはなしです。
『あいたくてあいたくて』(みやにし たつや/作・絵 女子パウロ会 2017)
嫌われもののオオカミは、ひとりぼっちのケムシと大のなかよしになりました。いつも一緒のふたりでしたが、ある日突然、ケムシはオオカミの前から姿を消してしまいます。ケムシにあいたくてあいたくてたまらないオオカミは、クリスマスの前の日、ツリーをつくって夜空に祈ります。
「ケムシに あいたくて あいたくて・・・・・
どうぞ ケムシに あわせてください・・・・・」
オオカミの「あいたいきもち」は通じるのでしょうか。
けれど、いつも「あいたい」なにかがはっきりしているわけではありません。
誰にあいたいのか、何にあいたいのかわからない・・・
そんな気持ちになること、ありませんか?
自分でもよくわからない「あいたいきもち」を、工藤直子さんが詩に書いています。
だれかに あいたくて
なにかに あいたくて
生まれてきた―
そんな気がするのだけれど
それが だれなのか なになのか
あえるのは いつなのか―
おつかいのとちゅうで
迷ってしまった子どもみたい
とほうにくれている
それでも 手のなかに
みえないことづけを
にぎりしめているような気がするから
それを手わたさなくちゃ
だから
あいたくて
(『あいたくて』 工藤 直子/著,佐野 洋子/画 大日本図書 1991より)
工藤さんは、あとがきにこう綴っています。
迷子の気分は、じつはすきです。とても、なにかに「あいたく」なるから。そして「あえてうれしい」から、と。
やはり「あいたいきもち」は、人に力を与えてくれるようです。
「あいたいきもち」にまっすぐ向かっている人はもちろん、迷子になってしまった人のためにこそあるのが図書館です。
「あいたい」なにかがみつかるかもしれません。
図書館は迷子の「志るべ」なのですから。
<引用・参考資料>
『B面の夏』 黛 まどか/著 KADOKAWA 1994 911.3マ(書庫)
『季語辞典』 関屋 淳子/文,山梨 勝弘/写真,富田 文雄/写真 パイインターナショナル 2012 911.3キ(一般)
『漢字の使い分けときあかし辞典』 円満字 二郎/著 研究社 2016 R811.2エ(調べる)
『野の花に逢いたくて フランス旅日記』 高橋 永順/写真と文 冬樹社 1989 293タ(書庫)
『永順花のレッスン』 高橋 永順/著 文化出版局 1988 793タ(書庫)
『野生動物に会いたくて』 増井 光子/著 八坂書房 1996 482.1マ(書庫)
『ペンギンたちに会いたくて わたしの南極研究記』 加藤 明子/著 くもん出版 2009 488カ(児童)
『あいたくてあいたくて』 みやにし たつや/作・絵 女子パウロ会 2017 Eミ(児童)
『あいたくて』 工藤 直子/著,佐野 洋子/画 大日本図書 1991 Y911ク(ティーン)
<志るべ>
第23回「図書館を使った調べる学習コンクール」の 受賞作品
2020年1月20日(月)|投稿者:kclスタッフ
第23回「図書館を使った調べる学習コンクール」(公益財団法人 図書館振興財団)の 受賞作品が決定いたしました!
応募作品総数は、116,554作品!
