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KCLスタッフブログ ~ブックとラック~

2024年2月10日(土)AM10:00|投稿者:KCLスタッフ

文学と桑名~松尾芭蕉と泉鏡花~

こんにちは、志るべです。
立春を過ぎ、季節はもう春。

 

 

とはいえ、まだまだ寒い日がつづいています。
みなさまいかがお過ごしでしょうか。

 

4階「歴史の蔵」の前では、2月1日~3月26日(2月2日~7日は蔵書点検で休館)、「文学と桑名」と題して特集展示を行っています。
今年度の「昭和の記憶収集資料展」の講演会のテーマも文学でした。
講師は郷土史家の西羽晃(にしは あきら)先生で、昭和初期の桑名ゆかりの文学者、堺利彦、高橋俊人、中原中也についてお話ししていただきました。
今回の特集展示では、松尾芭蕉と泉鏡花を取り上げています。

 

伊賀上野出身の松尾芭蕉は、三重県人にとって身近な存在で、「芭蕉さん」と親しく呼ばれています。
生涯旅をつづけた芭蕉は各地にゆかりの地がありますが、ここ桑名にも何度か立ち寄っています。

 

展示では、桑名の白魚を詠んだ句を紹介しています。
芭蕉さんも、桑名産の白魚を賞味されたのでしょうか。

 

「野ざらし紀行」の旅の途中、桑名で詠んだ句がこちら、
 明ほのやしら魚しろきこと一寸
『芭蕉全句 上巻』 加藤 楸邨/著 筑摩書房 1969 所収)

 

同じ白魚を詠んだ句ですが、『笈日記』(各務支考/編)には、
 雪薄し白魚しろき事一寸
『日本名著全集 江戸文芸之部 第3巻 芭蕉全集』所収)

 

とあります。
この二作、「雪薄し」の句が初案の句とされ、最初「雪薄し」と詠みましたが、雪の白と白魚の白では印象が散漫になるため、「明ほのや」に改めたと考えられています。

 

現在、浜の地蔵(龍福寺)には両方の句碑があり、昭和43年2月20日、「芭蕉「野ざらし紀行」跡白魚句碑等」として、市の指定文化財(史跡)に指定されました。
くわしくは4階の特集展示をご覧ください。

 

句碑について書かれた本は、こちらをどうぞ。
『桑名市の指定文化財』(桑名市教育委員会 1985)
『くはな文学碑めぐり』(むらさき会/編  むらさき会 1991.1)
『三重県の文学碑 1 北勢編』(本城 靖/著 三重県郷土資料刊行会 1976)

 

また、春日神社には芭蕉直筆の短冊があります。
明ほ乃や白魚白き事一寸  芭蕉桃青

 

こちらも昭和41年(1966)11月22日、市の文化財(書跡)の指定を受けています。

 

 

さて、もう一人は、泉鏡花です。
鏡花は、石川県金沢町(現・金沢市)生まれで、父・清次は彫金師、母・鈴は能楽師の娘です。
鏡花は母親を早くに亡くし、母への感情は、作品の主要なテーマの一つとなっています。

 

桑名を舞台とした作品に『歌行燈』(泉 鏡花/作 改版 岩波書店 2017.6)があります。
明治42年(1909)、鏡花ら文芸革新会の一行は、鳥羽、宇治山田、桑名、名古屋などを旅行し、講演会を開いています。この講演旅行の際の見聞を踏まえて『歌行燈』は執筆されました。

 

鏡花らは船津屋に宿泊しました。
船津屋は、昔の大塚本陣を改築した旅館兼料理屋で、揖斐川を臨む絶景の地にあり、作中では、「湊屋」として登場しています。
当時の船津屋は戦災で焼失し、現在の船津屋は戦後に建てられました。

 

昭和14年(1939)、久保田万太郎が新生新派のために劇化した縁で、船津屋には久保田万太郎の句碑があります。句には、湊屋裏河岸から這いあがっていたずらする獺(かわうそ)の姿が詠まれています。
かはをそに火をぬすまれてあけやすき  久保田万太郎

 

などと、さも鏡花の作品にくわしいかのように書いておりますが・・・
これまで何度も『歌行燈』(読破)にチャレンジし、その度に挫折。
読み通せたことがありませんでした。

 

『歌行燈』が発表されたのは明治43年(1910)
今から100年以上前の作品とはいえ、きちんと活字化されているし、注もたくさん付いています。
明治の文豪、鴎外や漱石よりも後に生れている鏡花の作品が読み進められないなんて。