桑名市からは第15回「桑名市図書館を使った調べる学習コンクール」にて最優秀賞・優秀賞に輝いた6作品を出品し、以下の皆さんが各賞を受賞されました。
奨励賞:2作品(2名)
◆「石って不思議でおもしろい!」
中村 里穂さん(桑名市立益世小学校 5年)
◆「食茶研究部へようこそ!!」
川上 友鶴さん(桑名市立益世小学校 6年)
佳作:4作品(4名)
◆「大すき!!アカハライモリ」
小木曽 奨真さん(桑名市立益世小学校 2年)
◆「空の王者 ハクトウワシ」
稲森 知洋さん(桑名市立星見が丘小学校 3年)
◆「身近だけど奥深い セミのふしぎ」
植田 大智さん(桑名市立大山田北小学校 4年)
◆「花実兼備な勇士 本多 忠勝」
村部 由朔さん(桑名市立大山田北小学校 6年)
受賞されたみなさん、おめでとうございます。
「図書館を使った調べる学習コンクール」の作品は、近年全国的に応募数が増加し、内容のレベルもどんどん高くなっているようです。
どの作品も、みなさんが日常の中で興味・関心を持ったことを丁寧に、そして面白くまとめた作品となっています。
これからも、図書館はみなさんの調べる学習を応援・サポートいたしますので、ぜひ調べる学習コンクールの作品づくりに挑戦してみてください。
あけましておめでとうございます
2020年1月4日(土)|投稿者:kclスタッフ
新年あけましておめでとうございます。
本年も桑名市立中央図書館と「ブックとラック」をよろしくお願いします。
中央図書館は、本日1月4日より開館しています。
毎年恒例、図書館入り口の干支飾りが今年も新しくなりました。
今年の干支は、
「子」
十二支の始まりである「子」の年は、可愛いネズミ達がみなさまをお迎えします。
本の周りをクルクルと駆けるネズミ達。
その頭上には、色とりどりの星が輝いています。
何気なく使っている干支ですが、年を表す以外にも生活の様々な場所で使われていることをご存じでしょうか?
「干支」は、木火土金水の五行をそれぞれ「え」と「と」に分けて「十干」に配し、「甲(きのえ)・乙(きのと)・丙(ひのえ)…」としたものに、「十二支」を順番に組み合わせて、「甲子」から「癸亥」まで60通りの組み合わせを作り、年月日や時刻・方位をなどを表しています。
「子の刻」であれば午前0時頃。
「子午線」は天の北極~天頂~南極を結ぶ天球上の大円のこと。
桑名藩が深く関わった「戊辰戦争」の「戊辰」も、戊辰の年(1868)に起きた戦争であることからそう呼ばれます。
また、十二支の起源は、「神様が期日を定めて動物たちを呼び集めて十二支を決めた」という話が伝わります。
「牛は足が遅いので早く出かけた。ネズミは牛の背中に乗って行き、神様の前に最初に飛び出して子、丑の順となった」という話が代表的です。
しかし、少し調べてみると「猫が入らなかったのは、ネズミに騙されたから」「元は十支の予定で門を閉めたが、猪が突進して門を破り、その穴から先に犬が飛び込み、最後に猪が入って十二支となった」など、時代や地域によって異なる面白い話がありました。
何気なく使っている「干支」や「十二支」ですが、その由来や仕組みをこの機会に調べてみるのはいかがでしょうか。
そして、今年中央図書館が掲げる四字熟語は、
「博学篤志」(はくがくとくし)
意味は、幅広く学んで知識を増やし、熱意をもって学問に励むこと。
「博(ひろ)く学び篤(あつ)く志す」と訓読し、学問をする者の心構えについて述べた言葉です。
「生涯学習」という言葉があるように、学問に励むことに期限はありません。
学校や仕事で必要なこと、興味のあること、どんなことでも「博く学ぶ」みなさまのお手伝いが出来る図書館であるように、スタッフ一同励んでまいります。
これからも、桑名市立中央図書館をよろしくお願いいたします。
【参考資料】
『日本史年表・地図 第25版』 児玉 幸多/編 吉川弘文館 2019
『日本昔話事典』稲田 浩二/[ほか]編 弘文堂 1978
『日本国語大辞典 第5巻 けんえ-さこい 第2版』小学館国語辞典編集部/編集 小学館 2001
『日本国語大辞典 第9巻 ちゆうひ-とん 第2版』小学館国語辞典編集部/編集 小学館 2001
『四字熟語・成句辞典』 竹田 晃/著 講談社 1990
『用例でわかる四字熟語辞典』 学研辞典編集部/編 学研 2005
『中国古典選5 論語 下』 吉川 幸次郎/著 朝日新聞社 1978
『論語』 孔子/著 金谷 治/訳注 岩波書店 1982
<かぶら>