 

お恥ずかしい限りですが、文章に馴染めないのです。
独特の文体もさることながら、話がややこしい。
うどん屋と湊屋、二つの場面が入れ替わりながら話が進んでいきます。
おまけに『東海道中膝栗毛』(『新編日本古典文学全集 81 東海道中膝栗毛』 小学館 1995.6 所収)の一節が随所に組み込まれていて、これまたややこしい。
言い訳ですが、挫折する要素、満載です。
そんな体たらくの私なのですが、今回初めて読み終えることができました。

 

その力強い味方となったのがこちらの一冊。

 

 

『本当にさらさら読める!現代語訳版 泉鏡花<観念・人世>傑作選』(泉 鏡花/著,秋山  稔/監修,白水 銀雪/訳 KADOKAWA 2020.8)

 

 

タイトルに歌われているとおり、さらさら読めるように訳されています。
ストーリーがわかってから読み直すと、原文も読みやすく感じました。

 

作中に登場する『東海道中膝栗毛』も、現代語抄訳でいかがでしょう。

 

 

『現代語抄訳で楽しむ 東海道中膝栗毛と続膝栗毛』( [十返舎 一九/作],大石 学/監修 KADOKAWA 2016.9)

 

『東海道中膝栗毛』に親しむことで、『歌行燈』の世界をよりお楽しみいただけるのではないでしょうか。

 

茶屋で焼蛤を食べて一休みする旅人の姿、行燈が掛かる町を走り抜ける人力車、当時の桑名の風景が浮かんできます。
図書館の展示を見て「おうち読書」を楽しみながら、あと少し、本格的な春の訪れを待ちませんか?

 

 

<引用・参考資料>
『芭蕉全句 上巻』 加藤 楸邨/著 筑摩書房 1969 /911.3/カ/1
『日本名著全集 江戸文芸之部 第3巻 芭蕉全集』 日本名著全集刊行会 1929 /918/ニ/
『くはな文学碑めぐり』 むらさき会/編 むらさき会 1991.1 AL/902/ク/
『三重県の文学碑 1 北勢編』 本城 靖/著 三重県郷土資料刊行会 1976 AL/902/ミ/
『桑名市の指定文化財』 桑名市教育委員会 1985 AL/709/ク/
『泉鏡花<観念・人世>傑作選 本当にさらさら読める!現代語訳版』 泉 鏡花/著,秋山 稔/監修,白水 銀雪/訳  KADOKAWA 2020.8 /913.6/イズ/
『歌行燈』 泉 鏡花/作 改版 岩波書店 2017.6 AL/936/イ/
『新編日本古典文学全集 81 東海道中膝栗毛』 小学館 1995.6 Z/918/シ/81
『現代語抄訳で楽しむ東海道中膝栗毛と続膝栗毛』 [十返舎 一九/作],大石 学/監修 KADOKAWA 2016.9 AL/292/ジ/

 

<志るべ>

 

2024年1月18日(木)PM12:32|投稿者:KCLスタッフ

第27回「図書館を使った調べる学習コンクール」の受賞作品

第27回「図書館を使った調べる学習コンクール」(公益財団法人 図書館振興財団)の 受賞作品が発表されました。
全国から11万8千点を超える作品が応募され、桑名市からは「第19回 桑名市図書館を使った調べる学習コンクール」で最優秀賞・優秀賞に選ばれた4作品が出品されました。
そして、気になる結果はこちら!

 

■優良賞(1作品)

・小学生の部(中学年)

「国宝 鳥獣戯画はナゾだらけ!」

平井 理菜さん(桑名市立大山田南小学校 4年)

 

■奨励賞(3作品)

・小学生の部(低学年)

「エイは水の中でにおいが分かる?!」

服部 永和さん(桑名市立長島北部小学校 2年)

 

・小学生の部(高学年)

「セーラー服が消える?! ~制服史の変わり目の今~」

岡本 佳穂さん(桑名市立七和小学校 6年)

 

・子どもと大人の部

「わたしたちの麦畑」

西田 絢美さん(桑名市立在良小学校 3年)・西田 純さん(父)

 

 

受賞されたみなさん、おめでとうございます。
お子さん個人だけでなく、小学生以上のお子さんと一緒に大人の方でも応募できますので、みなさんが日常の中で興味・関心を持ったことをぜひ調べる学習コンクールの作品づくりに挑戦してみてください。

 

これからも、図書館は皆さんの調べる学習を応援・サポートいたします。

 

2024年1月12日(金)AM12:00|投稿者:KCLスタッフ

蔵書点検による休館と貸出期間延長のお知らせ

桑名市立中央図書館は、蔵書点検のため以下の期間休館いたします。
休館に際し、皆さまには大変ご迷惑をおかけしますが、ご理解とご協力をお願いいたします。

 

【休館期間】
2
月2日(金)~2月7日(水)

 

※ふるさと多度文学館・長島輪中図書館は通常通り開館しています
※休館期間中の返却は、くわなメディアライヴ1階南側の返却ポストをご利用ください。
ただし、CD、DVD、大型絵本・大型紙芝居、ゆめはま文庫、桑名市外から取り寄せた図書は破損のおそれがありますので、開館日にカウンターへお持ちください。

 

◎期間中の講習室利用について
2階講習室は、特別整理期間中(2月2日~2月7日)は、ご利用いただけません。

 

また、休館に伴い貸出期間の延長を行います。

 

【図書・雑誌の貸出期間延長】
1月19日(金)~2月1日(木)の貸出 ・・・ 3週間

※桑名市外から取り寄せた図書は、貸出期間が異なります

 

【CD・DVDの貸出期間延長】
1月26日(金)~2月1日(木)の貸出 ・・・ 2週間

 

蔵書点検期間中は、図書館にある資料1冊1冊を専用の機械で読み取り、決められた場所にあるか、なくなってしまった資料はないかを確認する作業を行っています。

 

また、点検作業と並行して、図書館をより使いやすくするための作業も行います。
過去のブログでも「蔵書点検」について取り上げたブログが複数あります。
ブログページ内に表示されている「ブログ記事検索」「蔵書点検」と入力いただくと、過去の蔵書点検の様子をご覧いただけます。
今の図書館とは少し違う姿が記録された部分もありますので、ぜひ検索してみてください。

 

しばらくの間、休館いたしますが、リフレッシュした図書館を楽しみにお待ちください。

 

カテゴリー:お知らせ, スタッフブログ | コメント (0) | 
2024年1月4日(木)AM12:00|投稿者:KCLスタッフ

あけましておめでとうございます。2024

あけましておめでとうございます。

今年も中央図書館とスタッフブログ「ブックとラック」を

よろしくお願いします。

 

 

 

 

桑名市中央図書館は、1月4日から開館しております。

皆さま、お正月はいかがお過ごしでしょうか?

年末年始に移動を希望する人数は、コロナ前にかなり戻ったとニュースを見ました。

せっかくのお正月、帰省でも旅行でも、行きたい場所で過ごしたいところ。

その行きたい場所に図書館が入っていれば幸いです。

 

 

令和6年、今年の干支は「辰」です。

龍は十二支で唯一の空想上の動物ですが、古くから縁起の良い生き物とされてきました。

この一年も良い年にしてくれることを期待したいです。

 

 

ところで「辰」という漢字ですが、十二支以外で「龍」の意味で使用するのを見たことありますか?

恐らく、思いつかないのではないでしょうか。

 

なぜなら、一説によると十二支の動物は、十二支の思想を広める際に一般の人にも分かりやすいように当てはめたものだからです。

つまり、本来「辰」の漢字には龍という意味はなかったそうです。

 

 

『岩波新漢語辞典』(山口 明穂/編,竹田 晃/編  2014.1)で「辰」と引くと、以下のように書かれています。

【辰】たつ・シン(漢)・とき(名)

①十二支の第五。たつ。方角では東南東、時刻では午前八時(の前後各一時間)に当てる。「戊辰」

②とき。日(がら)。「佳辰・誕辰」

③天体。星。「星辰・北辰・辰宿」

 

確かに②や③を見ると、龍との繋がりは薄い漢字に見えます。

十二支の龍の意味は後から追加されたからなのでしょうね。

ちなみに、「誕辰」と書いて「誕生日」や、「北辰」と書いて「北極星」という意味になるそうです。

漢字の意味が分かると、読みやすくなって面白いですね。

誕生日カードに書いてみても良いかもしれません。

 

 

ただ、龍のような生き物の意味がない漢字なのかというと、そうでもありません。

 

一説になりますが、この「辰」という漢字は象形文字、いわゆる物の形を模倣して作られた漢字だとされています。

それによると「辰」の形は、二枚貝の殻から、弾力のある足をぴらぴら出している様子を表しているそうです。

 

 

二枚貝から足・・・絵面としても、なかなかシュールですね。

そんな漢字が十二支の龍に選ばれるとは、滝登りの鯉も二度見しそうな変貌です。

 

十二支を広める目的では採用されなかったでしょうが、もしこちらの意味で広まっていたら、十二支に交じる二枚貝がいたのかもしれません。

 

うさぎと蛇の間にしれっと混ざる二枚貝、神様の元へえっさほいさと走る二枚貝、年賀状で自慢の足を披露する二枚貝たち・・・

ちょっと見てみたかった気もしますね。

 

 

 

更につけ加えると、「辰」は「蜃」の字源(起源となった漢字)でもあります。

「蜃」とは、蜃気楼を作り出すとされた伝説の生き物で、この「蜃」の口から海上に吹いた気が、楼閣・城市の形をしたことから、「蜃気楼」と呼ばれたそうです。

そして、その正体といわれている姿の一つが竜、もう一つが大蛤です。

 

 

ところで、蛤といえば、桑名の名産ですよね。

 

実は、この桑名を舞台に大蛤の姿の「蜃」が描かれている絵が存在します。

その一つがこちら、二代目歌川国貞の「春季蜃気楼」(桑名市博物館所蔵)です。

 

「春季蜃気楼」二代目歌川国貞[作] (『北斎・広重・国芳 浮世絵に見る東海道五十三次・桑名,特別企画展』より)

 

 

現れた蜃気楼に仰天する人々と、我関せずと悠々と氣を吐く大蛤。

浮世絵らしい鮮やかな色彩が見応えがある一方、少しユーモラスな場面に、くすっと笑ってしまいます。

 

こちらは、桑名市立図書館の『北斎・広重・国芳 浮世絵に見る東海道五十三次・桑名,特別企画展』(桑名市博物館/編 2013.10 p80, 解説p113)に掲載されています。

この絵以外にも、著名な浮世絵画家による「蜃」の絵や、桑名に関わる浮世絵が数多く載っています。

貸出も可能なので、気になる方は是非借りてみてください。

 

 

また、「辰」の意味にはもう一つ、形声文字(音を表す文字と意味をあらわす文字を組み合わせた漢字)と考える説もあります。

乙+匕+二+厂で「辰」となり、この組み合わせは、草木が盛んに成長し整っていく様子を表すのだそうです。

これも活力あふれた良い年になりそうな素敵な意味ですね。

 

 

今年はどんな年になるでしょうか。

桑名市立中央図書館が、良いお年を過ごせる一助になればと思います。

この一年も、皆さまのご来館お待ちしております。

 

 

▼引用・参考資料

『干支の漢字学』 水上 静夫/著 1998.12

『部首ときあかし辞典』 円満字 二郎/著 2013.5

『岩波新漢語辞典』 山口 明穂/編,竹田 晃/編  2014.1

『新潮日本語漢字辞典』 新潮社/編 2007.9

『新選漢和辞典 第8版』 小林 信明/編 2022.2

『角川新字源』 小川 環樹、他/編 2017.10

『北斎・広重・国芳 浮世絵に見る東海道五十三次・桑名,特別企画展』 桑名市博物館/編 2013.10

2023年12月4日(月)AM12:00|投稿者:KCLスタッフ

「第19回桑名市図書館を使った調べる学習コンクール」表彰式

2023年11月27日(月)に、第19回 桑名市図書館を使った調べる学習コンクールの表彰式が行われました。
今年は169作品のご応募いただきました。

 

 

そのうち、
☆最優秀賞 1作品
☆優秀賞  3作品(うち、子どもと大人の部1作品)
☆奨励賞  26作品(うち、地域賞1作品、子どもと大人の部1作品)
が入賞し、32名の方々が表彰されました。

 

今年度の受賞作品の一覧はこちらからご覧いただけます。
➡ 第19回 桑名市図書館を使った調べる学習コンクール入賞作品発表(PDF)

 

みなさんの疑問・興味を持ったことを一生懸命調べる姿がとても素敵でした。
これからも調査のお手伝いが出来るよう、図書館スタッフ一同サポートしてまいります。
最優秀賞・優秀賞に選ばれた作品は全国コンクールへ出品されます。
入賞作品の閲覧をご希望の方は、児童コーナー窓口へおたずねください。